75 / 182
幕末の終わり16
しおりを挟む
征伐軍が大久保の指揮で熊本城を取り巻いた。だが反乱軍の力は強い。この時点で再び幕末が再現されることもあり得る。それほどまだ体制の整わない明治が揺れている。伯爵も御所で年寄りの元関白に会って揺れている。ここ2日伯爵は部屋に籠っている。総司は朝から真剣を庭で振っている。私は何とか歩けるようになって短銃の構えを繰り返している。
「向こうでな」
それだけでもう総司には伝わる。
「お母さんを入れて初めてランチをした」
「母は認めているのね?」
「それで総司から抱かれてもいいと言われた」
「抱いた?」
他人事のように言う。
「いやこちらの総司を抱いてから抱くと言った」
「それは命がけね?」
門に人力車が停まった。どこからか執事が現れて伯爵の元に案内する。1刻ほどして客は帰っていった。伯爵が別宅に入ってきた。後ろに執事が控えている。
「明日西郷の使者と会うことになった。だが岩倉の包囲網がある。それで考えた。明日屋敷から人力車には鼠に乗ってもらいた。朝執事が変装を施し私の帽子を被って乗ってくれ。先頭は執事が付き後ろは総司が守れ」
囮を出すと言うのだ。だが伯爵は誰が守るのだ。
「私は半刻遅れて裏山から蜘蛛とたかと抜け出す。すでに上の神社に人力車を待たせている。鼠の人力車は反対側を回って遅れて目的地に着く。その頃には会合も終わっているはずだ」
と伝えると伯爵は部屋に戻っていった。
「私が守ってあげる」
総司の声が逞しい。
「向こうでな」
それだけでもう総司には伝わる。
「お母さんを入れて初めてランチをした」
「母は認めているのね?」
「それで総司から抱かれてもいいと言われた」
「抱いた?」
他人事のように言う。
「いやこちらの総司を抱いてから抱くと言った」
「それは命がけね?」
門に人力車が停まった。どこからか執事が現れて伯爵の元に案内する。1刻ほどして客は帰っていった。伯爵が別宅に入ってきた。後ろに執事が控えている。
「明日西郷の使者と会うことになった。だが岩倉の包囲網がある。それで考えた。明日屋敷から人力車には鼠に乗ってもらいた。朝執事が変装を施し私の帽子を被って乗ってくれ。先頭は執事が付き後ろは総司が守れ」
囮を出すと言うのだ。だが伯爵は誰が守るのだ。
「私は半刻遅れて裏山から蜘蛛とたかと抜け出す。すでに上の神社に人力車を待たせている。鼠の人力車は反対側を回って遅れて目的地に着く。その頃には会合も終わっているはずだ」
と伝えると伯爵は部屋に戻っていった。
「私が守ってあげる」
総司の声が逞しい。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
2
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる