壁乳

リリーブルー

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五度目。接触エリア拡張。触れた指先、伝う熱

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 受付の言葉に、一瞬だけ眉をひそめた。
 何か言いかけて、俺はやめた。

 断る理由も、ない。

 むしろ――待っていたのかもしれない。

   ◆

 個室のカバーが開いた。

 そこには、見慣れた乳首と――
 そのすぐ下、壁の穴の下方から、そっと差し出された指先。

 白くて細くて、爪の整った手。

 (……やっぱり、お前だ)

 もう、確信は揺らがなかった。

 涼真の手だ。
 何度もオフィスで見た。
 キーボードを叩くとき、書類を渡すとき、コーヒーを差し出してきたとき――
 その、指先。



 そっと、自分の指先を触れさせる。

 ぴくん、と、向こうの指が小さく震えた。

 (……怖いのか?)

 俺に気づかれることに? 俺と、抜き差しならない仲になることに?

 (それとも、期待してるのか)

 俺はゆっくりと指を重ね、軽く、撫でるように動かした。

 絡めると、向こうも応えるように指を絡め返してくる。

 ふたりの手が、壁越しに、絡み合う。



 そして、乳首に触れた。
 ぴくりと跳ねた突起を、唇でゆっくり包む。

 ちゅっ……ん、じゅる……ちゅぷっ……

 「んんっ、ん……んぅ……ぁ……」

 壁の向こうの涼真が、甘く切ない声をこらえている。

 俺は、知っててここに来た。



 乳首を舐めながら、もう片方の手を、壁の下の方、お腹のあたりにそっと這わせる。

 なめらかで、あたたかくて、肌がびくっと震えた。

 「……っ、あ、せんぱ……っ」

 そうつぶやいた声に、唇が止まりかける。

 でも、もう止められない。

 乳首を強めに吸い上げながら、腹のラインを撫でる。
 指を這わせ、撫でる。

 涼真の手が、ぎゅっと指を握り返してきた。



 「ふっ、や……ぁ、んんっ……そこ、ふれると……ぅ……っ」

 くすぐったそうに、でも明らかに快感に震える声。

 声を出すたび、指がわずかに強く絡まってくる。
 まるで「もっとして」と言ってるみたいだった。



 唇を乳首から離し、壁の向こうに囁く。

 「……手、離すなよ」

 「……はい……」

 涼真の声は、震えていた。
 でも、確かに嬉しそうだった。

 壁を越えたまま、繋いだ手。

 乳首を、ゆっくり吸う。

 お腹を、じわじわと撫でる。

 指を、強く握り返されるたびに――
 俺の中の何かが、もう止まらなくなっていく。



 終了ランプが点く。
 乳首も、手も、お腹も、ゆっくりと壁の奥へと引っ込んでいった。



 残された俺の手には、微かな熱と、名残惜しさだけが残っていた。

 (……もう、乳首だけじゃ足りない)

 そう思ってしまう俺は、おかしいのだろうか。そんな風に思ってしまう自分が怖かった。だが、俺は、思ってしまうのだ……。

 (触れたい。もっと、ちゃんと……)
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