16 / 32
五度目。接触エリア拡張。触れた指先、伝う熱
しおりを挟む
「追加オプション、“接触エリア拡張”が適用されます」
受付の言葉に、一瞬だけ眉をひそめた。
何か言いかけて、俺はやめた。
断る理由も、ない。
むしろ――待っていたのかもしれない。
◆
個室のカバーが開いた。
そこには、見慣れた乳首と――
そのすぐ下、壁の穴の下方から、そっと差し出された指先。
白くて細くて、爪の整った手。
(……やっぱり、お前だ)
もう、確信は揺らがなかった。
涼真の手だ。
何度もオフィスで見た。
キーボードを叩くとき、書類を渡すとき、コーヒーを差し出してきたとき――
その、指先。
そっと、自分の指先を触れさせる。
ぴくん、と、向こうの指が小さく震えた。
(……怖いのか?)
俺に気づかれることに? 俺と、抜き差しならない仲になることに?
(それとも、期待してるのか)
俺はゆっくりと指を重ね、軽く、撫でるように動かした。
絡めると、向こうも応えるように指を絡め返してくる。
ふたりの手が、壁越しに、絡み合う。
そして、乳首に触れた。
ぴくりと跳ねた突起を、唇でゆっくり包む。
ちゅっ……ん、じゅる……ちゅぷっ……
「んんっ、ん……んぅ……ぁ……」
壁の向こうの涼真が、甘く切ない声をこらえている。
俺は、知っててここに来た。
乳首を舐めながら、もう片方の手を、壁の下の方、お腹のあたりにそっと這わせる。
なめらかで、あたたかくて、肌がびくっと震えた。
「……っ、あ、せんぱ……っ」
そうつぶやいた声に、唇が止まりかける。
でも、もう止められない。
乳首を強めに吸い上げながら、腹のラインを撫でる。
指を這わせ、撫でる。
涼真の手が、ぎゅっと指を握り返してきた。
「ふっ、や……ぁ、んんっ……そこ、ふれると……ぅ……っ」
くすぐったそうに、でも明らかに快感に震える声。
声を出すたび、指がわずかに強く絡まってくる。
まるで「もっとして」と言ってるみたいだった。
唇を乳首から離し、壁の向こうに囁く。
「……手、離すなよ」
「……はい……」
涼真の声は、震えていた。
でも、確かに嬉しそうだった。
壁を越えたまま、繋いだ手。
乳首を、ゆっくり吸う。
お腹を、じわじわと撫でる。
指を、強く握り返されるたびに――
俺の中の何かが、もう止まらなくなっていく。
終了ランプが点く。
乳首も、手も、お腹も、ゆっくりと壁の奥へと引っ込んでいった。
残された俺の手には、微かな熱と、名残惜しさだけが残っていた。
(……もう、乳首だけじゃ足りない)
そう思ってしまう俺は、おかしいのだろうか。そんな風に思ってしまう自分が怖かった。だが、俺は、思ってしまうのだ……。
(触れたい。もっと、ちゃんと……)
受付の言葉に、一瞬だけ眉をひそめた。
何か言いかけて、俺はやめた。
断る理由も、ない。
むしろ――待っていたのかもしれない。
◆
個室のカバーが開いた。
そこには、見慣れた乳首と――
そのすぐ下、壁の穴の下方から、そっと差し出された指先。
白くて細くて、爪の整った手。
(……やっぱり、お前だ)
もう、確信は揺らがなかった。
涼真の手だ。
何度もオフィスで見た。
キーボードを叩くとき、書類を渡すとき、コーヒーを差し出してきたとき――
その、指先。
そっと、自分の指先を触れさせる。
ぴくん、と、向こうの指が小さく震えた。
(……怖いのか?)
俺に気づかれることに? 俺と、抜き差しならない仲になることに?
(それとも、期待してるのか)
俺はゆっくりと指を重ね、軽く、撫でるように動かした。
絡めると、向こうも応えるように指を絡め返してくる。
ふたりの手が、壁越しに、絡み合う。
そして、乳首に触れた。
ぴくりと跳ねた突起を、唇でゆっくり包む。
ちゅっ……ん、じゅる……ちゅぷっ……
「んんっ、ん……んぅ……ぁ……」
壁の向こうの涼真が、甘く切ない声をこらえている。
俺は、知っててここに来た。
乳首を舐めながら、もう片方の手を、壁の下の方、お腹のあたりにそっと這わせる。
なめらかで、あたたかくて、肌がびくっと震えた。
「……っ、あ、せんぱ……っ」
そうつぶやいた声に、唇が止まりかける。
でも、もう止められない。
乳首を強めに吸い上げながら、腹のラインを撫でる。
指を這わせ、撫でる。
涼真の手が、ぎゅっと指を握り返してきた。
「ふっ、や……ぁ、んんっ……そこ、ふれると……ぅ……っ」
くすぐったそうに、でも明らかに快感に震える声。
声を出すたび、指がわずかに強く絡まってくる。
まるで「もっとして」と言ってるみたいだった。
唇を乳首から離し、壁の向こうに囁く。
「……手、離すなよ」
「……はい……」
涼真の声は、震えていた。
でも、確かに嬉しそうだった。
壁を越えたまま、繋いだ手。
乳首を、ゆっくり吸う。
お腹を、じわじわと撫でる。
指を、強く握り返されるたびに――
俺の中の何かが、もう止まらなくなっていく。
終了ランプが点く。
乳首も、手も、お腹も、ゆっくりと壁の奥へと引っ込んでいった。
残された俺の手には、微かな熱と、名残惜しさだけが残っていた。
(……もう、乳首だけじゃ足りない)
そう思ってしまう俺は、おかしいのだろうか。そんな風に思ってしまう自分が怖かった。だが、俺は、思ってしまうのだ……。
(触れたい。もっと、ちゃんと……)
13
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる