悪役令嬢だけど愛されたい

nionea

文字の大きさ
45 / 49
第三章:そんなの聞いてないっ!

13.百合の乙女

しおりを挟む
 ミネルヴァが思い出せなかったタイトルは『百合の乙女~麗しき新緑の学院~』だった。
(いや、何か、~の後ろは違う気がするけど。そうね、確か、百合の乙女だった気がする。だから主人公がリリィだったんだわ。この世界内だとリリィに百合って意味は無いけど…)
 ちなみに、セカンドは『百合の乙女~鮮やかな若葉の王宮~』。サードは『百合の乙女~萌える深緑の帝国~』であるらしい。
(とりあえずサードはフォーリエントと何の関係もなくて良かった)
 ゲームでは、それぞれ前作の国が関わってくるらしく。サードではクシャがヒロインの手助けをする事になるらしいが、フォーリエントの国も、人物も、一切出てこない。
 ミネルヴァは何よりその事に胸を撫でおろした。
 それとクシャは、丁寧にも既に状況が終了しているファーストについても情報をくれている。今ミネルヴァが見ている紙には、攻略対象がヒロイン以外とくっつく、いわゆるバッドエンドが書かれていた。
(アンゼーナ様とニム。そして、セスとマリウス様)
 特に気になる部分を見つめる。もはや自分の項目はありえないが、アンゼーナとセフィルニムやフランセスカとマリウスの項目を見ると胸が高鳴った。
(ニムは私がどうこうしなくてもアンゼーナ様が押し切りそうだけど、セスは、何か、こう。協力できることってないかしら)
 自分がそれなりに順調だと思うと、急に周囲の人間関係が気になるものだ。そんな時に従兄妹達の名前を見つけて、ミネルヴァは勝手にそわそわと悩みだした。
(でもまずはセスの気持ちを聞かないとよね)
 自分自身も完全にゲームシナリオとは違う道を辿っているのだ、フランセスカがもし全くマリウスの事をなんとも思っていなかったら、とんだ道化である。
 協力はしたい、だが下手に手を出しておかしくしたくもない。
 ミネルヴァは腕を組んで考えこむが、自身の経験値も乏しい上に、フランセスカという少々風変わりな従姉にどんな風に切り出せばその気持ちを聞き出せるのか全く検討がつかなかった。
(私じゃどうにもならない気がするし、こういう時は外部の協力を仰ぐべきかしら…)
 身内を除いても、今のミネルヴァならば頼れる伝はいくらかある。例えばジィゼなど、そっと話を聞いてもらうには適任ではないだろうか。明日にも手紙を書こう、とフランセスカが知ったら、大きなお世話ですわ、と言いそうな決意を固め、ミネルヴァは眠りに就いた。 
 そうした訳で、ギリットをめぐってヒロインとバトルを繰り広げる予定だったミネルヴァは、今やすっかりクシャと仲良くなり、文通する日々を送っている。まぁ、文通というか、ものすごい勢いでクシャから手紙が届いている、が正しいのだが。
 自分一人が盛り上がり、クシャを打倒しなくてはと考えてしまった事もあり、罪滅ぼしの気持ちからアンゼーナやフランセスカに対しても、クシャの印象回復を試みた。結果としては、なんとか成功した。アンゼーナについてはミネルヴァのフォローというより、リテルタ国側から正式にクシャと王弟の結婚について伝わったからだろうが。
 更には、来年にはなるが、ギリットとの結婚の日取りも決まった。今は、二人離れ離れでグリッツ領と王都に居るが、手紙での予定組みは順調に進んでいる。
「順調過ぎて怖い…」
 別に聴かせるつもりはないのだろうミネルヴァの小さな呟きに、リーネアッラはそっと唇を噛み締めてお茶を用意した。
(お嬢様…)
 リーネアッラの感覚から言わせてもらえれば、概ね主人の日常は順調ではない。少なくとも、恐怖を覚えるほどの順調さではない。なまじ能力が高いためか、努力が通常仕様なせいか、障害を障害と認識できずにいるミネルヴァが、怖いほど順調だと言う毎日は、リーネアッラなら二週間くらいで逃げ出すだろう。
 今だって、目の前にはミネルヴァを喜ばせるギリットの手紙以外に、それぞれが分厚い帳簿が八冊ほど置かれているのだ。
 ライネッツ領に立ち寄って、帳簿の検め方を習ったミネルヴァは今、過去十年分のグリッツ領全域の帳簿を確認していた。その上にスティアンから任された嘆願書の仕分けと徴税方法の見直し案の検討なども行っている。しかも、そんなものを抱えながら、貴族でありながら職人であるギリットとの結婚のため通常よりも面倒な婚姻関係の書類作成も滞りなく行い、複数の人員と連絡を取って会の調整をしたりと、朝起きてから夜寝るまで常に何かしていた。
 スティアン曰く事務方の手助けができる側付きを探しているとのことだが、候補すら集まりきっていないのが現状だと聞いている。
 何もする気が起きないというような無気力なミネルヴァを見続けた日々を思えば、はつらつと動き続ける主人を見ているのは嬉しいが、頑張り過ぎないかだけがひたすら心配で、リーネアッラはついつい出過ぎていると思いつつスティアンをせっついてしまっている。
(本当は私にそれだけの能力があれば良かったのだろうけど…いいえ、でも同じ轍は踏まないわ。ご安心なさってくださいね、お嬢様。私もできる限り精一杯お支えしますから)
 夜会を詰め込み過ぎたようなヘマはもうしない、とリーネアッラは決意を込めてミネルヴァを見つめた。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

転生した子供部屋悪役令嬢は、悠々快適溺愛ライフを満喫したい!

木風
恋愛
婚約者に裏切られ、成金伯爵令嬢の仕掛けに嵌められた私は、あっけなく「悪役令嬢」として婚約を破棄された。 胸に広がるのは、悔しさと戸惑いと、まるで物語の中に迷い込んだような不思議な感覚。 けれど、この身に宿るのは、かつて過労に倒れた29歳の女医の記憶。 勉強も社交も面倒で、ただ静かに部屋に籠もっていたかったのに…… 『神に愛された強運チート』という名の不思議な加護が、私を思いもよらぬ未来へと連れ出していく。 子供部屋の安らぎを夢見たはずが、待っていたのは次期国王……王太子殿下のまなざし。 逃れられない運命と、抗いようのない溺愛に、私の物語は静かに色を変えていく。 時に笑い、時に泣き、時に振り回されながらも、私は今日を生きている。 これは、婚約破棄から始まる、転生令嬢のちぐはぐで胸の騒がしい物語。 ※本作は「小説家になろう」「アルファポリス」にて同時掲載しております。 表紙イラストは、Wednesday (Xアカウント:@wednesday1029)さんに描いていただきました。 ※イラストは描き下ろし作品です。無断転載・無断使用・AI学習等は一切禁止しております。 ©︎子供部屋悪役令嬢 / 木風 Wednesday

悪役令嬢に転生したら手遅れだったけど悪くない

おこめ
恋愛
アイリーン・バルケスは断罪の場で記憶を取り戻した。 どうせならもっと早く思い出せたら良かったのに! あれ、でも意外と悪くないかも! 断罪され婚約破棄された令嬢のその後の日常。 ※うりぼう名義の「悪役令嬢婚約破棄諸々」に掲載していたものと同じものです。

婚約者を奪い返そうとしたらいきなり溺愛されました

宵闇 月
恋愛
異世界に転生したらスマホゲームの悪役令嬢でした。 しかも前世の推し且つ今世の婚約者は既にヒロインに攻略された後でした。 断罪まであと一年と少し。 だったら断罪回避より今から全力で奪い返してみせますわ。 と意気込んだはいいけど あれ? 婚約者様の様子がおかしいのだけど… ※ 4/26 内容とタイトルが合ってないない気がするのでタイトル変更しました。

ヒロインしか愛さないはずの公爵様が、なぜか悪女の私を手放さない

魚谷
恋愛
伯爵令嬢イザベラは多くの男性と浮名を流す悪女。 そんな彼女に公爵家当主のジークベルトとの縁談が持ち上がった。 ジークベルトと対面した瞬間、前世の記憶がよみがえり、この世界が乙女ゲームであることを自覚する。 イザベラは、主要攻略キャラのジークベルトの裏の顔を知ってしまったがために、冒頭で殺されてしまうモブキャラ。 ゲーム知識を頼りに、どうにか冒頭死を回避したイザベラは最弱魔法と言われる付与魔法と前世の知識を頼りに便利グッズを発明し、離婚にそなえて資金を確保する。 いよいよジークベルトが、乙女ゲームのヒロインと出会う。 離婚を切り出されることを待っていたイザベラだったが、ジークベルトは平然としていて。 「どうして俺がお前以外の女を愛さなければならないんだ?」 予想外の溺愛が始まってしまう! (世界の平和のためにも)ヒロインに惚れてください、公爵様!!

〘完〙前世を思い出したら悪役皇太子妃に転生してました!皇太子妃なんて罰ゲームでしかないので円満離婚をご所望です

hanakuro
恋愛
物語の始まりは、ガイアール帝国の皇太子と隣国カラマノ王国の王女との結婚式が行われためでたい日。 夫婦となった皇太子マリオンと皇太子妃エルメが初夜を迎えた時、エルメは前世を思い出す。 自著小説『悪役皇太子妃はただ皇太子の愛が欲しかっただけ・・』の悪役皇太子妃エルメに転生していることに気付く。何とか初夜から逃げ出し、混乱する頭を整理するエルメ。 すると皇太子の愛をいずれ現れる癒やしの乙女に奪われた自分が乙女に嫌がらせをして、それを知った皇太子に離婚され、追放されるというバッドエンドが待ち受けていることに気付く。 訪れる自分の未来を悟ったエルメの中にある想いが芽生える。 円満離婚して、示談金いっぱい貰って、市井でのんびり悠々自適に暮らそうと・・ しかし、エルメの思惑とは違い皇太子からは溺愛され、やがて現れた癒やしの乙女からは・・・ はたしてエルメは円満離婚して、のんびりハッピースローライフを送ることができるのか!?

ざまぁされるのが確実なヒロインに転生したので、地味に目立たず過ごそうと思います

真理亜
恋愛
私、リリアナが転生した世界は、悪役令嬢に甘くヒロインに厳しい世界だ。その世界にヒロインとして転生したからには、全てのプラグをへし折り、地味に目立たず過ごして、ざまぁを回避する。それしかない。生き延びるために! それなのに...なぜか悪役令嬢にも攻略対象にも絡まれて...

乙女ゲームのヒロインに転生したのに、ストーリーが始まる前になぜかウチの従者が全部終わらせてたんですが

侑子
恋愛
 十歳の時、自分が乙女ゲームのヒロインに転生していたと気づいたアリス。幼なじみで従者のジェイドと準備をしながら、ハッピーエンドを目指してゲームスタートの魔法学園入学までの日々を過ごす。  しかし、いざ入学してみれば、攻略対象たちはなぜか皆他の令嬢たちとラブラブで、アリスの入る隙間はこれっぽっちもない。 「どうして!? 一体どうしてなの~!?」  いつの間にか従者に外堀を埋められ、乙女ゲームが始まらないようにされていたヒロインのお話。

【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます

宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。 さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。 中世ヨーロッパ風異世界転生。

処理中です...