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WEBサイト版別バージョン編
「普通」
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「好きだ。」
彼が初めて私にそう言ったのは実は初めてじゃない。
初めての相手じゃないとかそういうことじゃなく、最初は本当に意味が分からなかった。
何で私が??いくらでも相手が居そうな—なんて失礼なのか、持ち上げてるのかどちらでもない。
ただ、それだけの私の言い訳を胸に秘めて。
蔑むとか、妬みとか、今までの彼女へ嫉妬しているのか、そんなことを考えた。
恥ずかしそうに顔を染め、耳まで赤くなり、潤んだ瞳で、好きだと言われたら女冥利に尽きると言えば尽きるじゃないか。
「え…すき焼きは好きだよ?」
ニッコリ平然を装って、彼の目を真っすぐ見てるようで見れなかった。
それは、自己評価《じぶんへ》の低《じしんのな》さ。いつまでもウジウジ悩んでる私を変えたい。
でも、今までの自分が好きになれない。そんな自分の心の内を知られてしまうのが怖かった。
「そ、そっか。じゃあ、すき焼きの美味しいお店へ行こうか」
「うん!」
ガクッと落ち込む様子が、何だかとても申し訳なくて良心がチクリと痛んだ。
それでも、気持ちがとても嬉しくって、笑ってお店へ駆けていく。
照れ隠しを纏って、知らないふりをして、笑って、彼の気持ちを知ろうともせず。
「待ってよ!」
後姿を見せて、とびきりの笑顔で振り返る。この後からついてくるのを見ているのが好きだった。
私、何でこんなに笑顔で居るんだろう。彼と居ると何でこんなに楽しいんだろう。
高いピンヒールを音を弾むように踊れば、心も晴れていく、こんな気持ちは久々だった。
「運動不足じゃない?」
クスと微笑めば、彼は「うるせー!!」と見た目とは違う脚力で必死に追いかけてくる。
最初の紳士ぶった表情はどこへやら、中学生の男の子みたいにからかうのが楽しい(いや、ティエは年上ですけれども)
「ティアナに馬鹿にされると、すげぇ腹立つ」
「…?」
「だって…いや、何でもない」
「ティエはからかいがいがあって楽しいもの」
「…腹立つ」
「嘘嘘、一緒に居てすごく楽しいよ」
プイと目を合わせなくなるのもお酒に逃げるのも、私たちの「普通」だった。
物事に何を基準で人は普通と呼ぶのだろう。
常識を違えれば?男と女の関係を越えれば?もしくは、カップルになれば??
そんなことは、メシアぐらいしか男友達が居ない私にはチンプンカンプンになってしまうのだけれど。
彼をからかうのが日常になりつつある私は意地悪なのかもしれない。
「すすすすす」
最初はそれが始まりだった。
それで石化の魔法が彼には掛かってしまうの。魔法を解くのは、何なのか。
自分で自分に魔法を掛けてしまう人は初めて見たかもしれなかった。
段々彼は目を見ながら、「す」の感覚が埋まっていく。
「好きだ…」
甘い痺れに何かが私の中で芽吹いていく。
心臓がドキドキする。私の中でドンドンそれは強まっていく。
ある時は景色のとても綺麗な場所に呼び出されたり、レストランの予約を入れられてだったり、
彼は色んなシチュエーションを何度も何度も変えて、それでも頑張っていてくれた。
「好きだ」
これでもう数えるのを辞めたほど。私はいつも逃げてしまう。
だって、告白されるのがいつしか「本気」だと分かってしまった。
この告白だってそうだ。またいつものように誤魔化せば—なんて悪い考えがよぎる。
「俺の事が嫌いなのか」
「そんなことないよ!!」
いつもと違うのは、その質問だった。咄嗟に出たその答えは私自身も驚いた。
その瞬間、彼の目をじいっと見つめて逸らさなかった。その目に書いてあったのは、
『本当だよ』『信じてくれ』『お前だけだから』『女はお前だけでいい』
ストレートに私の心はその言葉を食らった。
私は真っ赤になって、何でこんな単純なことに気が付かなかったのか恥ずかしさで興奮した。
ドキドキドキドキ…何だろう、これ…??自分自身の不甲斐なさを悔い、目を逸らさず答えた。
女として、
これ以上先延ばしにしてはいけなかったから。
「「付き合って下さい」」
同じ言葉が四重奏のように重なった。「大事」「好き」「付き合いたい」「お願いします」その答えが交わりあって、私たちは付き合うことになった。もう付き合ってるのに、変だけれども、私たちはここから始まったんだ。カーッとお互い真っ赤になって、また握手をした。
手汗を伴う熱が伝わって、
「でも」
「でも??」
「私、(自分が)信じられないのも事実なんだ…だから、そういう身体とかの関係になるのはちょっとまだ先と言うか…」
「え…」
ティエがまた石化の魔法で凍った。
自分に自信がついて、隣を歩けるぐらい素敵な人になれたら、
自信を持ってそういう関係になれる気がする。
「??」
困った。ティエが本当にぴしぴしと音が出そうなぐらい凍っている。
戸惑いながらも、「やっぱり私じゃ嫌だったかな…?」と言うと、「そんなことねぇよ!!いいよ、待つから!!」と魔法は解け、おたおたと私の前でいつものティエに戻るその様子に、何だかホッとして笑ってしまう。
「ティエのこういうところが何だか落ち着く…。」
肩に寄り添うと、「や…辞めろよ…せめて好きぐらい言ってくれよ」と小さな声が聞こえたような聞こえないような気がしたのは私が眠かったからかな。頭を優しく撫でてくれるこの温度差に何だかホッとしてしまうのだった。
悔しそうな悲しそうな何かに耐えた顔をしたのは気のせいだったのかな。
「く…可愛い…」
「何か言った??」
これが私たちなりの「普通」だったから。ゆっくりゆっくり進めばいいよね。
私はそう思った。
彼が初めて私にそう言ったのは実は初めてじゃない。
初めての相手じゃないとかそういうことじゃなく、最初は本当に意味が分からなかった。
何で私が??いくらでも相手が居そうな—なんて失礼なのか、持ち上げてるのかどちらでもない。
ただ、それだけの私の言い訳を胸に秘めて。
蔑むとか、妬みとか、今までの彼女へ嫉妬しているのか、そんなことを考えた。
恥ずかしそうに顔を染め、耳まで赤くなり、潤んだ瞳で、好きだと言われたら女冥利に尽きると言えば尽きるじゃないか。
「え…すき焼きは好きだよ?」
ニッコリ平然を装って、彼の目を真っすぐ見てるようで見れなかった。
それは、自己評価《じぶんへ》の低《じしんのな》さ。いつまでもウジウジ悩んでる私を変えたい。
でも、今までの自分が好きになれない。そんな自分の心の内を知られてしまうのが怖かった。
「そ、そっか。じゃあ、すき焼きの美味しいお店へ行こうか」
「うん!」
ガクッと落ち込む様子が、何だかとても申し訳なくて良心がチクリと痛んだ。
それでも、気持ちがとても嬉しくって、笑ってお店へ駆けていく。
照れ隠しを纏って、知らないふりをして、笑って、彼の気持ちを知ろうともせず。
「待ってよ!」
後姿を見せて、とびきりの笑顔で振り返る。この後からついてくるのを見ているのが好きだった。
私、何でこんなに笑顔で居るんだろう。彼と居ると何でこんなに楽しいんだろう。
高いピンヒールを音を弾むように踊れば、心も晴れていく、こんな気持ちは久々だった。
「運動不足じゃない?」
クスと微笑めば、彼は「うるせー!!」と見た目とは違う脚力で必死に追いかけてくる。
最初の紳士ぶった表情はどこへやら、中学生の男の子みたいにからかうのが楽しい(いや、ティエは年上ですけれども)
「ティアナに馬鹿にされると、すげぇ腹立つ」
「…?」
「だって…いや、何でもない」
「ティエはからかいがいがあって楽しいもの」
「…腹立つ」
「嘘嘘、一緒に居てすごく楽しいよ」
プイと目を合わせなくなるのもお酒に逃げるのも、私たちの「普通」だった。
物事に何を基準で人は普通と呼ぶのだろう。
常識を違えれば?男と女の関係を越えれば?もしくは、カップルになれば??
そんなことは、メシアぐらいしか男友達が居ない私にはチンプンカンプンになってしまうのだけれど。
彼をからかうのが日常になりつつある私は意地悪なのかもしれない。
「すすすすす」
最初はそれが始まりだった。
それで石化の魔法が彼には掛かってしまうの。魔法を解くのは、何なのか。
自分で自分に魔法を掛けてしまう人は初めて見たかもしれなかった。
段々彼は目を見ながら、「す」の感覚が埋まっていく。
「好きだ…」
甘い痺れに何かが私の中で芽吹いていく。
心臓がドキドキする。私の中でドンドンそれは強まっていく。
ある時は景色のとても綺麗な場所に呼び出されたり、レストランの予約を入れられてだったり、
彼は色んなシチュエーションを何度も何度も変えて、それでも頑張っていてくれた。
「好きだ」
これでもう数えるのを辞めたほど。私はいつも逃げてしまう。
だって、告白されるのがいつしか「本気」だと分かってしまった。
この告白だってそうだ。またいつものように誤魔化せば—なんて悪い考えがよぎる。
「俺の事が嫌いなのか」
「そんなことないよ!!」
いつもと違うのは、その質問だった。咄嗟に出たその答えは私自身も驚いた。
その瞬間、彼の目をじいっと見つめて逸らさなかった。その目に書いてあったのは、
『本当だよ』『信じてくれ』『お前だけだから』『女はお前だけでいい』
ストレートに私の心はその言葉を食らった。
私は真っ赤になって、何でこんな単純なことに気が付かなかったのか恥ずかしさで興奮した。
ドキドキドキドキ…何だろう、これ…??自分自身の不甲斐なさを悔い、目を逸らさず答えた。
女として、
これ以上先延ばしにしてはいけなかったから。
「「付き合って下さい」」
同じ言葉が四重奏のように重なった。「大事」「好き」「付き合いたい」「お願いします」その答えが交わりあって、私たちは付き合うことになった。もう付き合ってるのに、変だけれども、私たちはここから始まったんだ。カーッとお互い真っ赤になって、また握手をした。
手汗を伴う熱が伝わって、
「でも」
「でも??」
「私、(自分が)信じられないのも事実なんだ…だから、そういう身体とかの関係になるのはちょっとまだ先と言うか…」
「え…」
ティエがまた石化の魔法で凍った。
自分に自信がついて、隣を歩けるぐらい素敵な人になれたら、
自信を持ってそういう関係になれる気がする。
「??」
困った。ティエが本当にぴしぴしと音が出そうなぐらい凍っている。
戸惑いながらも、「やっぱり私じゃ嫌だったかな…?」と言うと、「そんなことねぇよ!!いいよ、待つから!!」と魔法は解け、おたおたと私の前でいつものティエに戻るその様子に、何だかホッとして笑ってしまう。
「ティエのこういうところが何だか落ち着く…。」
肩に寄り添うと、「や…辞めろよ…せめて好きぐらい言ってくれよ」と小さな声が聞こえたような聞こえないような気がしたのは私が眠かったからかな。頭を優しく撫でてくれるこの温度差に何だかホッとしてしまうのだった。
悔しそうな悲しそうな何かに耐えた顔をしたのは気のせいだったのかな。
「く…可愛い…」
「何か言った??」
これが私たちなりの「普通」だったから。ゆっくりゆっくり進めばいいよね。
私はそう思った。
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