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第三章:そんなの聞いてないっ!
13.百合の乙女
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ミネルヴァが思い出せなかったタイトルは『百合の乙女~麗しき新緑の学院~』だった。
(いや、何か、~の後ろは違う気がするけど。そうね、確か、百合の乙女だった気がする。だから主人公がリリィだったんだわ。この世界内だとリリィに百合って意味は無いけど…)
ちなみに、セカンドは『百合の乙女~鮮やかな若葉の王宮~』。サードは『百合の乙女~萌える深緑の帝国~』であるらしい。
(とりあえずサードはフォーリエントと何の関係もなくて良かった)
ゲームでは、それぞれ前作の国が関わってくるらしく。サードではクシャがヒロインの手助けをする事になるらしいが、フォーリエントの国も、人物も、一切出てこない。
ミネルヴァは何よりその事に胸を撫でおろした。
それとクシャは、丁寧にも既に状況が終了しているファーストについても情報をくれている。今ミネルヴァが見ている紙には、攻略対象がヒロイン以外とくっつく、いわゆるバッドエンドが書かれていた。
(アンゼーナ様とニム。そして、セスとマリウス様)
特に気になる部分を見つめる。もはや自分の項目はありえないが、アンゼーナとセフィルニムやフランセスカとマリウスの項目を見ると胸が高鳴った。
(ニムは私がどうこうしなくてもアンゼーナ様が押し切りそうだけど、セスは、何か、こう。協力できることってないかしら)
自分がそれなりに順調だと思うと、急に周囲の人間関係が気になるものだ。そんな時に従兄妹達の名前を見つけて、ミネルヴァは勝手にそわそわと悩みだした。
(でもまずはセスの気持ちを聞かないとよね)
自分自身も完全にゲームシナリオとは違う道を辿っているのだ、フランセスカがもし全くマリウスの事をなんとも思っていなかったら、とんだ道化である。
協力はしたい、だが下手に手を出しておかしくしたくもない。
ミネルヴァは腕を組んで考えこむが、自身の経験値も乏しい上に、フランセスカという少々風変わりな従姉にどんな風に切り出せばその気持ちを聞き出せるのか全く検討がつかなかった。
(私じゃどうにもならない気がするし、こういう時は外部の協力を仰ぐべきかしら…)
身内を除いても、今のミネルヴァならば頼れる伝はいくらかある。例えばジィゼなど、そっと話を聞いてもらうには適任ではないだろうか。明日にも手紙を書こう、とフランセスカが知ったら、大きなお世話ですわ、と言いそうな決意を固め、ミネルヴァは眠りに就いた。
そうした訳で、ギリットをめぐってヒロインとバトルを繰り広げる予定だったミネルヴァは、今やすっかりクシャと仲良くなり、文通する日々を送っている。まぁ、文通というか、ものすごい勢いでクシャから手紙が届いている、が正しいのだが。
自分一人が盛り上がり、クシャを打倒しなくてはと考えてしまった事もあり、罪滅ぼしの気持ちからアンゼーナやフランセスカに対しても、クシャの印象回復を試みた。結果としては、なんとか成功した。アンゼーナについてはミネルヴァのフォローというより、リテルタ国側から正式にクシャと王弟の結婚について伝わったからだろうが。
更には、来年にはなるが、ギリットとの結婚の日取りも決まった。今は、二人離れ離れでグリッツ領と王都に居るが、手紙での予定組みは順調に進んでいる。
「順調過ぎて怖い…」
別に聴かせるつもりはないのだろうミネルヴァの小さな呟きに、リーネアッラはそっと唇を噛み締めてお茶を用意した。
(お嬢様…)
リーネアッラの感覚から言わせてもらえれば、概ね主人の日常は順調ではない。少なくとも、恐怖を覚えるほどの順調さではない。なまじ能力が高いためか、努力が通常仕様なせいか、障害を障害と認識できずにいるミネルヴァが、怖いほど順調だと言う毎日は、リーネアッラなら二週間くらいで逃げ出すだろう。
今だって、目の前にはミネルヴァを喜ばせるギリットの手紙以外に、それぞれが分厚い帳簿が八冊ほど置かれているのだ。
ライネッツ領に立ち寄って、帳簿の検め方を習ったミネルヴァは今、過去十年分のグリッツ領全域の帳簿を確認していた。その上にスティアンから任された嘆願書の仕分けと徴税方法の見直し案の検討なども行っている。しかも、そんなものを抱えながら、貴族でありながら職人であるギリットとの結婚のため通常よりも面倒な婚姻関係の書類作成も滞りなく行い、複数の人員と連絡を取って会の調整をしたりと、朝起きてから夜寝るまで常に何かしていた。
スティアン曰く事務方の手助けができる側付きを探しているとのことだが、候補すら集まりきっていないのが現状だと聞いている。
何もする気が起きないというような無気力なミネルヴァを見続けた日々を思えば、はつらつと動き続ける主人を見ているのは嬉しいが、頑張り過ぎないかだけがひたすら心配で、リーネアッラはついつい出過ぎていると思いつつスティアンをせっついてしまっている。
(本当は私にそれだけの能力があれば良かったのだろうけど…いいえ、でも同じ轍は踏まないわ。ご安心なさってくださいね、お嬢様。私もできる限り精一杯お支えしますから)
夜会を詰め込み過ぎたようなヘマはもうしない、とリーネアッラは決意を込めてミネルヴァを見つめた。
(いや、何か、~の後ろは違う気がするけど。そうね、確か、百合の乙女だった気がする。だから主人公がリリィだったんだわ。この世界内だとリリィに百合って意味は無いけど…)
ちなみに、セカンドは『百合の乙女~鮮やかな若葉の王宮~』。サードは『百合の乙女~萌える深緑の帝国~』であるらしい。
(とりあえずサードはフォーリエントと何の関係もなくて良かった)
ゲームでは、それぞれ前作の国が関わってくるらしく。サードではクシャがヒロインの手助けをする事になるらしいが、フォーリエントの国も、人物も、一切出てこない。
ミネルヴァは何よりその事に胸を撫でおろした。
それとクシャは、丁寧にも既に状況が終了しているファーストについても情報をくれている。今ミネルヴァが見ている紙には、攻略対象がヒロイン以外とくっつく、いわゆるバッドエンドが書かれていた。
(アンゼーナ様とニム。そして、セスとマリウス様)
特に気になる部分を見つめる。もはや自分の項目はありえないが、アンゼーナとセフィルニムやフランセスカとマリウスの項目を見ると胸が高鳴った。
(ニムは私がどうこうしなくてもアンゼーナ様が押し切りそうだけど、セスは、何か、こう。協力できることってないかしら)
自分がそれなりに順調だと思うと、急に周囲の人間関係が気になるものだ。そんな時に従兄妹達の名前を見つけて、ミネルヴァは勝手にそわそわと悩みだした。
(でもまずはセスの気持ちを聞かないとよね)
自分自身も完全にゲームシナリオとは違う道を辿っているのだ、フランセスカがもし全くマリウスの事をなんとも思っていなかったら、とんだ道化である。
協力はしたい、だが下手に手を出しておかしくしたくもない。
ミネルヴァは腕を組んで考えこむが、自身の経験値も乏しい上に、フランセスカという少々風変わりな従姉にどんな風に切り出せばその気持ちを聞き出せるのか全く検討がつかなかった。
(私じゃどうにもならない気がするし、こういう時は外部の協力を仰ぐべきかしら…)
身内を除いても、今のミネルヴァならば頼れる伝はいくらかある。例えばジィゼなど、そっと話を聞いてもらうには適任ではないだろうか。明日にも手紙を書こう、とフランセスカが知ったら、大きなお世話ですわ、と言いそうな決意を固め、ミネルヴァは眠りに就いた。
そうした訳で、ギリットをめぐってヒロインとバトルを繰り広げる予定だったミネルヴァは、今やすっかりクシャと仲良くなり、文通する日々を送っている。まぁ、文通というか、ものすごい勢いでクシャから手紙が届いている、が正しいのだが。
自分一人が盛り上がり、クシャを打倒しなくてはと考えてしまった事もあり、罪滅ぼしの気持ちからアンゼーナやフランセスカに対しても、クシャの印象回復を試みた。結果としては、なんとか成功した。アンゼーナについてはミネルヴァのフォローというより、リテルタ国側から正式にクシャと王弟の結婚について伝わったからだろうが。
更には、来年にはなるが、ギリットとの結婚の日取りも決まった。今は、二人離れ離れでグリッツ領と王都に居るが、手紙での予定組みは順調に進んでいる。
「順調過ぎて怖い…」
別に聴かせるつもりはないのだろうミネルヴァの小さな呟きに、リーネアッラはそっと唇を噛み締めてお茶を用意した。
(お嬢様…)
リーネアッラの感覚から言わせてもらえれば、概ね主人の日常は順調ではない。少なくとも、恐怖を覚えるほどの順調さではない。なまじ能力が高いためか、努力が通常仕様なせいか、障害を障害と認識できずにいるミネルヴァが、怖いほど順調だと言う毎日は、リーネアッラなら二週間くらいで逃げ出すだろう。
今だって、目の前にはミネルヴァを喜ばせるギリットの手紙以外に、それぞれが分厚い帳簿が八冊ほど置かれているのだ。
ライネッツ領に立ち寄って、帳簿の検め方を習ったミネルヴァは今、過去十年分のグリッツ領全域の帳簿を確認していた。その上にスティアンから任された嘆願書の仕分けと徴税方法の見直し案の検討なども行っている。しかも、そんなものを抱えながら、貴族でありながら職人であるギリットとの結婚のため通常よりも面倒な婚姻関係の書類作成も滞りなく行い、複数の人員と連絡を取って会の調整をしたりと、朝起きてから夜寝るまで常に何かしていた。
スティアン曰く事務方の手助けができる側付きを探しているとのことだが、候補すら集まりきっていないのが現状だと聞いている。
何もする気が起きないというような無気力なミネルヴァを見続けた日々を思えば、はつらつと動き続ける主人を見ているのは嬉しいが、頑張り過ぎないかだけがひたすら心配で、リーネアッラはついつい出過ぎていると思いつつスティアンをせっついてしまっている。
(本当は私にそれだけの能力があれば良かったのだろうけど…いいえ、でも同じ轍は踏まないわ。ご安心なさってくださいね、お嬢様。私もできる限り精一杯お支えしますから)
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