秘密組織で改造された二重人格の俺は全世界を破滅させることにしました

草薙銀之介

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第一話 二重人格と改造とランク争奪戦 2

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 構えたなとギラギラしながらそれでいいと、おもしろがってはケタケタとわらっては、悠に微かにも徐々に怒りも観えていた。

 剛力の怒りは知らず内に悠の意識を侵食して、反応すら難しくさせては圧力で支配する、そうした戦略が状況を有利にさせる。

 推進剤で剛力が爆突したと想うと、一瞬でゼロ距離に詰めて圧しの利いた顔と、激しくも力任せな眼力が余計に押し込める。

 違和感を覚えて腹を視ると悠の腹へ刺突がキマっていて、しっかりと刺さっては挿し込まれて、悠はこれでもかと苦痛に叫ぶ。

「悠、お前は我慢し過ぎだ……。」

 悠の意識に狂の言葉が拡がる瞬間、模擬戦としてはやり過ぎだと教官兼所長の女が止めようとすると、何か気配が変わった。

 蒼白く紫炎を思わせる様な不気味に、しかし何処か明るいようなオーラがにじみ出て、腹部が刺されているとは思えない。

 そのまま殴りつけて吹っ飛ばすと、剛力のナノブレイドをゆっくりと引き抜いて、それを放る様に返してやると血が少し吹き出す。

「悠、休んでろ。」

 意識で唱えながら「来いよ」とワザワザ挑発すると、剛力のかんしゃくは最高値に跳ね上がって、力いっぱいに叫ぶ剛力。

 教官女の静止や血の気が引いた様な空気、中にはひっそりと泣く少女も在ったか、狂の底力と剛力の逆止がぶつかっては関係ない。

 剛力が飛び出す動作に合せて血を吹きながら対応する狂、この二者のオーラと闘いの凄まじさは、会場を圧倒するモノだった。

 猛獣の如く呻りながら暴れても、鋭くなった目つき以外は顔つ変えないで冷静に対応しながら、好機が来るのを待っている。

 しかし、それは全く気配を示さないどころか、段々と冷静さが見え隠れし始めて、精度も徐々に上がってきているから溜まらない。

 一発逆転を狙うもことごとく失敗して、このままではジリジリと時間がすり減る上に、出血もあるなら消耗戦でしか無い。

 一旦スタン状態にして装備をおもいだそうとしたら、回復性能のあるスキルがあると悠の意識が介入して、スキル画面を表示する。

 そうかこれだと云ってスキルとその内容を確認すると、何かを悟って警戒する剛力に、アクティブスキルを発動した。

 攻撃自体はかわされても回復自体は機能して、キズは治りかけて出血も止まるなら、『スキルさえ発動すれば回復』する。

 更に状況すらも制御可能でデバフ付きのスキルは他にもあって、それが全て『攻撃と同時に機能する』なら、闘いようはある。

 それによく見たらチートスキルにも見えて、攻撃を受ければ効力はないが、立ち回り次第でもあるなら勝機もある。

 一旦その場で生回復しておいて、今度は攻撃パターンを分析しながら立ち回ることにして、ナノブレイドを斜に正面へ構える。

 緊張の一瞬から圧も押し込まれる猛攻撃を、ひたすら捌いているうちに一瞬だけ攻撃が止む感覚が、薄っすらと見え隠れする。

 違和感を覚えながらひたすら受け身に徹していたが、また傷口が開いて血が噴き出るが、狂は構わないでまた構え直す。

「カカカカカ……、傷口が開いたな?
 その状態で何時までたえられるかな?
 ぐううぅ、ヘヘヘヘヘヘ。」

 もはや猛獣を通り越してキチガイのような剛力に、鋭く眼力を飛ばす狂は一旦生回復して、フルスロットルで脳を回転させる。

 先程からの『違和感の正体』がなにか、そしてそから逆転する方法まで、残り時間を賭けてどうにか突破出来ないか。

 目線で牽制しあってる内に何度か生回復して、また突っ込んできた剛力の攻撃パターンを、少し先読みしながらとにかく捌く。

 やはり一瞬だけ『チャージ可能スキルを組み込んでいる』と、狂ははっきりと目で捉え始めて、僅かに剛力の攻撃が止まり始めた。

 カウンター気味にアクティブスキルを発動して、デバフは無効でも剛力にダメージが入り始めて、状況が地味に好転している。

 ただ防戦一方だった狂の傷もほぼ塞いでいるから、あとはスキルポイントの管理と、カウンター後のコンビネーションか。

 まだ慣れない連続攻撃とバフ・デバフ付スキル、自身の強化と相手の弱体化を如何に通しながら、ダメージでどれだけ削れるか。

 なら、今度は『チャージスキルを使用した直後を狙う』ように、再調整しながらじっくりと、その機会を待つことにした。

「オラオラァ! もう終わりかぁ!」

 絶えることのないように見える剛力の猛攻は、その瞬間にチャージモーションに入った事で、以外にも脆く終わることになる。

 覚えずとも狂の口許が弛みかけたが、これでもかとスキルを放った瞬間にひらりとよけると、剛力を見据えてのアクティブスキル。

「士気折剣(スタニング・ソウル)!」

 スキルの反動で体制が崩れた一瞬を狙って、右平突に低く構えてスラスターで突っ込みながら、突きからの連撃で足を取る。

 僅かに浮いたところへ更に右から切り上げて、右廻りに回転しながら右下に振り下ろして着地すると、更にスキルを発動する。

「明暗錯誤(ブライニングブレイド)!」

 視界さえも封じながらさらなる連撃スキルで、剛力のライフを削るようにして弱体化しては、バフ付きスキルを発動する。

 残り時間は一分を切っていて、ダメージレベルは1でも剛力の強烈なデバフ、『怯み』に始まって狂の反撃はとう響くのか。

 会場は空気が一体化したように、一度冷え込んでも今は見違える程に、緊張感とアクティブな闘いに意識が漬け込まれていた。

 しかし、残念な事に悠の身体能力も低く持久力もないせいか、徐々に動きが鈍くなり始めるような、そんな違和感が見え始めた。

 剛力もそれを見つけてひたすら耐えれば負けはない上で、『攻撃が勝手に止まる』のを、攻撃を受けながら待ち続けた。

 そして、遂に反撃を許す時が来たか、狂の限界が反撃の猛攻を止めて、立ち上がりながら背を向けてギラリと見る眼は狂気。

 ナノブレイドを突いて塞ぎ込む狂は、もはや無理かと朦朧としながら見上げると、剛力の豪なる殺気を全開にしていた。

「豪なる殺気(エビルゾーン)」

 静かに云うと、おもむろにナノブレイドを振り上げて、最期に一撃を食らわせて終わらせる、奥義技を発動した。

「大地の裂け目(グランドハザード)!」

 残り十秒のラストタイムで全力の奥義をうんと叫ぶと、さすがにダメージレベル1ではなにも壊れないが、さすがにまけを悟る。

 残り十秒で何も出来ないままに、ただ狂気の一撃を受け入れては手も足も動かない、今の状況を悠は赦してくれるだろうか。

「済まねえ、悠……」
 
 試合終了のブザーが鳴って実況も口が止まる瞬間、『登録者としての黒田悠』は、激闘の末に敗北して倒れ伏したまま動かない。

 だが、ステージから去る剛力には、スッキリしない『なにか』が引っかかって、焼き魚の骨が歯に挟まったような顔になる。

 そしてランク戦トーナメントは準決勝が極まって、最期の決勝戦がもうすぐ始まる、そこには18歳の少女が不敵にわらっていた。



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