夢の橋

夢人

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夜明け前10

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 今日は室長に朝報告を入れて直行で間宮部長の奥さんにあった。人事の資料で分かる分は調べた。社内結婚で10年になるようだ。長女が7歳で一人、賃貸マンションに住んでいる。奥さんは39歳1つ違いだ。
「わざわざありがとうございます」
 年よりも老けて見える。裁判の調停書を見せてもらう。地位に比べて生活が貧しそうに見える。あの地位であればマンションはローンで買っていてもよさそうだ。
「主人は1週間に1度か2度しか帰ってきません。給料は生活費で必要な金額だけ入金してきます」
 私の調査では結婚してから分かっているだけで5人の愛人を持っていた。東で6人目だ。結構悪いことをしているのに金がないはずがない。すべて愛人に捧げているのだろうか。
「ここにもある5億の裏金については残念ながら返済を求められるものです」
「弁護士にもそう言われています」
「でも会社も5億の存在が確認されていません」
「奥さんはどこにあると?」
「主人は他人名義のカードを持っていたことがあるのです」
 こちらの調査ではバックリベートが通帳ごと渡された形跡がある。
「主人はもう帰ってこないのですか?」
「それがやはり休みには戻ってくるのです。それでこの鍵のかかった部屋で過ごすのです」
 この部屋か?また訪ねるということで丁寧に礼を言って外に出た。実に4時間も座っていたことになる。話を聞くだけで疲れる。空腹のまま暖簾を潜る。客はまだ2人しかいない。
「彼女は?」
「毎月の心療内科に出かけているわ。いっちゃんに感謝しているのよ」
 おばさんは総司と私が夢の中で会っていることは知らない。



 

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