夢の橋

夢人

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決心16

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「明治憲法が制定されるのですか?」
「何を言っている伯爵が持たせた伊藤博文の素案なのだ。恐らく伯爵が天皇と伊藤博文を合わせたのだよ」
と玄道編集長が言う。
「岩倉は?」
「最近岩倉の力も弱くなったのだよ。それで力ある若手が発言するようになった。また天皇が発言されることも多くなった」
 記者の数も倍になり私もその末端にいる。経理などの社員も入ってきた。連続小説を扱うこととなり私がその作者を担当することになった。
「また来ました」
「そんなに来ても出来てなくてよ」
 玄道が掘りだした新人の樋口一葉だ。私は近くの果物屋でりんごを買って届ける。もう5度ほど通っている私は彼女の清々しさが好きだ。
「あなたはトラベラーと言っていたね?」
 彼女は記憶力がいい。
「信じてくれているのですか?」
「私も過去に飛んでいったことがあるのよ。それがトラベラーかどうかは分からないけどね?」
 りんごを剥いて皿に乗せる。
「一度その総司も呼んできて?」
「どうするのですか?」
「話を聞いてみたいの」
 一葉まだ貧乏で私が買ってきた大根も葉を残して食べている。
「鼠っていうのですね?」
「はい。鼠小僧です」
「私も飛んでいきたいわ」







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