気配消し令嬢の失敗

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突然すぎてヘビーな出来事②

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アイスクローを連打され頭に来たのか、足を踏み鳴らし威嚇してくる。
 踏み鳴らすたびに講堂が揺れて壁のヒビが深くなりビシビシとなる。その合間にファイアーブレスも吹いて来た!素早く王子が氷の盾で全て防いでくれる。ユリアは王子に守られてる。と感じて胸のドキドキ吊り橋効果がさらに激しくなっていった。

ユリアも王子の後ろから魔法を使おうとしたが、男爵令嬢馬鹿女が恐ろしさからかへたり込んでて、そばに居るフェンリルに上級魔法が使えない。(どうしよう!このままでは、王子が怪我をしてしまうかも。私がお守りしないと)

その時、
「ユリア嬢、危ない!」
天井から降って来た欠片がユリアの肩に落ちてきたが、王子がギュッと抱き寄せた為、当たらずに済んだ。
「あの、ありがとうございます。」
ユリアがお礼を述べるが、王子はなかなか離さない。
(王子、いい匂いがする。何かドキドキが止まらない。)
(ユリア嬢、可愛い可愛い!ああっこのまま城に連れて行きたい・・・そうしたら・・〈自主規制〉・・・)
ユリアが知ったらドン引きしそうなことを考えながら、もう一度ギュッと抱きしめる。ドスンドスンという足音にユリアの意識が戻ってくる。
「あっあの王子様、フェンリルが・・・。こちらに向かって来ています!」
パッと体を離してフェンリルに向き直る。

2人に甘い雰囲気が浸っていた間に、フェンリルが間合いを詰めてきていた。こちらに迫ってきた分、男爵令嬢とフェンリルの距離が空いた。2人は素早く上級魔法を放った。

「流水塊!」
「ウインドインパルス!」

ほぼ同時に上級魔法を放ったが、僅かに王子の氷魔法が早かった。フェンリルが凍り付き、凍り付いたフェンリルにユリアの風魔法が到来し粉々に弾け飛んだ。

「ふっやったな。」
「やりましたね!王子!」

ドヤ顔を決めたエディオンに満面の笑みを浮かべたユリアは思わず抱きついた。
「ユッユリア嬢」
「すっすみません私ったら!失礼いたしました。」
ユリアは顔を真っ赤にして王子から離れようとしたが、王子がギュッ捕まえて離さなかった。
「あっうっ・・・王子?」
「ユリア嬢、私のことはエディと呼んでくれないか?君だけにはそう呼ばれたいんだ。」
「エディ・・・様?」
「そうだエディだ。だよ。」

「あのーすみません!」
そんな2人に声を掛ける者がいるが、2人の世界に入っているユリア達には聞こえなかった。

私だけのエディ?心臓がバクバクして頭にも血が上ってきたのかフワフワしてなんだか思考が定まらない。
(エディオン王子って、こんなに素敵な人だったの?)
(ああっ可愛い♥もう一押しすれば、惚れてくれるかもしれない。)
「ユリア嬢、ずっと君が好きだった!」
「えっ!私を?」
「そうだ、だからどうか私の・・・」妃にと言いかけたその時だった。

「ちょっと!いい加減無視するの止めてよぅ!ねぇったら、ねぇーーーー!」
無視され続けたことにキレたのか、男爵令嬢が喚き散らし始めた。

「エディオン様と、見えないけどもう1人誰かいるんでしょ!だーすーけーてってば!!!!」

喚き散らし過ぎて助けてがだすけてって聞こえたけど、助けてでいいんだよね。
さすがに気づいてユリアは気配消し&認識阻害を解除した。

「えっええっ!きゅ急に人がいた!なっ何でぇ!」
「貴様!ユリア嬢に失礼だろうが!それに勝手に私の名前を呼ぶなとあれだけ言っただろうが!」
いい所を邪魔されて、王子はマジ切れ寸前だったが、ユリアがギュッと制服の裾を掴んで訴えるように見上げて来たので、途端にふにゃふにゃになった。
子犬のようなアーモンド型の瞳がうるうる潤んでキラキラと輝いて見える。
赤く染まった頬が超絶可愛らしい。
エディオンの頭からユリア以外の何もかもが吹き飛んだ。

ユリアは認識阻害や気配消し魔法を使っていたのは自分だったので、男爵令嬢をそんなに怒らないで欲しいと伝えたかった。だが、王子に何故そんなことを?と聞かれたら「婚約者に選ばれないため」と答えられないし・・・言葉では伝えられないので、態度でそんなに怒らないでと伝えたくてしたのがになってしまったのだった。

「ユリア嬢、君を愛してる!結婚してくれ!」
半分、男爵令嬢に気を取られていたユリアは突然のことに驚いて反射的に
「はっはい!・・・って・・・ぇぇえええ!」
「承諾してくれてありがとう!嬉しい。大切にするからね。」
ニコッと笑ってブレザーのポケットから大切そうに記録用の魔法石を取り出して再生する。

『ユリア嬢、君を愛してる!結婚してくれ!』
『はっはい』

ユリアは突然再生された魔法石に混乱した。
「あのっそれって・・・」
「ああっこれ?2落し物として届けようと思って持ってたんだけどちょうど良かったから、プロポーズの記念に記録させてもらったよ。」
と王子は大嘘をケロッと付いてニコッと笑った。内心(ヨシっ!これで言質は取った。あとは押すべし!)と大喜びだったが、ユリアは微塵も気づいていなかった。

(それって、前に面白半分で置いた記録用の魔法石だよね・・・)
王子のプロポーズを承諾したのに、断ったら不敬罪に取られかねない。
(わっ私のバカぁぁぁー!・・・でも、王子は素敵な人だし、このままでも・・・。でも王妃教育は嫌だし・・・でも王子はカッコいいし、好きだと言ってくれたし・・・)ユリアの頭は大混乱になった。

「ちょっと!おアツいのは分かったから!はやく助けてよ!」
「まだ居たのか!さっさと去れ!」
「腰が抜けて歩けないのよ!早く助けなさいよ。このケチ王子!」

またもや舌戦が繰り広げられたことにより、ユリアの意識は戻って来た。(えっ今なんて言った?)男爵令嬢の今の言葉がカチンと癇に障った。

「ごめんなさい。今助けるわちょっと待っていて。」
ニコッと笑うと、さっき見たばかりの風魔法の応用魔法を、で使って見た。

「何?何なのこれ?ぎゃああああーっ止めて、止めてー!」

手加減なしで上級魔法を使ったので、ブワッと持ち上がった男爵令嬢はハイスピードで移動し、瞬く間に講堂から姿を消した。(大丈夫、大丈夫、一応校舎にはぶつからないように制御したから。)ユリアは心の内で頷いた。

「やっと煩いのが居なくなったね。ねぇ、ユリアって呼んでもいいかい?」
「えっ?ええ。王子」
「エディって呼んでくれないの?ほらっだよ。さぁ言ってみて。」
「エッエディ・・・様」
「ユリア」
「エディ様」
「ユリア」
見つめ合う2人には、もうお互いしか目に入っていなかった。
ユーフミナ公爵家の血を引く恋に盲目な一途で重い恋人同士が誕生した瞬間だった。


(早く避難いただきたいが、今声をかけたら王子に殺されそうだ。どうしよう・・・)
桃色の世界にはまりこんだ2人に声を掛けられず、カイトと他2名がオロオロしながら見つめていたが、そのことにしばらくユリアとエディオンは気づくことが出来なかった。
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