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第八章 学校と研修
326 冒険者達が居なくなったその後
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Bランクに上がる最後の集団暴走を危うげなく終えた冒険者達は、住民を問題なく移送して戻ってきたエイとマンタに乗り込んで行く。
「慌てず、ゆっくりお願いしま~す。大丈夫。たくさん乗れますからね」
ギルド職員達も、仮設したテントなどを積み込む。貨物置き場も充実しているマンタは、住民達と一緒にわずかな家畜や馬も載せていけた広さだ。冒険者達にも手伝ってもらって、問題なく積み込んでいった。
「こりゃあすごい」
「すごいですよね……」
職員達も最初、荷車どころか馬ごと載ることに驚いていたらしい。この世界で馬車ごと載せられる乗り物はないので当然だ。
感心しながらも、冒険者達は戦闘後、それも夜ということもあり、興奮気味に乗り込んでいった。
全員が乗り込んだことを確認して島の上空へ上がる。それにも冒険者達は始終興奮していた。何度目かになるユースール組も、未だに楽しいらしい。
『しばらくこのままお待ちください』
マンタに乗ったコウヤが、館内放送で知らせる。エイの方にも同じように伝えていた。映像を別の場所にも出せるように、声も届くように魔法を改良したのだ。
ここでようやくエリスリリアやルディエ、人化したテンキ達と合流できた。急いでエリスリリアに状況を確認する。
「エリィ姉。聖女はどうしたの?」
エリスリリアは、夜だというのにキラキラと表情が輝いていた。憂さ晴らしは充分に出来たらしい。
「ふふふ♪ ア・レ♪」
「アレ……?」
手入れされた綺麗な指先が向く方を見ると、ちょっと目立つ金色の膜を張った玉が見えた。
その周りには、白っぽい膜の中に居る人々。誰も彼も見るからに仕立ての良さそうな服を着ている。
そんな白い玉は、上から見ると生み付けられた魚の卵のようにも見える。そんな中、金の玉はよく目立った。
魔法師たちが張り切って魔法の灯りで島を照らしているため、それは本当によく見えた。金の玉には露出の多い白い服を着た三十代も後半に見える女性が入っていた。
中にいる女性、聖女は、中からそれを割ろうと必死のようだ。形相がすごいことになっている。その前に叩かれたのか、両頬は腫れているようで、身体つきから年齢を推測するしかなかった。
顔は腫れた上に、水をかけられたのように化粧がドロドロになって広がっているのもすごい。あれでは、服装でしか誰かを判別できないだろう。
因みに、あの後第一王女とその取り巻きも神官達によって運ばれ、問題なく吊るされて白い玉の仲間入りをしていた。ビジェの妹と二人の王女だけは、反省の色が見えるとしてマンタに乗せている。拘束はしていないが、特等席で余す事なく島の様子は見せることになっていた。その見張りは、ニールとビジェに頼んである。
「あれが……そうなの?」
「ええ。金ピカの趣味の悪い長椅子で、だらしなく寝そべっていたから、正座させようと思ってね? 何度か頬を叩いてやったの♪」
あれだけ赤く腫れ上がっているのだから、グーではないだろう。途中で良い音をさせるのに夢中になったのは、予想に難くない。
「手は大丈夫?」
「ふふふ。大丈夫よ。心配してくれてありがとう」
「うん」
この話の聞こえる近くにいたタリスやシーレスは、そっちなのかとツッコミそうになっていた。リクトルスは穏やかな笑みを浮かべたままだ。奥への移動途中の近くに居た冒険者や職員達は聖女がどうしたのかと疑問でいっぱいだが、誰も口を開くことはない。
エリスリリアの美しさに見惚れていたともいう。
「それでね? 正座させても、まったく反省の色がないから、頭を冷やしなさいってとりあえず海に転移させて。ようやく謝る態度になったの。話はきっちり付けたわよ♪」
「そっか。そんなに時間が掛からなくて良かったね」
「ええ。お陰で間に合ったわ」
「「「……」」」
タリスやシーレス達でさえ、言葉が上手く頭に入って来なかったようだ。女神の生き生きとした笑顔で言われる内容ではない。
「そろそろ、今夜のビッグイベントの始まりかしら?」
そう言って、ウキウキされては、もはやタリス達の中では先程の言葉はなかったことになっていた。ここは問題ないと、近くの冒険者達の背を押して奥へと向かう。
「そうだね。うん。時間だ」
そうして、コウヤは館内放送と映像をマンタ内とエイに送ろうとした所で、リクトルスに止められた。
「コウヤくん。今だからこそ、こんな状況だからこそ伝えられるべきことがあると思いますよ。ちょっと説教くさくてもいいから、秩序を司る神として……冒険者ギルドの職員として、伝えられることを……ね?」
「……うん……うん、分かった」
この場だからこそ伝えられることを。
『これより、Bランクの二つの迷宮が集団暴走を起こします。これにより、この島は一度、精霊達のものとなります』
これには、全員が絶句した。騒ぎ出す前にと、コウヤは続ける。
『かつて……この島の精霊達は、故郷を追放され、流れ着いた者たちとの共存を約束しました。お互いが必要とされる関係……そんな理想の下にこの島は成り立ってきたのです』
これを、驚きとともに、金の腕輪をする者達はそれを握りしめる。
『その関係が壊れてしまった今、やり直すためにもこれは必要なことです。集団暴走によって放出した魔獣や魔物達が、島全土を駆け巡ることによって、精霊達の力が大地に行き渡るでしょう。疲弊しきっていた大地は蘇ります』
「え……」
荒れた地でも育つ芋類でさえ、やっと実を付けていた大地は息を吹き返すことになる。それを知り、この島の者たちは呆然とした。良いことではないかと。しかし、もちろん、良いことばかりではない。
『ただし、一度人の生活圏はリセットされます。全員、見ておいてください。集団暴走によって町が……国のあった場所が何も無くなるということの恐ろしさを』
「「「……」」」
その威力を見て欲しい。場所を奪われるという絶望を。
『本来ならば、こんな高見の見物なんて出来るものではありません。集団暴走は突然起きることです。日頃からの心構えがあったとしても、一人の油断で対応も、結果もすぐに変わってしまいます。魔獣や魔物に慣れた冒険者でも絶望するんです。戦いとは無縁の人達にとっては、それ以上の恐怖でしょう』
冒険者ならば逃げられるかもしれない。けれど、一般人にとっては、そんな『かもしれない』さえ無くなる。
『ですが、怖がってはいけません。精霊は……迷宮は、あなた方冒険者が最も近くにあるものです。日々の糧を与え、それを得ることで精霊の力が安定し、周辺の大地が正しく息づいていきます』
迷宮内で生まれたものを倒し、ドロップ品というその一部を外に持ち出すことで力が拡散する。
『大地が富めば、作物が育ちます。植物が育つことで、魔獣や魔物、獣たちが増えますね。それらを間引くこと。そして、育った植物や薬草を採取して摘み取ること。これにより、大地は均衡を保っていくことができます』
この世界には冒険者が必要なのだ。
『あなた方冒険者は、世界の均衡を保つ重要な仕事をしています。それに誇りを持ってください。世界に関わっていることを知ってください。そして、だからこそ、あなた方には未来を担う子ども達にも憧れる存在であってほしいと思います』
偉そうにして良いというわけではない。その立場にあぐらをかくようになってはいけない。
『高潔であれとは言いません。あなた方は生きるために冒険者をやっている。それで構いません。冒険という夢を追うのも良いことです。ですが、あなた方の背中を見て育つ者達が……未来の世界を作っていく者たちが居ることを忘れないように』
憧れられる者の振る舞いを。
『そして、こうした集団暴走など、見てきたことを伝えていってください。今だけではなく、未来をも考えなくてはならないことをあなた方はもっと知るべきです』
命を賭けていることを、もっと強く意識すべきなのだ。
『冒険者が居なくなったその後……それが今、この島で起きていることです。それをよく見て、覚えておいてください』
「「「………」」」
冒険者達だけでなく、職員達も、本来は国を守る騎士や魔法師、アルキス達王族も、説教くさいと鼻白むこともなく、神妙にそれに耳を傾け、同時に映し出される島の様子を確認する。
均衡を保つ者が居なくなったその結果が、この島の惨状だと真に理解したのだろう。
そしてついに、Bランクの迷宮から、魔獣が溢れ出したのだ。
***********
読んでくださりありがとうございます◎
二日空きます。
よろしくお願いします◎
「慌てず、ゆっくりお願いしま~す。大丈夫。たくさん乗れますからね」
ギルド職員達も、仮設したテントなどを積み込む。貨物置き場も充実しているマンタは、住民達と一緒にわずかな家畜や馬も載せていけた広さだ。冒険者達にも手伝ってもらって、問題なく積み込んでいった。
「こりゃあすごい」
「すごいですよね……」
職員達も最初、荷車どころか馬ごと載ることに驚いていたらしい。この世界で馬車ごと載せられる乗り物はないので当然だ。
感心しながらも、冒険者達は戦闘後、それも夜ということもあり、興奮気味に乗り込んでいった。
全員が乗り込んだことを確認して島の上空へ上がる。それにも冒険者達は始終興奮していた。何度目かになるユースール組も、未だに楽しいらしい。
『しばらくこのままお待ちください』
マンタに乗ったコウヤが、館内放送で知らせる。エイの方にも同じように伝えていた。映像を別の場所にも出せるように、声も届くように魔法を改良したのだ。
ここでようやくエリスリリアやルディエ、人化したテンキ達と合流できた。急いでエリスリリアに状況を確認する。
「エリィ姉。聖女はどうしたの?」
エリスリリアは、夜だというのにキラキラと表情が輝いていた。憂さ晴らしは充分に出来たらしい。
「ふふふ♪ ア・レ♪」
「アレ……?」
手入れされた綺麗な指先が向く方を見ると、ちょっと目立つ金色の膜を張った玉が見えた。
その周りには、白っぽい膜の中に居る人々。誰も彼も見るからに仕立ての良さそうな服を着ている。
そんな白い玉は、上から見ると生み付けられた魚の卵のようにも見える。そんな中、金の玉はよく目立った。
魔法師たちが張り切って魔法の灯りで島を照らしているため、それは本当によく見えた。金の玉には露出の多い白い服を着た三十代も後半に見える女性が入っていた。
中にいる女性、聖女は、中からそれを割ろうと必死のようだ。形相がすごいことになっている。その前に叩かれたのか、両頬は腫れているようで、身体つきから年齢を推測するしかなかった。
顔は腫れた上に、水をかけられたのように化粧がドロドロになって広がっているのもすごい。あれでは、服装でしか誰かを判別できないだろう。
因みに、あの後第一王女とその取り巻きも神官達によって運ばれ、問題なく吊るされて白い玉の仲間入りをしていた。ビジェの妹と二人の王女だけは、反省の色が見えるとしてマンタに乗せている。拘束はしていないが、特等席で余す事なく島の様子は見せることになっていた。その見張りは、ニールとビジェに頼んである。
「あれが……そうなの?」
「ええ。金ピカの趣味の悪い長椅子で、だらしなく寝そべっていたから、正座させようと思ってね? 何度か頬を叩いてやったの♪」
あれだけ赤く腫れ上がっているのだから、グーではないだろう。途中で良い音をさせるのに夢中になったのは、予想に難くない。
「手は大丈夫?」
「ふふふ。大丈夫よ。心配してくれてありがとう」
「うん」
この話の聞こえる近くにいたタリスやシーレスは、そっちなのかとツッコミそうになっていた。リクトルスは穏やかな笑みを浮かべたままだ。奥への移動途中の近くに居た冒険者や職員達は聖女がどうしたのかと疑問でいっぱいだが、誰も口を開くことはない。
エリスリリアの美しさに見惚れていたともいう。
「それでね? 正座させても、まったく反省の色がないから、頭を冷やしなさいってとりあえず海に転移させて。ようやく謝る態度になったの。話はきっちり付けたわよ♪」
「そっか。そんなに時間が掛からなくて良かったね」
「ええ。お陰で間に合ったわ」
「「「……」」」
タリスやシーレス達でさえ、言葉が上手く頭に入って来なかったようだ。女神の生き生きとした笑顔で言われる内容ではない。
「そろそろ、今夜のビッグイベントの始まりかしら?」
そう言って、ウキウキされては、もはやタリス達の中では先程の言葉はなかったことになっていた。ここは問題ないと、近くの冒険者達の背を押して奥へと向かう。
「そうだね。うん。時間だ」
そうして、コウヤは館内放送と映像をマンタ内とエイに送ろうとした所で、リクトルスに止められた。
「コウヤくん。今だからこそ、こんな状況だからこそ伝えられるべきことがあると思いますよ。ちょっと説教くさくてもいいから、秩序を司る神として……冒険者ギルドの職員として、伝えられることを……ね?」
「……うん……うん、分かった」
この場だからこそ伝えられることを。
『これより、Bランクの二つの迷宮が集団暴走を起こします。これにより、この島は一度、精霊達のものとなります』
これには、全員が絶句した。騒ぎ出す前にと、コウヤは続ける。
『かつて……この島の精霊達は、故郷を追放され、流れ着いた者たちとの共存を約束しました。お互いが必要とされる関係……そんな理想の下にこの島は成り立ってきたのです』
これを、驚きとともに、金の腕輪をする者達はそれを握りしめる。
『その関係が壊れてしまった今、やり直すためにもこれは必要なことです。集団暴走によって放出した魔獣や魔物達が、島全土を駆け巡ることによって、精霊達の力が大地に行き渡るでしょう。疲弊しきっていた大地は蘇ります』
「え……」
荒れた地でも育つ芋類でさえ、やっと実を付けていた大地は息を吹き返すことになる。それを知り、この島の者たちは呆然とした。良いことではないかと。しかし、もちろん、良いことばかりではない。
『ただし、一度人の生活圏はリセットされます。全員、見ておいてください。集団暴走によって町が……国のあった場所が何も無くなるということの恐ろしさを』
「「「……」」」
その威力を見て欲しい。場所を奪われるという絶望を。
『本来ならば、こんな高見の見物なんて出来るものではありません。集団暴走は突然起きることです。日頃からの心構えがあったとしても、一人の油断で対応も、結果もすぐに変わってしまいます。魔獣や魔物に慣れた冒険者でも絶望するんです。戦いとは無縁の人達にとっては、それ以上の恐怖でしょう』
冒険者ならば逃げられるかもしれない。けれど、一般人にとっては、そんな『かもしれない』さえ無くなる。
『ですが、怖がってはいけません。精霊は……迷宮は、あなた方冒険者が最も近くにあるものです。日々の糧を与え、それを得ることで精霊の力が安定し、周辺の大地が正しく息づいていきます』
迷宮内で生まれたものを倒し、ドロップ品というその一部を外に持ち出すことで力が拡散する。
『大地が富めば、作物が育ちます。植物が育つことで、魔獣や魔物、獣たちが増えますね。それらを間引くこと。そして、育った植物や薬草を採取して摘み取ること。これにより、大地は均衡を保っていくことができます』
この世界には冒険者が必要なのだ。
『あなた方冒険者は、世界の均衡を保つ重要な仕事をしています。それに誇りを持ってください。世界に関わっていることを知ってください。そして、だからこそ、あなた方には未来を担う子ども達にも憧れる存在であってほしいと思います』
偉そうにして良いというわけではない。その立場にあぐらをかくようになってはいけない。
『高潔であれとは言いません。あなた方は生きるために冒険者をやっている。それで構いません。冒険という夢を追うのも良いことです。ですが、あなた方の背中を見て育つ者達が……未来の世界を作っていく者たちが居ることを忘れないように』
憧れられる者の振る舞いを。
『そして、こうした集団暴走など、見てきたことを伝えていってください。今だけではなく、未来をも考えなくてはならないことをあなた方はもっと知るべきです』
命を賭けていることを、もっと強く意識すべきなのだ。
『冒険者が居なくなったその後……それが今、この島で起きていることです。それをよく見て、覚えておいてください』
「「「………」」」
冒険者達だけでなく、職員達も、本来は国を守る騎士や魔法師、アルキス達王族も、説教くさいと鼻白むこともなく、神妙にそれに耳を傾け、同時に映し出される島の様子を確認する。
均衡を保つ者が居なくなったその結果が、この島の惨状だと真に理解したのだろう。
そしてついに、Bランクの迷宮から、魔獣が溢れ出したのだ。
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