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雨のように降り注ぐ愛を、受け止める

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「お父さんお母さんや凌太さんの居る場所から私を引き上げて、海を越えて……誰からも『無理』だと言われていた労働を可能にしてくれた。バイトの身分だけど私は労働が出来てるんだよ。太ちゃんが見守ってくれているから、私は自分でちょこっとだけでも立つ事が出来てるんだもん」
「……んで……」
「何も出来なかった私をにしてくれたのは! だから今更嫌いになんてなれないし、ならないんだよ!」

 優しくて温かな愛。
 やわらかな笑顔。
 華やかな香り。

「なんで…………」

 僕の首に回された、滑らかな肌。

「えっ?」
「なんで……花ちゃんは、そんなに優しくしてくれるの?」

 僕の視界はまた涙でぼやけた。

 透き通る水に溶け込み歪む世界の中でも僕の名を呼ぶ女神みたいな存在に向かって、譫言うわごとのように唇を動かす。

「……え?」

 唇の動きが読み取れなかったらしい女神が、無垢な声を上げたから

「だからっ」

 僕は本能のまま「花に触れたい」以上の行為を欲し、艶やかな唇に自分のカサついた唇を押し当てた。

「んっ」

 甘く漏らした可憐な声は聴覚を……とろみのある唾液は味覚をそれぞれ喜ばし、快楽に転換される。

「ん……」

 僕の身に受ける様々な感覚は「花」で全て埋め尽くされた。


「やだぁ太ちゃん……ここ、イツキさんのお家なのに」

 気の済むまでキスをし尽くした後、僕から顔を離した花ちゃんは頬を真っ赤にして恥じらっている。

「居ないからバレないよ。帰ってくるのは何時間も後だし、このくらい」
「でも、太ちゃんアソコが……」

 恥ずかしそうにモジモジしながらも僕の生理反応に気付くんだから、花ちゃんは崇高な女神という訳でもなく僕と同じただの人間なのかもしれないと思った。

「さっき言ったでしょ? 『優しくされたらキスしたくなるしエッチな事したくなっちゃう』って」

 言い終える前に僕は、逃げる花ちゃんの下半身にギンギンにいきり立ったモノをグリグリと押し付け

「きゃっ!」

 腕を彼女の首に巻き付けて無理やり唇に吸い付いて舌を強引に挿し入れ……彼女が聞き取れなかったと分かっているのにワザと己の譫言通りの行動でより恥ずかしがらせる。


「んぁ……」

 2度目の、貪るようなキスを終えた花ちゃんの紅い舌からは、透明な細い糸のようなものが伸びて僕の舌先とを繋いでいる。

「ふふっ」

 それがプツンと切れ舌先にヒヤリとした感覚を与えた彼女は、何故か笑っていて

「ふふ」

 僕もつられて笑った。

 そして花ちゃんはやっぱり「花」でも「女神」でもなく、綺麗でもあり穢れてもいる1人の人間なんだと実感し間違いなく彼女も同様の理解を得ているのだとその笑い方で感じていた。

「これ以上したら流石にヤバイかな?」
「ヤバいでしょ。太ちゃんがいつもお世話になってる先輩の家なんだし」
「ゴムも無いしね」
「あと、太ちゃんと約束した日よりも一日早いし」
「何その言い訳……ふふっ」
「笑わないでよ太ちゃん、私だって必死で我慢してるんだから」
「ふふ……うん、知ってる」

 僕達はなんて愚かな人間なのだろうか。
 互いが互いを「好き」というだけで倫理も状況も全部ひっくり返せてしまうんだから、とてもとても愚かな生き物だ。

「じゃあ寝ちゃおうか。太ちゃん眠いでしょ?」
「うん、寝ちゃおう。僕よりも花ちゃんの方が眠たいだろうし」
「うん……ふふっ」
「うん……ふふ♪」

 愚かだと思うのも、目の前の相手がどんなに穢れてようが「好き」と思えるのも、言い訳みたいな戯言を言ってその場を誤魔化して「寝てしまおう」なんて言えてしまうのも……全部全部それは人間の愛ゆえなんだと、僕は彼女を抱き締め瞼も閉じながら思ったのだった。





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