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ミッション12 舞台と遠征
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クルシュはとりあえず落ち着いて話を聞いて欲しいと、詰め寄るフィルズを手で制する。頭もぺこぺこ下げていた。
「で?」
改めて問い掛ければ、エルセリアを支えながら周りを見回す。何かを探すように見えた。
「少しだけ! 少しだけお待ちくださいっ!」
そこに、隠密ウサギがどこからともなく現れた。まさかここに隠密ウサギが出て来るとは思わず、フィルズも驚いた。
「ん? なんだお前……たち……親子?」
一匹の隠密ウサギに、ふた回りほど小さな隠密ウサギが得意げに乗っていた。どれだけ下の隠密ウサギが動いても、小さな隠密ウサギは動じない安定感があった。
「まあっ。なんて可愛いの!」
リサーナが目を輝かせ、他の子ども達や大人達も微笑ましそうに見ている。しかし、フィルズは動揺している。
「ちょっ、待て。確かにちっさいのを作ったが、これは想定してない!」
そんなフィルズの言葉など知らんというように、隠密ウサギはチラリともフィルズの方を向かない。そして、小さな隠密ウサギが乗っている場所の前にあるマジックバッグを開けた。
「っ!? 箱!?」
中からずるずるっと長い箱が出て来た。
《棺です》
やっと隠密ウサギの大きい方が喋った。
「いや、なんで!」
《安らかな眠りを願っております》
「まさかっ、そこに入れるのか!?」
誰もが不思議に思いながらも理解した。エルセリアをここに入れるのだと。
《横から入ります》
「っ、なんだと!?」
フィルズは、棺だと言われて混乱したが、横が開くと聞いて一気に興味が湧いた。
「よく見ると……足があるのか? 四角い枠……」
四隅より少しそれぞれ中に入った場所に、手が余裕で入りそうな長方形の枠があり、それが足の役割を担っている。地面から十センチほど棺は上げられていた。その枠にも手を入れられるので、持ち上げも、下に置く時も手を挟まないで持てる。
ここでの一般的な棺は、側面に幾つか取っ手を付けるか縄で巻いて持ち上げるのが普通だったため、画期的なものだと言える。
「持ちやすいのか……これ、誰が?」
《カルバートさんと大工のオヤジさん達が》
「すげえじゃん!」
《はい。公爵領と辺境領での棺はもうこの形が主流となりました》
「いや、だからなんで棺!? 他にも使えるだろ! よし、すぐに連絡を……っ、あっ、開くんだったな!」
興奮気味のフィルズがそのまま仕事モードに入らないようになのか、隠密ウサギは絶妙なタイミングで片方の側面を開けた。
「おおっ! 斜めにっ」
足で上げられている高さがあるため、地面に対して緩やかな坂になる形だ。高さもあるため、余計に緩やかに見える。そして、それは、エルセリアの真横に付けられた。
「ん? 斜めに? おい、まさか……」
《せーの!》
「「「「「っ!?」」」」」
全員が唖然とした。クルシュは見慣れているのか、隠密ウサギが掛け声をかける前にそっと支えていたエルセリアの頭を地面に置き、半歩下がって目を逸らす。
小さな隠密ウサギも一緒になってエルセリアを転がしたのだ。すると、綺麗に一回転した所で棺の中にエルセリアは納まった。
「……なんで起きない……」
「ええ……本当に……」
顔もしっかりと地面に接地しているように見えたが、エルセリアは穏やかな表情で納まっている。呆れるフィルズの傍で、クルシュは尚も目を逸らしながら同意する。
「本当に死んで……ないよなっ」
《風の膜でそれなりに接地面には保護をかけています。勢いよくやると目が回るそうで、一石二鳥です》
「目を開かせねえようにしてる? おい。まさかこれ、他にも使ってんのか……」
隠密ウサギに問いかけると、小さい方が素早く側面の板を元に戻していた。よく働くようだ。動きが素早い。
《侵入者の運び出しと尋問用に少々、特別製の棺を使っております。こちらです》
またちょこまかと小さい方がまた動き、隠密ウサギの背中に飛び乗ると、マジックバッグを開けた。出て来たのは、真っ赤な棺。
「……なあ、『血塗れの母棺』って……なに……」
棺に真っ白な塗料でそう書かれている。とても達筆だった。逆に怖い。
《中をご覧ください》
「見たくない気が……」
《ご覧ください》
「……おう……」
見ろと迫られ、フィルズは上の蓋を開けた。
「おうふ……っ」
「なに? なにが……トゲトゲ?」
セルジュが覗き込んで目を丸くする。次に覗き込んだリュブランが困ったような顔をした。
「ゴツゴツしてるね……そんなに尖ってないけど……ここに寝たら痛そう……」
「側面も、うわっ、蓋の方にもかい? これは……持ち運ばれたら揺れて余計にゴリゴリしそうだね」
カリュエルが痛そうだという顔をして顰め、同じように覗き込んだ子供達も渋い顔となった。
「拷問具……メイデンじゃん……」
アイアンメイデン、鉄の処女と呼ばれる有名な拷問具に似ていた。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
「で?」
改めて問い掛ければ、エルセリアを支えながら周りを見回す。何かを探すように見えた。
「少しだけ! 少しだけお待ちくださいっ!」
そこに、隠密ウサギがどこからともなく現れた。まさかここに隠密ウサギが出て来るとは思わず、フィルズも驚いた。
「ん? なんだお前……たち……親子?」
一匹の隠密ウサギに、ふた回りほど小さな隠密ウサギが得意げに乗っていた。どれだけ下の隠密ウサギが動いても、小さな隠密ウサギは動じない安定感があった。
「まあっ。なんて可愛いの!」
リサーナが目を輝かせ、他の子ども達や大人達も微笑ましそうに見ている。しかし、フィルズは動揺している。
「ちょっ、待て。確かにちっさいのを作ったが、これは想定してない!」
そんなフィルズの言葉など知らんというように、隠密ウサギはチラリともフィルズの方を向かない。そして、小さな隠密ウサギが乗っている場所の前にあるマジックバッグを開けた。
「っ!? 箱!?」
中からずるずるっと長い箱が出て来た。
《棺です》
やっと隠密ウサギの大きい方が喋った。
「いや、なんで!」
《安らかな眠りを願っております》
「まさかっ、そこに入れるのか!?」
誰もが不思議に思いながらも理解した。エルセリアをここに入れるのだと。
《横から入ります》
「っ、なんだと!?」
フィルズは、棺だと言われて混乱したが、横が開くと聞いて一気に興味が湧いた。
「よく見ると……足があるのか? 四角い枠……」
四隅より少しそれぞれ中に入った場所に、手が余裕で入りそうな長方形の枠があり、それが足の役割を担っている。地面から十センチほど棺は上げられていた。その枠にも手を入れられるので、持ち上げも、下に置く時も手を挟まないで持てる。
ここでの一般的な棺は、側面に幾つか取っ手を付けるか縄で巻いて持ち上げるのが普通だったため、画期的なものだと言える。
「持ちやすいのか……これ、誰が?」
《カルバートさんと大工のオヤジさん達が》
「すげえじゃん!」
《はい。公爵領と辺境領での棺はもうこの形が主流となりました》
「いや、だからなんで棺!? 他にも使えるだろ! よし、すぐに連絡を……っ、あっ、開くんだったな!」
興奮気味のフィルズがそのまま仕事モードに入らないようになのか、隠密ウサギは絶妙なタイミングで片方の側面を開けた。
「おおっ! 斜めにっ」
足で上げられている高さがあるため、地面に対して緩やかな坂になる形だ。高さもあるため、余計に緩やかに見える。そして、それは、エルセリアの真横に付けられた。
「ん? 斜めに? おい、まさか……」
《せーの!》
「「「「「っ!?」」」」」
全員が唖然とした。クルシュは見慣れているのか、隠密ウサギが掛け声をかける前にそっと支えていたエルセリアの頭を地面に置き、半歩下がって目を逸らす。
小さな隠密ウサギも一緒になってエルセリアを転がしたのだ。すると、綺麗に一回転した所で棺の中にエルセリアは納まった。
「……なんで起きない……」
「ええ……本当に……」
顔もしっかりと地面に接地しているように見えたが、エルセリアは穏やかな表情で納まっている。呆れるフィルズの傍で、クルシュは尚も目を逸らしながら同意する。
「本当に死んで……ないよなっ」
《風の膜でそれなりに接地面には保護をかけています。勢いよくやると目が回るそうで、一石二鳥です》
「目を開かせねえようにしてる? おい。まさかこれ、他にも使ってんのか……」
隠密ウサギに問いかけると、小さい方が素早く側面の板を元に戻していた。よく働くようだ。動きが素早い。
《侵入者の運び出しと尋問用に少々、特別製の棺を使っております。こちらです》
またちょこまかと小さい方がまた動き、隠密ウサギの背中に飛び乗ると、マジックバッグを開けた。出て来たのは、真っ赤な棺。
「……なあ、『血塗れの母棺』って……なに……」
棺に真っ白な塗料でそう書かれている。とても達筆だった。逆に怖い。
《中をご覧ください》
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《ご覧ください》
「……おう……」
見ろと迫られ、フィルズは上の蓋を開けた。
「おうふ……っ」
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「ゴツゴツしてるね……そんなに尖ってないけど……ここに寝たら痛そう……」
「側面も、うわっ、蓋の方にもかい? これは……持ち運ばれたら揺れて余計にゴリゴリしそうだね」
カリュエルが痛そうだという顔をして顰め、同じように覗き込んだ子供達も渋い顔となった。
「拷問具……メイデンじゃん……」
アイアンメイデン、鉄の処女と呼ばれる有名な拷問具に似ていた。
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