夢の橋

夢人

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夜明け前19 

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 関ヶ原の戦い以来最大の野戦であった城東会戦はわずか一日の戦闘で決着がついた。早くも新聞の大きな見出しで配られた。だが新聞社は大久保の騙しを大々的に書いた。民衆は西郷を応援している。
 新聞社に警官が大勢押し寄せた。私と総司ではどうしようもない。社長と社員全員が拘束された。新聞は発刊処分を受けた。
「悪いな?」
 私と総司に背中から一が謝った。それで二人は内閣調査室に向かった。この建物に岩倉がいる。相当な警備で入れそうにもない。それで総司と近くの広場でおにぎりを食べて入口を見張った。その間に馬車に乗った川路が入った。岩倉に呼び出されたのだろう。
「源内の娘を抱くの?」
「実験だ」
 その後の言葉が続かない。
「子供が出来たら鼠はどうなるの?」
「元の世界に帰れないかもしれないと博士は言っていた。だがそれも分からないそうだよ」
 総司が立ち上がった。洋装の女が入口から出てくる。あの女だ。大通りを歩いていく。総司と私が続く。途中から路地に曲り帝国探偵社と言う看板の建物に入る。私は総司に待つように言って勝手口から忍び込む。大部屋の真ん中にあの女が座っている。その前にいわくありげな男達が並んでいる。
「遂に川路からこちらに伯爵の暗殺が回ってきた。警察の軟な暗殺隊では無理だったのよ。まず調査を始める。調査は5人が当たれ。私は博打場に潜る。たかは私が消す。あそこでは蜘蛛という忍者と総司が最も手ごわい」
 私は数に入っていないようだ。
 この話は伯爵に直接した。だが警戒の素振りはなくあちらこちらに出回る。どうも天皇から何か指示が出ているようだ。仕方がないので私は蜘蛛と総司を集めて警備を練った。とにかく必ず2人が警備に当たることとした。私はその夜一にはこのことを知らせて置いた。

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