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第三章:そんなの聞いてないっ!
12.橋渡し
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だが、扉を開けると、通りまで行かずともそこにクシャが立っていた。
「あ…」
その場でぐるぐるしていたのだろう。クシャの足下が靴跡だらけになっている。ミネルヴァの姿を見て、安心したような不安なような表情を浮かべた。
「どうぞ、中へ」
ミネルヴァが促せば、ぱっと笑顔を浮かべる。
「はい!」
こうして、クシャはギリットと会う事に成功した。
その後の話し合いは、ミネルヴァが思っていたよりも遥かにスムーズだった。
どうやらクシャはゲームの話を持ち出さなければ、非常識な話はほとんどしないようで、ワンド家に在る悪い噂と真実の姿、今後の在り方などをきちんとギリットに向け説明している。そして、既に王弟とは手紙をやり取りし互いの気持ちは確認し合っている事。ある程度の周りから協力を得ている事。ギリットに何を頼みに来たのか、といった事をするすると話していった。
「決して無理に認めて欲しい訳ではないのです。ただ、ワタシが殿下に見合う女だと少しでも思って下さったなら、そうご生家の方に告げて欲しいのです」
真剣な表情でそう締め括る。
今日の内に話はしておきたくても、返事をもらいたいわけではなかったらしい。クシャは今日はもう帰りますと立ち上がった。
自然な動作でギリットに近付くのを見て、ミネルヴァは反射的に声を上げる。
「駄目!」
叫んだ後で真っ赤になって口を覆うが、ギリットは笑いを隠すように顔を逸らしており、クシャはポカンと口を開けて見つめていた。
「悪いがフォーリエントでリテルタ式の挨拶はしないことにしてる」
「あ、そうで…そういう」
ギリットの言葉にクシャは首を傾げ、ミネルヴァを見て頷く。
その姿を見てミネルヴァはますます気まずくなって顔を逸らしてしまった。
その様子を見たクシャはミネルヴァに駆け寄るとがばっと抱きつく。
「ミネルヴァ様カワイイ!」
「クシャ様? あの、ちょっと」
頬と頬を合わせるリテルタ式の挨拶を自分にされ、ミネルヴァが慌てているとぱっと離れたクシャが泣き笑いの顔をしていた。
「ありがとうございました!」
「いえ、お力に成れたなら、良かったわ」
何度も頭を下げながらクシャは帰っていく。
「悪い方ではなかったでしょう?」
「そうだな」
後日、ギリットが生家に手紙を出したと聞いた。内容は、王弟の人生に口出しし歪めた結果を重く受け止めているなら彼の行動に口を挟むな、というものだ。特別クシャを推してはいないが、もし王弟とクシャの仲が本物なら、反対だと言い出しはしないだろうと笑っていた。
そこから更に数日して、リテルタの使節団が帰国する。
社交シーズンの終了も近付き、ミネルヴァも領地へ向かう準備をしていた頃。
クシャから分厚い手紙が届いた。
折悪しくフランセスカが訪問中で、
「呪いの手紙かもしれないわ!」
と、睨んできており、中身を隠すのは難しそうだった。
「殿下との婚約の件はご存知無かったからだって、お話したでしょう? ちゃんと謝ってくださったのよ」
「口では何とでも言えますわ」
他人宛の手紙を横から覗き見るような真似はしないものの、内容を告げるまで帰ってくれそうにないので、ミネルヴァはその手紙を開封する。
(クシャ様…)
日本語で書かれていた。
誰かに見られるとまずいので、日本語で手紙を書きます。読み終わったら燃やしてください。
そう書き出された手紙は、まとめると三つの内容が書かれていた。
無事王弟と結婚できることになりましたという報告。ただし、内定状態で本当は国外に知らせる事はまだできないので、こうして日本語で手紙を書きましたとのことだ。
もし今後リテルタに来る事があったら、観光案内でも何でもお力になりますという提案。
彼女が知る限りのゲームのストーリーとフラグやエンドについての情報。これが、最も分量が多かった。
(………とりあえず、覚えるまでは燃やせないわね。あと、問題は、話せる内容がリテルタにお越しの際はって部分だけなんだけど、セスに何て言えば納得してくれるかしら)
単純に話せる部分だけを話すとどう考えても分量がおかしい。かと言って国家レベルの秘事を漏らすわけにもいかないだろう。というか、クシャも言っちゃ駄目だろうと思った。が、もうどうにもならない。
「えっとね、セス」
「なんですの」
「改めて自分のしてしまった事への謝罪と、もし、リテルタに来る事があったら、何かと力になってくださるって書いてあるわ」
「随分くどい手紙を書く方ですのね、それ全部その内容ですの?」
「後半はまだ読んでないわ。でも、多分リテルタの観光案内みたい」
正確にはリテルタ王国の観光案内というか、勢力図案内に近いものだが。
「ふぅん、そう…」
あまり納得しているとは言い難かったが、フランセスカは一応頷いて、その手紙に関して問いかけるのを止めてくれた。
そこからは何となくクシャをフォローするような話を続ける事になり、陽が沈み始める前にフランセスカは帰っていく。
その夜は、寝室で絞った灯りの中クシャの手紙を確認していった。
「あ…」
その場でぐるぐるしていたのだろう。クシャの足下が靴跡だらけになっている。ミネルヴァの姿を見て、安心したような不安なような表情を浮かべた。
「どうぞ、中へ」
ミネルヴァが促せば、ぱっと笑顔を浮かべる。
「はい!」
こうして、クシャはギリットと会う事に成功した。
その後の話し合いは、ミネルヴァが思っていたよりも遥かにスムーズだった。
どうやらクシャはゲームの話を持ち出さなければ、非常識な話はほとんどしないようで、ワンド家に在る悪い噂と真実の姿、今後の在り方などをきちんとギリットに向け説明している。そして、既に王弟とは手紙をやり取りし互いの気持ちは確認し合っている事。ある程度の周りから協力を得ている事。ギリットに何を頼みに来たのか、といった事をするすると話していった。
「決して無理に認めて欲しい訳ではないのです。ただ、ワタシが殿下に見合う女だと少しでも思って下さったなら、そうご生家の方に告げて欲しいのです」
真剣な表情でそう締め括る。
今日の内に話はしておきたくても、返事をもらいたいわけではなかったらしい。クシャは今日はもう帰りますと立ち上がった。
自然な動作でギリットに近付くのを見て、ミネルヴァは反射的に声を上げる。
「駄目!」
叫んだ後で真っ赤になって口を覆うが、ギリットは笑いを隠すように顔を逸らしており、クシャはポカンと口を開けて見つめていた。
「悪いがフォーリエントでリテルタ式の挨拶はしないことにしてる」
「あ、そうで…そういう」
ギリットの言葉にクシャは首を傾げ、ミネルヴァを見て頷く。
その姿を見てミネルヴァはますます気まずくなって顔を逸らしてしまった。
その様子を見たクシャはミネルヴァに駆け寄るとがばっと抱きつく。
「ミネルヴァ様カワイイ!」
「クシャ様? あの、ちょっと」
頬と頬を合わせるリテルタ式の挨拶を自分にされ、ミネルヴァが慌てているとぱっと離れたクシャが泣き笑いの顔をしていた。
「ありがとうございました!」
「いえ、お力に成れたなら、良かったわ」
何度も頭を下げながらクシャは帰っていく。
「悪い方ではなかったでしょう?」
「そうだな」
後日、ギリットが生家に手紙を出したと聞いた。内容は、王弟の人生に口出しし歪めた結果を重く受け止めているなら彼の行動に口を挟むな、というものだ。特別クシャを推してはいないが、もし王弟とクシャの仲が本物なら、反対だと言い出しはしないだろうと笑っていた。
そこから更に数日して、リテルタの使節団が帰国する。
社交シーズンの終了も近付き、ミネルヴァも領地へ向かう準備をしていた頃。
クシャから分厚い手紙が届いた。
折悪しくフランセスカが訪問中で、
「呪いの手紙かもしれないわ!」
と、睨んできており、中身を隠すのは難しそうだった。
「殿下との婚約の件はご存知無かったからだって、お話したでしょう? ちゃんと謝ってくださったのよ」
「口では何とでも言えますわ」
他人宛の手紙を横から覗き見るような真似はしないものの、内容を告げるまで帰ってくれそうにないので、ミネルヴァはその手紙を開封する。
(クシャ様…)
日本語で書かれていた。
誰かに見られるとまずいので、日本語で手紙を書きます。読み終わったら燃やしてください。
そう書き出された手紙は、まとめると三つの内容が書かれていた。
無事王弟と結婚できることになりましたという報告。ただし、内定状態で本当は国外に知らせる事はまだできないので、こうして日本語で手紙を書きましたとのことだ。
もし今後リテルタに来る事があったら、観光案内でも何でもお力になりますという提案。
彼女が知る限りのゲームのストーリーとフラグやエンドについての情報。これが、最も分量が多かった。
(………とりあえず、覚えるまでは燃やせないわね。あと、問題は、話せる内容がリテルタにお越しの際はって部分だけなんだけど、セスに何て言えば納得してくれるかしら)
単純に話せる部分だけを話すとどう考えても分量がおかしい。かと言って国家レベルの秘事を漏らすわけにもいかないだろう。というか、クシャも言っちゃ駄目だろうと思った。が、もうどうにもならない。
「えっとね、セス」
「なんですの」
「改めて自分のしてしまった事への謝罪と、もし、リテルタに来る事があったら、何かと力になってくださるって書いてあるわ」
「随分くどい手紙を書く方ですのね、それ全部その内容ですの?」
「後半はまだ読んでないわ。でも、多分リテルタの観光案内みたい」
正確にはリテルタ王国の観光案内というか、勢力図案内に近いものだが。
「ふぅん、そう…」
あまり納得しているとは言い難かったが、フランセスカは一応頷いて、その手紙に関して問いかけるのを止めてくれた。
そこからは何となくクシャをフォローするような話を続ける事になり、陽が沈み始める前にフランセスカは帰っていく。
その夜は、寝室で絞った灯りの中クシャの手紙を確認していった。
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