夢の橋

夢人

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幕末の終わり1

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 これだけの事件があったのにただ伯爵が警察に呼ばれたきりだ。新聞も何も書かない。伯爵邸には2人の暗殺団の死体が残されていたが、警察が何の説明もなく運び出した。屋敷には執事の死体だけが残され源内が博徒を使って埋葬した。翌日伯爵は戻ってきた。
「集まってくれ」
 たかが伯爵の肩の包帯を巻き直している。
「明日から京に向かう。執事のお骨も実家に届けなけねばならんが、天皇の代わりに薩摩からの使者と会う。もちろん極秘にだ。それで蝙蝠と総司と鼠小僧を連れて行く」
「駄目です」
 村山たかが恐ろしい目で睨んでいる。
「今日は私の庭です。それに岩倉が必ず襲ってきます。彼の元には私のようなスパイが調査部にたくさんいます」
「分かった」
 困ったように伯爵が承諾した。
 私は総司を連れ出して浅草にドジョウ鍋を食べに出かけた。しばらく東京ともお別れだ。
「たかは幾つだ?」
「まだ20歳だと聞いたわ。でも男は何人も知っていると言っていたわ。スパイは体も武器だって」
 総司は美味しそうに鍋をつつきながら酒を飲む。
「向こうの総司も隠れて酒を飲む。前の休みの時浅草で一緒に飲んだ」
 まだ向こうの記憶はないが私の話を理解するようになっている。
「抱いた?」
「何言ってんだお前のことだよ」
「私は興味がない」
と言って手酌で飲む。
「口を吸われてどうなんだ?」
「髭が痛かった。一は強いから嫌いじゃない。でも私が切る」




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