夢の橋

決心17

　東の机は空いたままだ。メンバーは１１人になったようだ。
「東、銀座で見たわよ」
　お局が話しかけてくる。私は相槌を打たない。
「凄いドレス来てたわ。あれはママっていう感じね？」
　お局も1０年前までは前の会長の女だったという調査が残っている。ずいぶん小金を貯めていて今は会社が引けるとホスト通いをしている。
「一度銀座で食事しない？」
　私は立ち上がると新しい自殺者の調査に出かける。もう惰性のような仕事だ。３６歳で既婚者だが住所に行ったら移転済で病院に行っても引き取り手がないようだ。住民票を調べてらもう除籍されていた。会社が潰れたら人も潰れるのだ。
「あの・・・」
「ああ、奥さんですね？どうしました？」
「５０００万も貰っていいのですか？」
「え！ああいいですよ」
　東だ。私も銀行に調べに行く。私にも５０００万が入っていた。すぐに差し押さえしている銀行の担当者に電話を入れる。
「ああ、競売の件で来られた人ですね？本店は可能だと言っています」
「親戚から金を借りれそうなのですが３８００万が限界なのですが？」
「確認をしてみます」
　直帰で暖簾の前に来た時は7時になっている。夕方から雨が降ってきて中に入ると客は疎らで総司だけだ。
「中に入らなくていいよ。お母さんは不動産屋さんに行っている。弁護士ではなくて変な男達が来たの？」
と言ってウインナー２本を渡してビールを抜く。
「私も病院に行って怒られた」
「どうして？」
「お酒がよくないって」
　２本目はビールと一緒に寿司のパックが出た。