夢の橋

夢人

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総司7

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「大変ね?」
 東が部屋を覗いた。
「ようやく麻酔が取れたのね?」
「ああ、今まで警察の尋問を受けてたよ。いろいろ聞かれるけど何も覚えていない」
と言うと彼女は新聞を読み上げる。どうも昨夜私は会社の帰りがけに蒲田で飲んだ後に通り魔に襲われたようだ。背中を刺されて気を失って救急車で運ばれたのだ。警察の調べでは防犯カメラにも映っていなくて、刺し傷が日本刀のようなものだと言われた。それと物取りの犯行でもないようだ。
「仕事の方は?」
「分類は終わっているので後は取締役会待ちだからいいよ。2つの会社の不良債権が集められたら壮大よ。現在戦犯が消える会社で16人、生き残る会社で3人集められている。小物はこの中には入らないわ」
 東は至る所に顔だすので情報通だ。死に損ないになってから方が異様な魅力が出てきた。いつ死んでもいいと言う迫力かもしれない。
「いつ出てこれる?」
「机に座るだけの仕事なら10日もあれば退院できると」
「代わりに書類だしとくわ。それと例の話昨夜乗ったわ」
 そうだ。チームの最年長の男を帰りがけ東に喫茶店で引き合わせた。その後は私は喫茶店に彼らを残して蒲田で独り飲んだのだ。その後通り魔にあったのだ。
「65歳でも立派に立ったよ。彼は100万を持って来た。約束だと言ってね?」
 100万の話は冗談だった。まさか東が乗るとは思っていなかったのだ。
「父より上の男は気持ち悪いと思ったけど、舐めてやると子供のように喜ぶの。しばらく乾の世話にならなくていいみたい」
 男と女は不思議なものだ。
「これ私の気持ち」
と言って50万を置いていった。







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