夢の橋

夢人

文字の大きさ
43 / 182

出会う5

しおりを挟む
 今日から私と蜘蛛が変装して博徒の中に混じった。伯爵の屋敷でここほどスパイの入りやすいところはない。博徒の大半は男で女中は黒揚羽がすべて把握している。博徒は毎日通ってくるものが大半だが常時大広間で泊まり込む者もいる。およそ1日5百人ほどが出入りしている。
 もちろん書斎には博徒は入れない。書斎の本棚の裏に地下室の階段があるからそう簡単に入り込むのは無理だ。この本棚を守っているのは総司だ。総司は朝の剣の練習以外はこの本棚の前に真剣を持って座っている。
 元々蜘蛛は博打が好きだ。私は初めてで与えられた資金を3日ですってしまった。逆に蜘蛛は手元資金を倍に増やしている。時々黒揚羽がサイコロを振る。もろ肌を脱いだ艶めかしさは博徒のマドンナだ。30歳にも見えない若さだ。
「鼠は半ばかり賭けているといいわ」
 耳元で黒揚羽に囁かれて今日はそれを守っている。それでもう持ち金が倍になっている。蜘蛛曰くいかさまではなくて思い通りサイを出せるようだ。だから蜘蛛は黒揚羽が振る時は席を外す。
 私は博徒を見ていて5人ほどをマークしている。蜘蛛と話をするがまったくマークする相手が違う。夕刻に伯爵が博士の元に人力車で出かける。この時は蜘蛛が車夫になって警護に出る。
 私は疲れて書斎に戻って総司と弁当を一緒に食べる。この時が一番楽しいのだ。今までだったら総司は嫌がって背中を向けるのだが、今は結構話もするようになっている。
「不思議な夢を見た」
と総司が塩をつまんで酒を飲みながら話す。
「それは夢ではなくて向こうの世界でのことだよ」
「総司の漫画を読んでいたら総司は私と同じ女だった」
 それは私が総司に上げた10巻の漫画だ。きっと読んだのだ。
「それをくれた人覚えていない?」
「覚えていない」
 まだまだだ。
 突然総司が小柄を書斎の扉の隙間に投げた。書斎の扉は源内が作った鍵を使わないと開かない。
「今のは鍵の音じゃなくすーと開いた。右足に刺さったと思う」








しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

屋上の合鍵

守 秀斗
恋愛
夫と家庭内離婚状態の進藤理央。二十五才。ある日、満たされない肉体を職場のビルの地下倉庫で慰めていると、それを同僚の鈴木哲也に見られてしまうのだが……。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

処理中です...