夢の橋

決心9

「そんなに日本の経済は危機的状況なのですか？」
「ああ、西南戦争でようやく築き上げて来た維新の経済基盤が崩れた」
　新しい編集長の西村玄道ははっきりものを言う。今日は私を連れて伊藤博文を訪ねる。官邸に入ると部屋の前で待たされる。半刻待たされて部屋から背広を来た男性が３人出てくる。
「あれは井上毅だ。岩倉が押す憲法案を提出している」
　部屋に入ると伊藤博文は疲れたように椅子にもたれている。
「２刻も話したが平行線だよ。今日は疲れているから」
と言って封筒を差し出した。
「それは案だが分かりやすく書いてある。岩倉殿も大久保殿も反対を唱えているので受け入れられるのは厳しいな」
　その言葉を聞いて編集長と外に出た。
「岩倉も大久保も天皇に権限を持たせて自らが牛耳ろうとしてるのだ。形だけの天皇だ。この考えは根深いのだよ」
「伯爵は？」
「伯爵は天皇の親派だ。それぞれみんな違うのだ」
　私は編集長に断って路地に曲がった。前を早足で歩いているのは蜘蛛だ。1刻も歩き続けていて生垣の柵を潜る。
「どうした？」
「川路の密偵だ」
　裏庭を抜けるとあの旅館に出る。
「この旅館は川路が張っている。まあ天井裏に案内する。鼠も得意分野だ」
　大広間に今日は3人しかいない。あの頭の男の前に女が2人。一人は着物を着たたかだ。
「やるなら私も入れて？」
　だがそれから話は終わってたかだけが部屋に残り頭に抱かれている。
「誰をやるのです？」
「分からん。だが抱かれるのは組んだ証拠だな？」