夢の橋

夢人

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夢の橋22

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 あれから7年が過ぎ私は新聞社ではキャップとなり7人の部下を貰っている。玄道は社長になりもう現場に降りてくることもなくなっている。私には総司と女の子を2人もうけ長女は剣道を母にならい、次女は一葉の元に入り浸り文学少女になっている。朝3人に送り出され私は今日は新聞社を昼に抜け久しぶりに伯爵の屋敷に顔を出す。伯爵はすでに枢密院を退き新聞社以外に3つの事業を起こしている実業家だ。
 書斎に入ると執事の孫六が杖を手にした伊藤の元執事の蜘蛛と話している。彼は1年前の伊藤暗殺のおり左足を撃たれて引退した。少し遅れて総司が長女に手を引き次女が斎藤一に抱きかかえられて入ってくる。一はもう好々爺だ。頃合いを見て源内親子が入ってくる。
「色々ありましたなあ」
と蜘蛛が伯爵の誕生祝を告げる。
「鼠もここに来てずいぶんになる。向こうでは子供ができたか?」
「種をこちらで使い切ったのかだめです」
「そう言う事例がないぞ」
と源内が笑う。そこに玄道が慌ただしく入ってくる。
「ハルビンで伊藤博文が暗殺されたぞ」
 玄道はポケットに入れて来た原稿を見せる。伯爵が眼鏡を取り出してみる。
「スパイの護衛はいたのだろう?」
「いや岩倉から引き継いだ暗殺団はすでに解散している」
「安重根と言う男が逮捕されたが、この記者は弾の方向が違うと書いているな?」
「私も気になってその記者に直々確認した。その別の方向に帽子を被った女性がいたというのだ」
「それはたかよ」
 総司が自信たっぷりに言う。
「両腕を失っているのに?」
「たかならやるよ」
 急に伯爵が立って、
「明日ハルピンに行く」





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