嘘の日に初恋が実ることはない

斯波良久@出来損ないΩの猫獣人発売中

文字の大きさ
2 / 11

2.

しおりを挟む
 といっても俺はまだ幸せな方だ。


「あ、もしかして今年が奇数の年だからって心配しているんでしょ」
「大丈夫だよ、かっちゃんなら今年もいい人に選ばれるって」
「性欲は向けられないかもしれないけど……」
「番には選ばれないかもしれないけど……」
「でもいい人見つかるって」
「ありがとう。お前達も不安だろうに、心配かけてごめんな」
「不安なのは今だけだよ」
「発情剤を飲めば正気なんてなくなるんだから」

 彼らはカラカラと笑う。
 そして「いい人に選ばれるために今から念入りにスキンケアしとかなきゃ」とわざとらしい声を上げて、去って行った。

「はぁ、年下に心配かけるなんて情けない」

 自己嫌悪に陥りながらカレンダーを眺める。

 俺が初めて番選びに参加したのは七年前。
 そこから二年ごとにほとんど同じ相手に選ばれている。一度だって抱かれたことはない。誰も性欲や恋愛感情を欠片だって向けてこなかった。

 初めからそういう相手として選ばれた訳ではないし、アルファの発情香を全く感じない俺だからこそ彼らは会場で目をつけた。配布される発情剤も効かない。特殊体質というやつなのだ。


 だからこそオメガのほとんどが生まれてすぐに施設に入れられるのに対して、俺は五歳まで外で過ごしていた。

 今でこそ成人ベータ男子にしか見えない俺もあの頃はまだオメガらしい愛らしさもあったが、子どもだからとさほど気にされることもなく、ベータやアルファの子と混ざって公園で駆け回っていた。

 そこで出会った少年、ダイチに恋をして、何らかの理由で施設に入れられた。
 入所のきっかけはよく覚えていない。気づいたら限られた荷物と一緒に施設に入っていた。

 離れても家族仲は良好のまま。けれど施設に入れたのかだけは絶対に教えてくれない。
 大した理由なんてないのかもしれない。どんなに遅くとも小学校を卒業したら施設に入らなくてはいけないのだ。なら小学校に入学させる前に入れてしまおうとでも思っていたのかもしれない。

 買ってもらった黒いランドセルを背負えなかったことと、お別れを言えなかったことは未だに気になっている。そして初恋もまた、未だに引きずっていた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

鳥籠の夢

hina
BL
広大な帝国の属国になった小国の第七王子は帝国の若き皇帝に輿入れすることになる。

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

上手に啼いて

紺色橙
BL
■聡は10歳の初めての発情期の際、大輝に噛まれ番となった。それ以来関係を継続しているが、愛ではなく都合と情で続いている現状はそろそろ終わりが見えていた。 ■注意*独自オメガバース設定。■『それは愛か本能か』と同じ世界設定です。関係は一切なし。

番に囲われ逃げられない

ネコフク
BL
高校の入学と同時に入寮した部屋へ一歩踏み出したら目の前に笑顔の綺麗な同室人がいてあれよあれよという間にベッドへ押し倒され即挿入!俺Ωなのに同室人で学校の理事長の息子である颯人と一緒にα寮で生活する事に。「ヒートが来たら噛むから」と宣言され有言実行され番に。そんなヤベェ奴に捕まったΩとヤベェαのちょっとしたお話。 結局現状を受け入れている受けとどこまでも囲い込もうとする攻めです。オメガバース。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

僕の番

結城れい
BL
白石湊(しらいし みなと)は、大学生のΩだ。αの番がいて同棲までしている。最近湊は、番である森颯真(もり そうま)の衣服を集めることがやめられない。気づかれないように少しずつ集めていくが―― ※他サイトにも掲載

処理中です...