夢の橋

夢人

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決心3

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 西南戦争の囚人が東京にも連れてこられた。玄道は詳しい記事を連載している。私は写真を習えと言われて記者の1人に付いて回っている。総司は毎日楽しそうだ。話す機会もほとんどない。
 今日はその記者と伯爵に呼ばれて人力車に付いて官邸に出かける。ここ最近伯爵が人脈を広げた一人だと言う。
「忙しところを?」
 伯爵が伊藤博文に挨拶する。私は新聞で何度か名前を見たことがあった。記者はすでに詳しいことを調べていた。すでに病死した木戸孝允(桂小五郎)の傘下に入る。西郷とか板垣とも見解を異とするが必ずしも岩倉や大久保と同じではない。
「西郷殿は惜しいことをしました。でもあのやり方では難しかったのです」
 伯爵は頷いている。伯爵も西郷に感じていたことだ。私は記者に言われて写真を撮る。
「でも岩倉殿や大久保殿のやり方でも難しい。ちょんまげを切ったから欧米と並ぶわけには行きません。近代化が急がれます。まず憲法を作ることです」
 とうとうと1刻話が続いて終わった。
 官邸を出ると伯爵は別れて迎えに来た蜘蛛と人力車で次の場所に移った。最近の伯爵は忙しい。これは蜘蛛の話だが不平士族の仲間らしい。伯爵は裏の世界でも顔が効くようだ。
 私は新聞社に戻って写真を渡して一のいる居酒屋に入る。昨夜は書斎に総司は帰ってこなかった。気になっているのだ。
「総司はもうすぐ来る?」
「泊まったのですか?」
「ああ、飲み過ぎて歩けなかったのだ。それで帰ってから寝床に吐いたのだ。それを洗ってくる」
 一は総司を抱いた。
「不平士族の暗殺団ってあるのですか?」
「ああ、警察でもリストを持っている」
「伯爵は詳しいのですか?」
「伯爵も昔はその中の大きな一つだったのさ。もちろん新選組もだが」









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