夢の橋

決心7

　あの日から屋敷の周りに胡乱なものがうろうろしている。斎藤一は相変わらず総司との練習による。たかの姿は消えて蜘蛛だけが知っているようだ。時々蜘蛛を連れて伯爵が人力車でお忍びで出かけている。私はカメラを持って街中を走り回っている。簡単な記事なら任される。
　最近は大久保の力が強くなって岩倉とぶつかることも多くなった。そう言う取材を記者と官邸で拾う。そんな時伯爵の人力車を見つけた。もう陽が暮れかかっている。人力車の前を蜘蛛が歩いている。私はいつの間にか後ろを付けている。半刻ほど走って下町に入る。古い旅館があって裏木戸に止まる。
　伯爵が裏木戸に消えると蜘蛛は近くの屋台に座り込む。私はしばらく置いて裏木戸の中に入る。手入れされていない庭の先に灯りが灯っている。得意の盗み見だ。大広間に浪士たちが１０人ほどいる。伯爵はその中の大男と話している。
「預かってくれてありがとう」
とお金を渡している。
「ここにはもう一人女がいる。２階の隣同士でいる。あなたはもう暗殺はしないのか？」
　どうやら顔見知りのようだ。
「大久保は止めた方がいい」
「護衛がいるからな？」
「たかは仕事には交えるな？」
「女の力は借りない」
　伯爵は部屋を出ると慣れた足取りで２階に上がる。
「待ってましたよ」
　たかの声だ。私は廊下から屋根に回る。破れた障子から中が見える。もうすでに着物を脱いで全裸になっている。たかは伯爵のズボンを下げると口に咥える。伯爵も男だ。すっかりたかの虜になっている。