気配消し令嬢の失敗

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やらかしの後始末

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桃色の世界から無事に帰って来た2人だったが、そのまま帰宅とはならなかった。
学園長や先生達に囲まれ、事の顛末を聞かれたのだ。
リッチモンド男爵令嬢は、ユリアの風魔法のせいで気絶したらしく、まだ事情は聞けていないとのことだったが、召喚石を持ち込んだので退学処分は免れないとのことだった。
(まぁ良かったわ。をケチ王子と呼んでいたし)
その思考回路はシルヴィアにそっくりだった。よく考えたらヤバい人になりつつあることに、全く気づかないユリアだった。
解放された時には日がとっぷり暮れていた。

エディオンとしてはユリアともう少し話したかったイチャイチャしたかったが、ユリアの疲れた顔を見て今日は無理だと諦めた。

「ユリア明日の休日、公爵邸に伺いたい。午後になると思うが予定はあるかい?」
「明日ですか?特に何もありませんが。」
「では午後に伺う、待っていてくれ。もし、ご両親がいたら挨拶したいからと伝えておいてね。」

ユリアはフワフワした気分でハイと答えた。
エディオンは馬車にユリアが乗り込むまでエスコートし、馬車の姿が見えなくなるまで見送った。

ユリアの前では最後まで颯爽としてしていたエディオンだったが、中身は爽やかさとは真反対なことを考えていた。
(ふふふっ思ったより上手くいった。フェンリルの召喚石に入れ替えて正解だった。あとは後始末だな。)
わるーい顔でニヤリと微笑む。

男爵令嬢が召喚石を使って魔法の授業に参加するつもりらしいと情報を掴んできたのは、見張りに立てていたルイスだった。
どうやら周囲に魔法の実力は底辺レベルへっぽこレベルと噂されていたことに腹を据えかねたらしい。
一角魔獣(魔物としては最弱)の召喚石を購入したことを知り、この計画を思いついたのだった。

「カイト、ダダン、ルイスそこに居るか。」
「はっこちらに居ります。」
物陰からカイトと他2名が現れた。
「話がある、私の馬車に乗れ。」

馬車に乗り込むと、王子が真顔で3人に聞いた。
「フェンリルの召喚石の件、すり替えたこと、誰にも悟られていないだろうな。」
ルイスがそれに答える。
「私めが闇魔法を纏い、テレポートでリッチモンド令嬢の部屋にてすり替えたので目撃者は誰もおりません。」
「万が一、部屋に記録用の魔法石が置いてあった場合はどうなる?」
「黒いモヤが映ることになります。私とは分からないはずです。」
分かったと頷き、ダダンに目を移す。
あの馬鹿共の醜態側近候補達のやらかしは上手く撮れたか?」
「はい。私の魔法石と、講堂に設置していた魔法石の記録でバッチリ撮れておりました。」
ダダンが記録用の魔法石を再生する。
バッチリ取れていたが、側近候補達にズボンをズリ下げられたカッコ悪い姿も写っていたのでそこだけ編集するように言いつける。
(ふふっこれであの愚鈍な奴らを側近候補から外せられる。)
最後にカイトに顔を向ける。
「カイト、お前は・・・ユリアの護衛今までご苦労だった。本来は叱るべきだが、ユリアが講堂に来てくれたおかげで私の気持ちを伝えることができた。礼を言う。」
カイトはてっきり叱られると思って緊張していたが、王子の意外な言葉にホッとする。

「さて、これからのことだが今回、私の側近候補達は一掃することにした。彼奴らの親達も醜態を見たら納得せざるを得ないだろう。そこでだ。」
3人それぞれの顔を見回してもう一度口を開く。
「この度の対応を見ていたが、魔法能力、対応能力、全てにおいて素晴らしかった。君たちを新たな側近候補としたい。どうだ、受けてくれるか?」

「「「はい!ありがとうございます!!!」」」突然のことに驚いたが、王子の側近候補は行く行くの大出世が約束されている。3人とも意気揚々と了承した。

「ただな・・・もう1人必要なのだ。出来れば高位の貴族がいいのだが・・・。」
カイトは伯爵家の三男、ルイスは辺境伯の次男、ダダンは子爵家の六男だ。
「家柄がいいだけではなくて賢く、魔法が使える優秀な人物がいいのだがな。そんな令息が残っているだろうか・・・。」
将来、王の側近となる者たちなので、あまり身分が低いと統治に支障が出るかもしれない。

「あっあの、差し出がましいかもしれませんが、セルシオ・ユーフミナ様はいかがでしょうか?確か3つ年下ですが、非常に優秀な方ときいております。」
「ユーフミナ公爵家の次男の方か!私も師匠から噂を聞いたことがあります。座学も魔法も優秀でさらに人柄も穏やかであるとのことです。歳も13歳ですし、今から側近候補に加えてもおかしくないのではないでしょうか。」
「ほう、ユリアの弟か。確かに身分、年齢もちょうどいい。検討しよう。」

ーーーーーーーーーー
この時の決断によって、後の世にエディオンは英雄王として伝えられることとなる。賢妃キャサリンに劣らぬ知恵と讃えられた部分はセルシオが、即断即決即対応、雷神のような素早さと讃えられたの部分はカイト他2名がほぼ王の影で暗躍した結果だった。側近の手柄は王の手柄となる。20年後、平然とこなす天才セルシオと、苦労人で実年齢より老けてみえるカイト他2名は、ほぼ同じ年齢とは思えなかったという
ーーーーーーーーー
閑話休題それは置いといて


その頃、ユリアは学園での出来事を両親に報告し、明日王子が公爵家に来訪することを伝えた。

「ユリア、本当に婚約者になることは納得したのかい?王子と結婚するということは、あんなに嫌がっていた王妃になるんだよ?まさか、王子に無理矢理何かされたんじゃないよね?」
王子の執着具合を知っていたイリアスは、ユリアに無体なことをしたのではないか不安になった。
「お父様、エディ様は紳士な方よ。その様な真似するわけないでしょう。」
ユリアは即座に否定した。

エディオンは、以前からユリアに断られたら攫って既成事実を作ってしまおう考えていたのでイリアスの心配は半分当たっていたのだが・・・幸いユリアは知らずに済んだ。

「そうか・・・でも本当に大丈夫かい?」
「本当は王妃教育に耐えられるか不安なの。でも、エディ様のためなら頑張って耐えるわ!」
瞳をランランとして、やる気を巡らせているユリアに公爵夫妻は目を見合わせた。

「あのね。ユリア落ち着いて聞いて欲しいのだけど。」
言いづらそうにシルヴィアが切り出した。
「今までやって来た公爵令嬢教育だけど、ほとんど王妃教育と同じなのよ。」
「えっ?」
「最初は、イリアスへの悪戯の罰だったんだけどね。・・・王子からユリアを婚約者にしたいって話があって5年続けて来たのよ。基礎は5年でだいたい修了したから、あとは王宮でしか学べない作法とかの勉強になると思うわ。」
「えっええっ!エディ様は確かに私を好きだと言ってくださったけど、何時からなの?」
「何時って最初の顔合わせの時からよ。・・・ああっ王子には精神魔法は効かないのよ。貴女がおかしな魔法を使っていたことも最初から見抜いていらっしゃいましたよ。」
ガーン!ユリアは愕然とした。
(じゃあ、私の作戦は最初から失敗だったの?)自信があったが最初から失敗していたことを直ぐには受け入れられなかった。
「王子はずっーーーと貴女が好きだったのよ。でも貴女は王妃になりたくないって言い続けていたでしょう。無理やり婚約者にさせたら、貴女が何をするか分からないから黙っていたのよ。5年黙って見守っていた、王子の一途な思い(執着)に感謝しないといけないわね。」
エディ様はそんなに私を好きでいてくれたんだ!こっそり王妃教育を押し付けられていたことは忘れて感動に打ち震えた。

「明日、王子が正式な婚約を申し入れられて、こちらが婚約を了承したらもう後戻りはできないよ。いいんだね。」
「はい。お父様、お母様、私エディ様と結婚します。王妃でもなんでもドーンと来いです!」
「わかったわ。幸せになってねユリア。」

こうしてユリアとエディオンは婚約し、その後、仲が良い幸せな夫妻となった。

ーーーーーーーーーー
ユリアの1番の失敗とは?
エディオン腹黒王子に惚れてしまったことです。

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