夢の橋

決心5

　早朝に暴漢が３０人ほど伯爵の屋敷に流れ込んできた。執事の孫六と蜘蛛と総司と私が防戦する。だが暴漢は伯爵の部屋に銃弾を５発撃ち込んだ。今までにはない荒っぽい襲撃だ。伯爵とたかは床に伏せて免れた。孫六と蜘蛛が姿を消した。
　今日は書斎を斎藤一が警護する。私と総司がそれに加わる。今日は伯爵もたかも書斎に降りてきている。たかが異常に興奮している。
「あれは人殺しの目だ」
　一が書斎の入り口で言う。
「だが私も総司も以前はそうだった」
　確かにたかは狂った目をしている。
「あの目にならなければ人とは殺せんのだ。今の私はもう人を殺せん」
　2刻半して孫六が帰ってきた。
「一も入ってくれ？」
　伯爵の周りにみんなが座る。孫六が口を開く。
「大久保利通の屋敷に入っていきました」
「大久保？」
「西南戦争から戻っていているのです。大久保は岩倉より上手の暗殺団を持っています」
「だがどうして大久保が出てくる？」
　伯爵が首を傾げている。岩倉なら愛人を殺されたので分かるが。
　その後１刻して蜘蛛が戻った。
「屋敷に潜りました。あの女スパイは大久保とも寝ていました。生き残りの岩倉のスパイが大久保に垂れ込んだのです。今回の狙いはたかです」
　それを聞いてたかの目が光った。
　その夜伯爵は蜘蛛に命じてたかを屋敷から消した。一が初めて書斎の酒盛りに参加した。酔いつぶれて私も総司も一にもたれて眠った。