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第二話:墨の代わりに、蜜で描く
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「さぁ、絵師殿。ここが、あんたが描きたがっていた“わっち”でありんすよ…」
わっちの挑発的な言葉とは裏腹に、海斗の指はぴたりと動きを止めた。
彼の視線が、わっちの手によって導かれた自らの指先と、そこにある秘められた花園とに注がれる。その瞳に浮かぶのは、卑しい欲望ではなかった。まるで、初めて見る神聖なものに触れてしまったかのような、畏怖と戸惑い。
「……」
沈黙が、部屋を支配する。
気まずさに耐えきれず、わっちが手を離そうとした、その刹那。
「…動かないで」
低い、囁くような声。
海斗はわっちの手を制すると、もう片方の手で、そっとわっちの頬に触れた。
「今から、あなたの“魂”を描く。…少し、時がかかるやもしれませぬ」
そう言うと、彼はゆっくりとわっちの足元に膝をついた。
まるで、臣下が女王に傅くような、敬虔な仕草で。
そして―――わっちの目の前で、その濡れた指先を、自らの舌で、ちろり、と舐めとったのだ。
「ひっ…!? な、何を…っ」
「これは、墨の代わり。あなたの“悲しみ”の味がする」
海斗はそう言うと、今度はためらうことなく、顔をわっちの中心へと埋めてきた。
生暖かい吐息が、敏感な場所に直接かかる。その瞬間、腰がびくんと大きく跳ね上がった。
「あ、あんた…っ! 絵師が、そんな…はしたない…っ♡」
「絵師だからこそ、です」
唇が、触れる。
柔らかく、そして熱い舌が、花弁を押し開いていく。
今まで、幾人もの男にここを求められた。けれど、それはいつも獣のような貪り方だった。こんなにも優しく、慈しむように味わわれたことなど、一度もない。
ぬちゅ♡ じゅぷっ♡
いやらしい水音が、静かな部屋に響き渡る。
「あっ…あぁんっ…♡ そこ、は…っ♡」
彼の舌は、まるで生き物のように、わっちの最も感じやすい場所を探り当てる。
硬く尖った蕾を、舐め、吸い、ついばむ。
その度に、脳髄が痺れるような快感が全身を駆け巡った。
「いや…やめて…こんなの、わっちは…知らない…っ♡」
涙が、また溢れてきた。
悲しいのか、嬉しいのか、それともただ気持ちがいいだけなのか。もう、わからなかった。
ただ、この男に、もっと、もっとめちゃくちゃにされたい、という衝動だけが、わっちを突き動かす。
「もっと…おくんなまし…♡ あんたの筆で…わっちを、ぐちゃぐちゃに…描いて…っ♡」
懇願は、もはや言葉にならなかった。
海斗の舌使いは、さらに激しさを増す。
奥の壁を撫でるように、深く、そして強く。わっちの身体の奥底に溜まった“澱”を、全て掻き出すかのように。
「あ、あ、あぁっ…! い、イク…っ! わっち、もう…だめぇっ…♡」
視界が、白く染まる。
頭の芯が、じんと熱くなる。
それは、今まで経験したことのない、魂ごと持っていかれるような、深く、大きな絶頂だった。
全身がけいれんし、甘い蜜が溢れ出す。
海斗はそれを、一滴残らず飲み干すと、ゆっくりと顔を上げた。
彼の口元はわっちの愛液で濡れ、その表情は恍惚としていた。
「…素晴らしい。今まで描いた、どんな絵よりも…美しい」
彼はそう言うと、力なく横たわるわっちの隣にごろりと寝転がり、その汗で濡れた髪を優しく撫でた。
射精した後の男が、すぐに背を向けるのが常だった。こんな風に、優しく触れられたことなど、一度もなかった。
「どうして…」
「ん?」
「どうして、こんなに優しくするでありんすか…? わっちは、ただの遊女なのに…」
問いかけると、海斗は少しだけ悲しそうに微笑んだ。
「あなたは、遊女なんかじゃない。俺の…たった一人の、女神ですよ」
その言葉が、すとん、と胸の奥に落ちてきた。
ああ、そうだ。
わっちはずっと、誰かにそう言ってほしかったのかもしれない。
金で買われる“薄雲太夫”ではなく、ただ一人の女として、誰かに必要とされたかったのだ。
わっちは何も言えず、ただ彼の胸に顔をうずめて、子供のように声を上げて泣いた。
海斗は、そんなわっちを、ただ黙って抱きしめてくれていた。
吉原の夜は、まだ長い。
けれど、わっちの心に差し込んだこの一筋の光が、偽りの夜を終わらせてくれるような、そんな気がした。
【続く】
わっちの挑発的な言葉とは裏腹に、海斗の指はぴたりと動きを止めた。
彼の視線が、わっちの手によって導かれた自らの指先と、そこにある秘められた花園とに注がれる。その瞳に浮かぶのは、卑しい欲望ではなかった。まるで、初めて見る神聖なものに触れてしまったかのような、畏怖と戸惑い。
「……」
沈黙が、部屋を支配する。
気まずさに耐えきれず、わっちが手を離そうとした、その刹那。
「…動かないで」
低い、囁くような声。
海斗はわっちの手を制すると、もう片方の手で、そっとわっちの頬に触れた。
「今から、あなたの“魂”を描く。…少し、時がかかるやもしれませぬ」
そう言うと、彼はゆっくりとわっちの足元に膝をついた。
まるで、臣下が女王に傅くような、敬虔な仕草で。
そして―――わっちの目の前で、その濡れた指先を、自らの舌で、ちろり、と舐めとったのだ。
「ひっ…!? な、何を…っ」
「これは、墨の代わり。あなたの“悲しみ”の味がする」
海斗はそう言うと、今度はためらうことなく、顔をわっちの中心へと埋めてきた。
生暖かい吐息が、敏感な場所に直接かかる。その瞬間、腰がびくんと大きく跳ね上がった。
「あ、あんた…っ! 絵師が、そんな…はしたない…っ♡」
「絵師だからこそ、です」
唇が、触れる。
柔らかく、そして熱い舌が、花弁を押し開いていく。
今まで、幾人もの男にここを求められた。けれど、それはいつも獣のような貪り方だった。こんなにも優しく、慈しむように味わわれたことなど、一度もない。
ぬちゅ♡ じゅぷっ♡
いやらしい水音が、静かな部屋に響き渡る。
「あっ…あぁんっ…♡ そこ、は…っ♡」
彼の舌は、まるで生き物のように、わっちの最も感じやすい場所を探り当てる。
硬く尖った蕾を、舐め、吸い、ついばむ。
その度に、脳髄が痺れるような快感が全身を駆け巡った。
「いや…やめて…こんなの、わっちは…知らない…っ♡」
涙が、また溢れてきた。
悲しいのか、嬉しいのか、それともただ気持ちがいいだけなのか。もう、わからなかった。
ただ、この男に、もっと、もっとめちゃくちゃにされたい、という衝動だけが、わっちを突き動かす。
「もっと…おくんなまし…♡ あんたの筆で…わっちを、ぐちゃぐちゃに…描いて…っ♡」
懇願は、もはや言葉にならなかった。
海斗の舌使いは、さらに激しさを増す。
奥の壁を撫でるように、深く、そして強く。わっちの身体の奥底に溜まった“澱”を、全て掻き出すかのように。
「あ、あ、あぁっ…! い、イク…っ! わっち、もう…だめぇっ…♡」
視界が、白く染まる。
頭の芯が、じんと熱くなる。
それは、今まで経験したことのない、魂ごと持っていかれるような、深く、大きな絶頂だった。
全身がけいれんし、甘い蜜が溢れ出す。
海斗はそれを、一滴残らず飲み干すと、ゆっくりと顔を上げた。
彼の口元はわっちの愛液で濡れ、その表情は恍惚としていた。
「…素晴らしい。今まで描いた、どんな絵よりも…美しい」
彼はそう言うと、力なく横たわるわっちの隣にごろりと寝転がり、その汗で濡れた髪を優しく撫でた。
射精した後の男が、すぐに背を向けるのが常だった。こんな風に、優しく触れられたことなど、一度もなかった。
「どうして…」
「ん?」
「どうして、こんなに優しくするでありんすか…? わっちは、ただの遊女なのに…」
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「あなたは、遊女なんかじゃない。俺の…たった一人の、女神ですよ」
その言葉が、すとん、と胸の奥に落ちてきた。
ああ、そうだ。
わっちはずっと、誰かにそう言ってほしかったのかもしれない。
金で買われる“薄雲太夫”ではなく、ただ一人の女として、誰かに必要とされたかったのだ。
わっちは何も言えず、ただ彼の胸に顔をうずめて、子供のように声を上げて泣いた。
海斗は、そんなわっちを、ただ黙って抱きしめてくれていた。
吉原の夜は、まだ長い。
けれど、わっちの心に差し込んだこの一筋の光が、偽りの夜を終わらせてくれるような、そんな気がした。
【続く】
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