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自宅兼事務所
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「――!」
一瞬圭介は言葉をなくして、呆然と開いている襖の前に立つ人物を見つめた。
まずその足音からがっちり系の霊能力者ではなく、細身のそれもとても身のこなしの軽い女性だろうと想像していたが、目の前に現れたのは、細身で身のこなしも軽いだろうが、女性と呼ぶには程遠いい、日本で育ってきた者なら誰もが一度は背負ったことがあるだろう、ランドセルを背負った異国の少女だった。
白い肌に深みのあるグリーンの瞳、腰まで届きそうな軽くウエーブのかかった明るい金髪。二階の部屋とはミスマッチな少女の登場に、一瞬圭介がぽかんとした顔をする。
しかしそんな圭介におかまいなしに、少女は流暢な日本語で「ただいま」というと、圭介には、「こんにちは」と挨拶をした。
「山崎、客か?」
「おぉ、おかえり。この間電話くれた谷村圭介さんだ」
それだけ聞くと、少女は居間に隣接した部屋に入っていった。
そしてしばらくしてランドセルの代わりに真っ白なウサギのぬいぐるみを抱え戻って来ると、山崎の隣の座布団にそのウサギを置いた。そして今度は暖簾の垂れた置くの部屋に姿を消した。
「…………?」
圭介は、テーブルを挟んで斜め前の座布団に置かれた真っ白なウサギのぬいぐるみに視線を落とした。
白いモフモフの毛は下にいるぬいぐるみに負けず劣らず見るからに柔らかそうで、思わず触ってみたい衝動にかられる、しかし少女と同じ深いグリーン色の瞳と目が合うと、物言わぬはずの瞳が、軽蔑するように圭介を見ているようで、おもわず伸ばしかけた手を引っ込めた。
「なんだ、山崎お客様に茶の一つも出していないじゃないか」
さきほどの少女が湯飲みを持ってちょうど戻って来たところだった。
どうやらあの暖簾の奥は台所のようだ。
そして圭介の前になにも置かれていないのを見て、呆れたような眼差しで山崎にそう言い放った。
「おぉ、そうだった。これは気が利かなく」
「いえ、おかまいなく」
その年齢からは想像できない、大人びたいいように、咎められた山崎より圭介が慌てる。しかし山崎は、よいしょと立ち上がると、暖簾の奥に姿を消した。
(気まずい……)
事務所をかねた生活空間なのだろうか。そのまま部屋に戻るかも思った少女は白ウサギのぬいぐるみを膝に乗せると、当たり前のように圭介の前に座ったからだ。
目の前に突然プライベートな人間が座ると、人の家に勝手に上がり込んでいるような気がしてなんだか居心地が悪い。
それに小学生とはいえ黙って座っている姿はまるで物語に出てくるお姫様か、穢れなき天使のようだ。
あまりジロジロ見るのも、なんだか自分がいけないことをしているようで、真っ直ぐに少女の方を見ることができない。だからといって、人様の家の中をジロジロ見まわすのもどうなんだろうと考える。
だから自然に視線は少女の湯飲みに注がれしまった。
一瞬圭介は言葉をなくして、呆然と開いている襖の前に立つ人物を見つめた。
まずその足音からがっちり系の霊能力者ではなく、細身のそれもとても身のこなしの軽い女性だろうと想像していたが、目の前に現れたのは、細身で身のこなしも軽いだろうが、女性と呼ぶには程遠いい、日本で育ってきた者なら誰もが一度は背負ったことがあるだろう、ランドセルを背負った異国の少女だった。
白い肌に深みのあるグリーンの瞳、腰まで届きそうな軽くウエーブのかかった明るい金髪。二階の部屋とはミスマッチな少女の登場に、一瞬圭介がぽかんとした顔をする。
しかしそんな圭介におかまいなしに、少女は流暢な日本語で「ただいま」というと、圭介には、「こんにちは」と挨拶をした。
「山崎、客か?」
「おぉ、おかえり。この間電話くれた谷村圭介さんだ」
それだけ聞くと、少女は居間に隣接した部屋に入っていった。
そしてしばらくしてランドセルの代わりに真っ白なウサギのぬいぐるみを抱え戻って来ると、山崎の隣の座布団にそのウサギを置いた。そして今度は暖簾の垂れた置くの部屋に姿を消した。
「…………?」
圭介は、テーブルを挟んで斜め前の座布団に置かれた真っ白なウサギのぬいぐるみに視線を落とした。
白いモフモフの毛は下にいるぬいぐるみに負けず劣らず見るからに柔らかそうで、思わず触ってみたい衝動にかられる、しかし少女と同じ深いグリーン色の瞳と目が合うと、物言わぬはずの瞳が、軽蔑するように圭介を見ているようで、おもわず伸ばしかけた手を引っ込めた。
「なんだ、山崎お客様に茶の一つも出していないじゃないか」
さきほどの少女が湯飲みを持ってちょうど戻って来たところだった。
どうやらあの暖簾の奥は台所のようだ。
そして圭介の前になにも置かれていないのを見て、呆れたような眼差しで山崎にそう言い放った。
「おぉ、そうだった。これは気が利かなく」
「いえ、おかまいなく」
その年齢からは想像できない、大人びたいいように、咎められた山崎より圭介が慌てる。しかし山崎は、よいしょと立ち上がると、暖簾の奥に姿を消した。
(気まずい……)
事務所をかねた生活空間なのだろうか。そのまま部屋に戻るかも思った少女は白ウサギのぬいぐるみを膝に乗せると、当たり前のように圭介の前に座ったからだ。
目の前に突然プライベートな人間が座ると、人の家に勝手に上がり込んでいるような気がしてなんだか居心地が悪い。
それに小学生とはいえ黙って座っている姿はまるで物語に出てくるお姫様か、穢れなき天使のようだ。
あまりジロジロ見るのも、なんだか自分がいけないことをしているようで、真っ直ぐに少女の方を見ることができない。だからといって、人様の家の中をジロジロ見まわすのもどうなんだろうと考える。
だから自然に視線は少女の湯飲みに注がれしまった。
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