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「ユキちゃんは人気者で、いつだって周りに人がいたんだ。それでも友達のいない俺の手を引いて、砂場で一緒に遊んでくれた。一緒にもう一人いて、三人で大きな山を作って真ん中に穴を作った。てっぺんには三人のスコップを立てて。俺ももう一人もユキちゃんが大好きで、同じ黄色いスコップを買ってもらったんだ。ずっと、ずっとこの先も三人で一緒にいられるって思ってた……ああ、懐かしいな」
その光景を俺は知っている。
施設に入る少し前のこと。滑り台からの飛び降りを母に止められて、その後は滑り台に近づくことさえ禁じられていた。むくれながらも母の言いつけを破れば一ヶ月おやつ抜きにされてしまう。
だから渋々砂場に足を運んだ。
ちょうど近くに手持ち無沙汰にしていた男の子がいたから彼を誘って。そこからしばらく経った後にもう一人仲間が増えた。
俺が恋をしたのは初めに遊んでいた男の子。そうか、目の前の彼こそがダイチだったのか。
そのことに気づけば、どことなくその頃の面影が残っているような気がする。
血色が良くなったからこそ分かるような本当に小さな部分だけど。優しく笑うダイチに胸が高鳴った。
では彼の探している相手も俺なのかと言えば違う。
ユキちゃんは別にいた。
「真ん中で手が触れた時、胸がドキッと大きく弾んだんだ。今でもはっきりと覚えている。あれが恋を自覚した瞬間だった。けど俺が終わらせてしまった」
俺は一緒にいたもう一人。
ユキちゃんはあの日、公園の入り口でオロオロしていたから砂場に誘ったのだ。
透き通るような銀色の髪と真っ赤でうるうるとした瞳の持ち主のユキちゃんは周りから遠巻きに見られていた。
あの時はなんで誰も声をかけないんだろうって思ったけど、今なら周りの気持ちがよく分かる。綺麗すぎて誰も声をかけられなかったのだ。
あの時はあまり気にしていなかったと思っていたけれど、ユキちゃんが『ユキ』って名乗った後に自分のあだ名も『ユキ』だとは言い出せなかった。あの日から俺は『かっちゃん』になった。
今の今まで昔は自分もユキちゃんと名乗っていたことをすっかりと忘れていた。記憶を消したくなるほどにユキちゃんは可愛らしかったのだ。
なぜ彼はこんな俺とユキちゃんの色を間違えて覚えているのだろう。
銀と暗めの緑、赤と黒なんてどう考えても結びつくはずがない。
それにユキちゃんはおそらくオメガではない。少なくとも施設には入っていない。
いなくなる前に何かしらあったことはダイチの様子からも窺い知れる。だがおそらくはタイミング悪く引っ越しをしてしまったとかなのだろう。
同じくらいの時期に俺が施設に入り、二人揃って消えたせいで情報が混ざってしまっているだけ。
滑り台から飛び降りようとしたのも俺だ。ユキちゃんはそんなことしない。
お砂場遊びをするのだって、俺が誘ったあの日が初めてだったのだ。良いところの育ちなんだろうと母が言っていたのを覚えている。
きっとユキちゃんが急にいなくなったショックで、色々と情報が混ざってしまったのかもしれない。
ただでさえ十七年前の一ヶ月ほどの記憶しかないのだ。
多少間違えて記憶していても無理はない。
今から銀髪で赤目のユキちゃんを探すことだって出来る。だが見た目とかつてのあだ名しか情報がない。
それはオメガ女性で施設に入ったユキちゃんを探すよりもずっと難しいことで、初恋を諦めようとしている彼に伝えるにはあまりにも残酷だった。
その光景を俺は知っている。
施設に入る少し前のこと。滑り台からの飛び降りを母に止められて、その後は滑り台に近づくことさえ禁じられていた。むくれながらも母の言いつけを破れば一ヶ月おやつ抜きにされてしまう。
だから渋々砂場に足を運んだ。
ちょうど近くに手持ち無沙汰にしていた男の子がいたから彼を誘って。そこからしばらく経った後にもう一人仲間が増えた。
俺が恋をしたのは初めに遊んでいた男の子。そうか、目の前の彼こそがダイチだったのか。
そのことに気づけば、どことなくその頃の面影が残っているような気がする。
血色が良くなったからこそ分かるような本当に小さな部分だけど。優しく笑うダイチに胸が高鳴った。
では彼の探している相手も俺なのかと言えば違う。
ユキちゃんは別にいた。
「真ん中で手が触れた時、胸がドキッと大きく弾んだんだ。今でもはっきりと覚えている。あれが恋を自覚した瞬間だった。けど俺が終わらせてしまった」
俺は一緒にいたもう一人。
ユキちゃんはあの日、公園の入り口でオロオロしていたから砂場に誘ったのだ。
透き通るような銀色の髪と真っ赤でうるうるとした瞳の持ち主のユキちゃんは周りから遠巻きに見られていた。
あの時はなんで誰も声をかけないんだろうって思ったけど、今なら周りの気持ちがよく分かる。綺麗すぎて誰も声をかけられなかったのだ。
あの時はあまり気にしていなかったと思っていたけれど、ユキちゃんが『ユキ』って名乗った後に自分のあだ名も『ユキ』だとは言い出せなかった。あの日から俺は『かっちゃん』になった。
今の今まで昔は自分もユキちゃんと名乗っていたことをすっかりと忘れていた。記憶を消したくなるほどにユキちゃんは可愛らしかったのだ。
なぜ彼はこんな俺とユキちゃんの色を間違えて覚えているのだろう。
銀と暗めの緑、赤と黒なんてどう考えても結びつくはずがない。
それにユキちゃんはおそらくオメガではない。少なくとも施設には入っていない。
いなくなる前に何かしらあったことはダイチの様子からも窺い知れる。だがおそらくはタイミング悪く引っ越しをしてしまったとかなのだろう。
同じくらいの時期に俺が施設に入り、二人揃って消えたせいで情報が混ざってしまっているだけ。
滑り台から飛び降りようとしたのも俺だ。ユキちゃんはそんなことしない。
お砂場遊びをするのだって、俺が誘ったあの日が初めてだったのだ。良いところの育ちなんだろうと母が言っていたのを覚えている。
きっとユキちゃんが急にいなくなったショックで、色々と情報が混ざってしまったのかもしれない。
ただでさえ十七年前の一ヶ月ほどの記憶しかないのだ。
多少間違えて記憶していても無理はない。
今から銀髪で赤目のユキちゃんを探すことだって出来る。だが見た目とかつてのあだ名しか情報がない。
それはオメガ女性で施設に入ったユキちゃんを探すよりもずっと難しいことで、初恋を諦めようとしている彼に伝えるにはあまりにも残酷だった。
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