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僕は犬になって、花ちゃんを褒めるよ
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しおりを挟む———さみだれる夜、花は齢1年に満たない幼き犬と出会いました。
降り頻る夜の雨に濡れた御世辞にも美しいとは言えない粗末な花に、犬は金色の毛並みを同じように濡らし、まるで愛しむかの如くやわらかな微笑みをその花に向けたのでした———
『金色の少年』の物語部分、flavorさんが16歳ほどの少年と出会ったこのシーンも結構気に入っている。
特に一番最初の「さみだれる」は「五月雨」と「さ乱れる」がかけてあって、flavorさんが傘も持たずに頭の先から梅雨の雨に濡れて悲しんでいる様子がそのひらがな五文字に表されていて、16歳の僕はとても「美しい」と思った。
flavorさんことご主人様と初めて顔を合わせた際、樹くんがドン引きした長尺の暗唱の他にも「さみだれる」についても同様に褒めたら、ご主人様から鼻で笑われた。
「ごくありふれた表現であって自分のオリジナルでも何でもない」が冷笑の理由なんだそうだ。
直後僕は無知な坊やである事を知らされた訳なんだけど、それから大学受験をして学生になって知見を広げていく現時点に至っても、flavorさんの「さみだれる」を超える情景の美しさに出会えていない。
……多分、この事をご主人様に伝えたとしてもやはり鼻で笑われてしまうんだろう。
分かっている。僕は未熟で幼くて、視野が狭いんだ。
目の前に見えるものしか信用出来ないし、その範囲内でしか美しいとも可憐とも思えないんだ。
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