夢の橋

夢人

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夢の橋2

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 検査があって翌日に集中室から総司のいる8人部屋に移された。この病院は救急病院で建物が古い。だが窓から蒲田の駅のホームが見える。会社に正式に休暇届を出した。お局が出てきて嫌味を言われた。朝に総司が退院をしていった。今日が店の引き渡し日になっているようだ。
 昼過ぎに果物籠を持った東が見舞いに来た。見回り中の医師が思わず足を留める深紅のドレスが鮮やかだ。
「どうしたかと思ったわ。会社でここを聞いたわ」
 みんなの視線が集まっている。私は軋む体を起こしてカーテンを引く。
「向こうで死ぬような目にあった」
「大変ね?」
 夢の世界の話をしている。信じているかどうかは分からないが。
「会長とは?」
「定期的に部屋にやってくるけど、あの不正融資の話をしたら警戒している。妙な男が私を付けているような気がする。調査は進展しているの?」
「不正融資には公に話し合いは済んでいる。たが息子の社長が内密に調査を進めている。この報告はまだしていない。欲を出し過ぎると命を失うぞ」
 私の調査では会長は何度かこの10年で3度疑いをもたれている。その度に3人が死んでいる。もちろん殺人ではなく交通事故や自殺だ。だが私は殺人と見ている。ここまでは室長も調べていない。
「早く元気になって」
と東は布団の上から私のものを握って出て行く。入れ替わりに総司が入ってくる。
「東さんね?凄く美人になってる」
「いや総司の方が可愛い」
「思ったように店が出来上がっていた。3日後にオープンよ」
「宣伝はするのか?」
「いえ、常連だけでいい」




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