夢の橋

夢人

文字の大きさ
82 / 182

夜明け前4

しおりを挟む
 あの噂で私は総司と気まずい雰囲気になってしまっている。同じ書斎にいて目を合わせない。
「源内、ちょっといいか?」
 私はそっと書斎を抜け源内の実験室に行く。源内はワインを飲んでいるらしく私にもグラスに入れてくれる。
「あの・・・」
「子供を産む件だろう?娘は待ち遠しいと言っていた。博士も楽しみにしている」
「そうは簡単に?」
「子供を産むのに愛がいるかね?私も楽しみにしている。君のように明確なトラベラーのこの世での生命の誕生はまだ記録がないのだ。まずトラベラーというものが明らかになったのが公表されてないからな」
 どんどん学問の方に走っていく。
「亡くなったいや、すでに違う世界に行った黒揚羽は彼女の弁では子を産んだことがない。子を産むと新しい世界に脱皮できないそうだ」
「もしここで子供を産んで帰れないことになるのですか?」
「それも試したいのさ」
 それは困る。私は戻って総司と結ばれたい。
「源内、しばらく鼠の気持ちも考えて保留してやったらどうだ?」
 いつの間にか伯爵が入ってきて自分でワイングラスを握っている。
「彼は未来でも総司と会っている。そして恋心を抱いている。難しい問題だよ。もしだよ。今の村山たかが昔のたかのトラベラーなら私も考えるな」
「それはありますな?」
「源内もトラべーラーならと考えてみるといい。それはそうと君の娘の母親については教えてもらったことがない」
と伯爵が話しているうちに源内の姿が消えている。
「この話をすると科学者源内はどこかに行く」
「伯爵と源内は?」
「一番古いと友ではある。会ったのは30年も前のことになる。頭脳明晰な子供がいると言うことで私は彼に会った。母親が祇園の色っぽい芸子でな。この芸子にはさらに若い夫がいた。だが彼はしばらくして亡くなったその時初めてその夫が芸子の子だと知ったのさ」
 



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

屋上の合鍵

守 秀斗
恋愛
夫と家庭内離婚状態の進藤理央。二十五才。ある日、満たされない肉体を職場のビルの地下倉庫で慰めていると、それを同僚の鈴木哲也に見られてしまうのだが……。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

処理中です...