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階段を一つ昇る、その先に見える景色
★13
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「入れるよ?」
ピンク色のゴム膜を嵌めたモノを、彼女の黒い茂みの中央へと当てる。
……重要なのはここからだ。
僕は少量の唾を呑み込み、女体への侵入に意識を集中する。
彼女は経験済みなのだから、本来ならコレを奥まで一気に突き刺しても構わないのだろう。けれども彼女の場合、経験済みではあれど2年以上ご無沙汰なのだからここは初めて同士であるかのように慎重に進めていった方がいいと僕はシミュレーションしていた。
「っ……く」
身震いがする。
体重をかけている筈なのに、侵入している気がしない。
「っ、う」
膣口が硬いからなのかそれとも手際の悪い僕の所為なのか、彼女は苦しそうにしていて目から涙が滲んでいた。
「……ぃっ、たぁ」
「っ!!! ごめん!」
苦しい表情の上に小さく「痛い」と泣かれ、僕はハッとして膣口への攻略を取りやめる。
「ごめんね……僕の所為だ」
結合部へと視線をやり、密着していた先端をゆっくりと離していったその時———
「ち……?」
血というには全体にくすんだ色をした生温い液体がゴム膜の先端に付着している事に気付いた。
「え」
僕の仮名一文字に反応したのは彼女も同じだった。
「……」
「っ」
でも僕の反応と別の意味だと感じたのは、身体を起こそうとするも途中でバタッと再び横たわる。という彼女の不思議な行動だ。
それから、片手で顔を覆い隠しもう一方の手を下腹部を守るように置くなり悲しそうな溜め息を長く吐く。
「花ちゃ」
「なんで……いくらなんでも日付変わってすぐじゃなくてもいいのに」
僕が名を呼ぶのを掻き消すように嘆きの声を漏らした彼女の言葉で、付着物の正体をようやく把握した。
「花ちゃん、起き上がれない? お腹、痛い?」
僕はティッシュを2枚素早く取り出し1枚はコンドームの廃棄用に使うと、もう1枚は膣口にそっと当てながら彼女に呼びかける。
「太ちゃん」
「ごめん僕……頭に入ってなかった……そろそろだったもんね」
「……」
「ごめん」
呼びかけても起き上がれないでいる彼女に、僕はまた謝って横抱きするなりトイレに連れて行き、便座に座らせた。
「ん」
下腹部の痛みを堪えるように前屈みになって便座に腰掛ける花ちゃんの為に、僕は全裸である事を申し訳ないと思いつつそのすぐ上に位置する棚の扉を開けて生理用品を収納している紙袋を取り出す。
「どれ使うか分かんなくてごめん……部屋着持ってくるね」
とにかく申し訳ないという気持ちを込めてそう言い僕だけリビングに戻ると、一度脱ぎ捨てた物を急いで身に着け花ちゃんの物をトイレへ持って行く。
「着替えられそう? 下着は新しい方がいい?」
扉を少し開けて衣類を手渡すと花ちゃんは苦しそうな表情をしながらも
「ありがとう。下着は出来ればサニタリーショーツが欲しいんだけど……太ちゃんは収納場所分からないよね?」
「うんごめん……コットンのショーツで良い?」
「うん、こっちこそごめんね」
サニタリーショーツの置き場所が分からないのは僕の方なのに、申し訳なさそうに「ごめん」と花ちゃんから言われるとますますこっちが申し訳ない気持ちになって辛い。
僕はコットンショーツを急いで持ってきてまた手渡し、今度は痛み止めとグラスの用意を始めた。
「薬の残りが少ないな……」
頭痛薬の箱を覗いてみると、取り敢えず今と翌朝の2回分は足りそうだ。
けれどもギリギリの回数しかないと花ちゃんが知ったら不安に感じるだろうし痛みを我慢しながら夜を明かすような状態になるかもしれない。
「本当なら買い足しておきたい……」
が、しかし飲酒したばかりの僕にはそれが出来なかった。
「ビール飲んでなきゃ薬買いに行けるのに」
24時間営業で薬も販売しているディスカウントストアは車で10分くらいの場所にある。飲酒さえしていなければ市販薬の購入なんて簡単に出来たと思うと今の自分の状況が本当に惜しい。
「僕の馬鹿……役立たず」
仕方ないとはいえ0時に浮かれ気分でビールをグビグビ飲んでいた自分の呑気さに少し苛立った。
「太ちゃんありがとう」
トイレの中で着替えを済ませた花ちゃんが、少しよろめきながらこっちに顔を出している。
「花ちゃん顔青いよ。痛み止め用意したからそっち持って行ってあげる」
僕は彼女の顔色を目にするなり更に心配になって、錠剤と水の入ったグラスを手にしながら彼女に駆け寄った。
「本当にありがとう太ちゃん」
「ありがとうなんて言われる程の事してないよ。っていうか、いつもより辛そうだよね? 今日歩き回った所為かな」
花ちゃんは「生理痛は酷い方ではない」と、生理開始日が来るたび僕に話している。でもやはり毎回しんどそうに見えるし今日は特に症状が重いんじゃないかと余計に心配してしまう。
「疲れたのは、あるかもだけど……でも実際楽しかったしまさかこんなに早く『来る』と思ってなかったし……」
花ちゃんは錠剤と水を飲み、とゆっくりとした口調で喋ってくれている。
「今日は無理し過ぎたんだね。花ちゃんの部屋へ連れて行ってあげるね」
僕は空になったグラスや錠剤の包みを彼女から受け取りシンクに置くと、すぐに彼女を抱き上げた。
ピンク色のゴム膜を嵌めたモノを、彼女の黒い茂みの中央へと当てる。
……重要なのはここからだ。
僕は少量の唾を呑み込み、女体への侵入に意識を集中する。
彼女は経験済みなのだから、本来ならコレを奥まで一気に突き刺しても構わないのだろう。けれども彼女の場合、経験済みではあれど2年以上ご無沙汰なのだからここは初めて同士であるかのように慎重に進めていった方がいいと僕はシミュレーションしていた。
「っ……く」
身震いがする。
体重をかけている筈なのに、侵入している気がしない。
「っ、う」
膣口が硬いからなのかそれとも手際の悪い僕の所為なのか、彼女は苦しそうにしていて目から涙が滲んでいた。
「……ぃっ、たぁ」
「っ!!! ごめん!」
苦しい表情の上に小さく「痛い」と泣かれ、僕はハッとして膣口への攻略を取りやめる。
「ごめんね……僕の所為だ」
結合部へと視線をやり、密着していた先端をゆっくりと離していったその時———
「ち……?」
血というには全体にくすんだ色をした生温い液体がゴム膜の先端に付着している事に気付いた。
「え」
僕の仮名一文字に反応したのは彼女も同じだった。
「……」
「っ」
でも僕の反応と別の意味だと感じたのは、身体を起こそうとするも途中でバタッと再び横たわる。という彼女の不思議な行動だ。
それから、片手で顔を覆い隠しもう一方の手を下腹部を守るように置くなり悲しそうな溜め息を長く吐く。
「花ちゃ」
「なんで……いくらなんでも日付変わってすぐじゃなくてもいいのに」
僕が名を呼ぶのを掻き消すように嘆きの声を漏らした彼女の言葉で、付着物の正体をようやく把握した。
「花ちゃん、起き上がれない? お腹、痛い?」
僕はティッシュを2枚素早く取り出し1枚はコンドームの廃棄用に使うと、もう1枚は膣口にそっと当てながら彼女に呼びかける。
「太ちゃん」
「ごめん僕……頭に入ってなかった……そろそろだったもんね」
「……」
「ごめん」
呼びかけても起き上がれないでいる彼女に、僕はまた謝って横抱きするなりトイレに連れて行き、便座に座らせた。
「ん」
下腹部の痛みを堪えるように前屈みになって便座に腰掛ける花ちゃんの為に、僕は全裸である事を申し訳ないと思いつつそのすぐ上に位置する棚の扉を開けて生理用品を収納している紙袋を取り出す。
「どれ使うか分かんなくてごめん……部屋着持ってくるね」
とにかく申し訳ないという気持ちを込めてそう言い僕だけリビングに戻ると、一度脱ぎ捨てた物を急いで身に着け花ちゃんの物をトイレへ持って行く。
「着替えられそう? 下着は新しい方がいい?」
扉を少し開けて衣類を手渡すと花ちゃんは苦しそうな表情をしながらも
「ありがとう。下着は出来ればサニタリーショーツが欲しいんだけど……太ちゃんは収納場所分からないよね?」
「うんごめん……コットンのショーツで良い?」
「うん、こっちこそごめんね」
サニタリーショーツの置き場所が分からないのは僕の方なのに、申し訳なさそうに「ごめん」と花ちゃんから言われるとますますこっちが申し訳ない気持ちになって辛い。
僕はコットンショーツを急いで持ってきてまた手渡し、今度は痛み止めとグラスの用意を始めた。
「薬の残りが少ないな……」
頭痛薬の箱を覗いてみると、取り敢えず今と翌朝の2回分は足りそうだ。
けれどもギリギリの回数しかないと花ちゃんが知ったら不安に感じるだろうし痛みを我慢しながら夜を明かすような状態になるかもしれない。
「本当なら買い足しておきたい……」
が、しかし飲酒したばかりの僕にはそれが出来なかった。
「ビール飲んでなきゃ薬買いに行けるのに」
24時間営業で薬も販売しているディスカウントストアは車で10分くらいの場所にある。飲酒さえしていなければ市販薬の購入なんて簡単に出来たと思うと今の自分の状況が本当に惜しい。
「僕の馬鹿……役立たず」
仕方ないとはいえ0時に浮かれ気分でビールをグビグビ飲んでいた自分の呑気さに少し苛立った。
「太ちゃんありがとう」
トイレの中で着替えを済ませた花ちゃんが、少しよろめきながらこっちに顔を出している。
「花ちゃん顔青いよ。痛み止め用意したからそっち持って行ってあげる」
僕は彼女の顔色を目にするなり更に心配になって、錠剤と水の入ったグラスを手にしながら彼女に駆け寄った。
「本当にありがとう太ちゃん」
「ありがとうなんて言われる程の事してないよ。っていうか、いつもより辛そうだよね? 今日歩き回った所為かな」
花ちゃんは「生理痛は酷い方ではない」と、生理開始日が来るたび僕に話している。でもやはり毎回しんどそうに見えるし今日は特に症状が重いんじゃないかと余計に心配してしまう。
「疲れたのは、あるかもだけど……でも実際楽しかったしまさかこんなに早く『来る』と思ってなかったし……」
花ちゃんは錠剤と水を飲み、とゆっくりとした口調で喋ってくれている。
「今日は無理し過ぎたんだね。花ちゃんの部屋へ連れて行ってあげるね」
僕は空になったグラスや錠剤の包みを彼女から受け取りシンクに置くと、すぐに彼女を抱き上げた。
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