夢の橋

出会う4

　今日は地下道を始めて使って皇居に入った。地下道の出口は蜘蛛と総司が固める。私は今日は書生の格好をしている。伯爵の後ろを歩いて迎えに来た侍従長の後ろを歩く。その後ろを私がきょろきょろと歩く。長い廊下を抜け立派な部屋に通される。伯爵が座って私が後ろに立つ。
　しばらくして勲章を下げた青年が入ってきた。伯爵は立ち上がると会釈をする。侍従長が後ろに控える。この人が明治天皇だ。体中に緊張が走る。
「しばらくぶりだ」
「いろいろお世話をかけています」
「西郷は私学校を開いたそうだな？それはよかった。だが心配しておる」
「岩倉殿の力を押えられませんか？」
「うむ。難しい。だが暗殺を考えるとはな？」
　暗殺の話は侍従長からあったようだ。不平士族が西郷を押し出している。
「確かに今西郷の力が大きい。岩倉は焦っているように思える。何とか伯爵の力でもう一度西郷を説いてくれ」
　僅か30分の談話で明治天皇は部屋を出た。侍従長は残って伯爵と向かい合う。
「天皇と言えども岩倉は意見を聞くと言う姿勢がない。これは幕末からだ。とくに西郷殿の左遷も天皇に伝えることなく決定を下している。直属の部隊がない」
「親衛隊は？」
「お飾りだ。西郷がおれば岩倉の警察力を押える軍事力があったものを」
　だが今の軍隊に西郷の力は及ばない。侍従長とは1時間に及ぶ話をした。それから井戸に帰った。そこに源内が来ていて屋敷内に忍びが潜り込んだと言う知らせが入った。川路は遂に秘密の部隊を動かしたようだ。この頃話題になり始めているスパイのようだ。