夢の橋

夢人

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日清戦争14

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 一日中部屋に閉じこもっている。いつ知らせが来るか分からない。伯爵と総司と私は鞄を用意していつでも出る用意をしている。こうして2日目になる。さすがに眠気がしてうとうとしている。その時ノックがして李が入ってくる。
「漢城に来るようにと繋ぎがあった」
「何時だ?」
 伯爵が腕時計を見ている。
「1時半」
と言う。裏路地に出ると迷路の中を早足で歩く。漢城が見えると2人が現れる。黙って漢城の通用口から中に入る。大きな建物があってそこにはいる。
「ここは王室の馬車と馬がいる」
 中に入ると薄暗い。すぐに手前の馬車に乗せられる。先ほどの2人は消えている。だが物音はしている。2刻して灯りを持った男達が馬を引いてくる。少しすると大きな音ががしてしばらくすると建物の隙間から空が赤くなったのが見える。
「袁世凱の官舎当たり」
「これもスパイが?」
 扉が開いてどこにいたのか馬車と馬が出て行く。それでゆっくり扉が閉まる。階段から蜘蛛が降りてくる。
「今廊下を通られてここに王族の方が来る。私は3台目に乗る」
と言って軽く伯爵に頭を下げる。灯りが奥の馬車に向かっている。扉の隙間から見た顔のスパイが入ってくる。
「中国兵と朝鮮警察が火災現場に向かっています。1台目の馬車に馬が15頭ほど追いかけたようです」
「やはり張っていたのだな?」
 すでに御者が乗り込んだ。
「李少しこれに乗ってから下ろして貰えばいい」
 それで李が総司の横に座る。半刻して伯爵の馬車に鞭が入った。2頭が前を街道を走る。この後に本物の馬車が出る予定だ。街はずれで李を降ろす予定で私は後ろを見た。離れて馬が付いてきている。
「今降りると危ない」
 私は走っている窓から抜けて御者席に登る。御者が足元の鞄を指す。この中には爆薬が入っている。どうもこの爆薬は先ほどの火災にも使われたのだろう。





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