夢の橋

夢人

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夜明け前5

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「君の斜め後ろにいる先輩の報告書だが、新会社の役員の間で問題になっていてね?」
 何時ものように室長に呼ばれている。
「彼は人員整理で戦犯リスト担当ですね?私も整理を手伝いましたから。この赤線の人は戦犯リストから削除されて今は本社の調査部長に栄転と?」
「それがなあ」
と週刊誌を机に置く。離婚訴訟で前代未聞の裏金暴露で慰謝料請求されているとのことだ。
「再調査だ。しばらく直行直帰お構いなしだ」
 ファイルを抱えて部屋に戻る。4時間ファイルを検討して書類調査をする。東が書類を届けるのを見て私も席を立つ。
「もう総司の元へ?」
「いや、少し話ができるか?」
「30分だけなら」
と言って部長にメールを入れて田町のカフェに入る。2人ともビールの小瓶を頼んでいる。
「今日もオフィスでするのか?」
「今日は届けて六本木に行く」
「週刊誌見たか?」
「戦犯調査を受けたのね?私はもう1か月前にそのファイルを見たよ」
「まさか?」
「そのまさかよ」
 それだけ聞いて二人は反対側のホームに上がる。蒲田に着き暖簾を潜る。総司がジャージにピンクのあのエプロンをしてビールの箱を上げている。私は鞄を置くとそれを支える。
「ビール飲みながらノート見てくれる?」
 私はカウンターに立つとウインナーを片手に総司のノートを見る。どうやら夢のことを書き綴っているようだ。
「私鼠に刺されたのよ?」
「怒っている?」
「それが変なの?嬉しかった」




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