夢の橋

決心8

　蜘蛛を一が行く居酒屋に夕刻誘った。
「珍しいな。飲ましてくれるとはな？」
　私は徳利を頼んで蜘蛛の杯に注ぐ。
「蜘蛛は伯爵に頼まれて人力車の付き添いや伝言を伝えているだろ？」
「ああ、そうだ。たかも抱かせてもらったからな」　
　たかは身近で使う場合体を抱かせるという彼女の話を聞いたことがある。
「あれはくノ一の体をしている」
「たかの周りを見張ってほしいのです」
「たかじゃなくて？」
「斎藤一があそこにいる浪士達が暗殺団と言っていた。何か嫌な予感がするのです」
「そうだな。たかは不可解な女だ。よし分かった一度天井裏に潜ってみよう」
　蜘蛛は徳利を空けると出て行った。
「今出て行ったのは書斎にいる蜘蛛だろ？」
　一が入ってきて横に座る。
「今日は総司は？」
「伯爵の番で先ほど出かけたよ。色々な付き合いがあるのどろうな？」
　一は新しい徳利を頼んで私に注ぐ。
「伯爵のことは詳しいのですか？」
「昔は新選組は何度も伯爵の部隊とぶつかったよ。あの孫六とは私は剣を交えてた。今のように岩倉や大久保より伯爵の方が怖かった。今とは別人のようだ。私も同じだ。裏で何人殺したことやら。今の鼠や総司が好きなのは血の臭いがないからだ」