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悪役令嬢、バカ止めるってよ
11.バカは認める
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(嘘…嘘でしょ。だって、私は無実だってちゃんと…調べてくれたってっ?!)
五人の指が、真っ直ぐに傍聴席を指差した。それは、ファランが居る反対、右側を向いている。
(え…?)
そこには、以前のファランに似た体型の令嬢二人が居た。どちらを指しているか、というと、曖昧だ。
(は?)
見ている前で彼らはどちらだ、と再度確認され、目配せをして右側に立っていた淡い黄色のドレスを着た令嬢を指差し直している。
そして、お前達の偽証が確定した。刑は覆らない、と裁判長らしい人物が言って、この裁判は幕を閉じた。
(………どういう事?)
ウォルターは、申し訳なさそうな顔で、困惑するファランの前に現れた。
「申し訳ございませんでした。彼らは文章などが偽造されたものである事を突きつけても偽証を翻さなかったため、本当にグローリア侯と面識があるのかを確認する必要がある、と上席が判断いたしまして」
要約すると、彼らには、傍聴席にファランがいる事だけが伝わっていたらしい。そして、ファランが太った令嬢だと聞いていた彼らは、司法局が用意した色白の太った女性を指さしたのだ。本当のファランと、顔を合わせて指示を受けたと証言していたにも関わらず。
「…然様で」
ファランはどこか呆然とウォルターに返した。
以前のファランだったなら、彼にそこらのものを投げ付けて、怒鳴り散らした事だろう。だが、今の彼女にはそんな考え方も気力もない。
(なら、はじめから説明しといてよ。いや…疑いが晴れてなかったんだ。もし私がデブのままだったら………)
そう思い至って、心胆が縮み上がっているところなのだ。
「グローリア侯におかれましては、既に無罪証明が発行されているにも関わらずこのような事態に巻き込んでしまい、誠に申し訳ございませんでした」
そんなファランをどう受け取ったのか、再びウォルターが謝罪を口にした。
(…この人は、私が無実だって理解して、署名をするのを見てた。だから、こうやって、謝ってくれてる。ちゃんとした人だ。さっきの事は、すごく怖かったし、驚いたし、もう泣きそうっていうか吐きそうだったけど。別にこの人が悪いんじゃない)
組織の判断でかかる迷惑について、担当者が心から謝罪しても、受け入れられない事はある。そういう時は、ちゃんとした人ほど心を傷めているものだ。自分ではどうにもならない事だったと開き直って謝罪する人も、それこそただ口だけで謝罪する人も、沢山居る。その方が心は傷つかない。
(散々嫌な人見てきたからなぁ…嫌な方にばっか目が肥えちゃって、なんだかなぁ…)
ウォルターは誠実に謝罪をしている。
(こんな事、もう二度と有って欲しくない。でも、それは、こうやって謝罪をしてくれる人に言っても意味は無い)
先ほど自分が晒された恐怖は、今も指先の熱を奪ったままで、腹の中をぞわぞわさせている。だが、悔しそうに、巻き込んだと表現し、申し訳無いと頭を下げたウォルターを責め立てる気にはなれない。その立場の方に、嫌というほど共感してしまう。
「どうか、気になさらないでください。職務上致し方ない事は多くあるでしょうから。私は気にしておりません」
はじかれたように顔を上げたウォルターに微笑んで見せてから、司法局を後にする。
自分がまだ疑われていた。
頭の中をぐるぐると掻き回されているような混乱が支配している。
ファランがやった今までのあれこれを忘れたつもりはなかった。だが、積み上げた憎しみが招き入れた冤罪は、晴れたと思っていたのだ。
(ああ、違う………憎いから、冤罪でも何でも作って、投獄しようって、そういう事だ)
ファランが主にやって来た事は、身分を使った横暴な振る舞いと暴言、器物損壊だ。周りを蔑み罵るだけではない。自分を笑った、という言いがかりで、学園の職員を辞めさせた事もある。気に入らない、という動機で、生徒を追い詰め追い出した事もある。金で揉み消してきた器物損壊も指の数では足りない。その中には、単純に新品になって喜んだ者もいれば、思い出や思い入れを壊され、それを金でなかった事にされ、それでも泣き寝入りするしかなく憎んだ者も大勢居たはずだ。
(………私、今度こそ本当に、もう、大丈夫だよね…?)
自分がやった訳じゃない。
そう言って全てがなかった事になるのなら、大声で自分は別人だと叫びたい。
だが、それを誰が信じるだろう。何もかも全てファランのやった事だ。
(私…どうしたら…)
例えば、心を入れ替えました、と謝罪行脚でもすれば、許されるだろうか。
(違う。許されたくてする行動は、全部。自己満足だ)
ならば、どうすれば良いのだろう。
(私。軽く考え過ぎてた………カトレア達が許してくれたから、勝手に、全部許された気になって、大丈夫だと思い込んでた)
それから、一週間ほどを物思いに耽り憂鬱に過ごす事になった。
が、カトレアを始めアルフレッドからも刑が確定したのですから大丈夫ですよ、と励まされ、いつまでも心配をかけていても仕方ないと思い、何とか復活した。
日々は、真人間化計画のため、ダイエットではなくなったが健康維持のため運動習慣と勉強も継続させ、無事に過ぎていった。
五人の指が、真っ直ぐに傍聴席を指差した。それは、ファランが居る反対、右側を向いている。
(え…?)
そこには、以前のファランに似た体型の令嬢二人が居た。どちらを指しているか、というと、曖昧だ。
(は?)
見ている前で彼らはどちらだ、と再度確認され、目配せをして右側に立っていた淡い黄色のドレスを着た令嬢を指差し直している。
そして、お前達の偽証が確定した。刑は覆らない、と裁判長らしい人物が言って、この裁判は幕を閉じた。
(………どういう事?)
ウォルターは、申し訳なさそうな顔で、困惑するファランの前に現れた。
「申し訳ございませんでした。彼らは文章などが偽造されたものである事を突きつけても偽証を翻さなかったため、本当にグローリア侯と面識があるのかを確認する必要がある、と上席が判断いたしまして」
要約すると、彼らには、傍聴席にファランがいる事だけが伝わっていたらしい。そして、ファランが太った令嬢だと聞いていた彼らは、司法局が用意した色白の太った女性を指さしたのだ。本当のファランと、顔を合わせて指示を受けたと証言していたにも関わらず。
「…然様で」
ファランはどこか呆然とウォルターに返した。
以前のファランだったなら、彼にそこらのものを投げ付けて、怒鳴り散らした事だろう。だが、今の彼女にはそんな考え方も気力もない。
(なら、はじめから説明しといてよ。いや…疑いが晴れてなかったんだ。もし私がデブのままだったら………)
そう思い至って、心胆が縮み上がっているところなのだ。
「グローリア侯におかれましては、既に無罪証明が発行されているにも関わらずこのような事態に巻き込んでしまい、誠に申し訳ございませんでした」
そんなファランをどう受け取ったのか、再びウォルターが謝罪を口にした。
(…この人は、私が無実だって理解して、署名をするのを見てた。だから、こうやって、謝ってくれてる。ちゃんとした人だ。さっきの事は、すごく怖かったし、驚いたし、もう泣きそうっていうか吐きそうだったけど。別にこの人が悪いんじゃない)
組織の判断でかかる迷惑について、担当者が心から謝罪しても、受け入れられない事はある。そういう時は、ちゃんとした人ほど心を傷めているものだ。自分ではどうにもならない事だったと開き直って謝罪する人も、それこそただ口だけで謝罪する人も、沢山居る。その方が心は傷つかない。
(散々嫌な人見てきたからなぁ…嫌な方にばっか目が肥えちゃって、なんだかなぁ…)
ウォルターは誠実に謝罪をしている。
(こんな事、もう二度と有って欲しくない。でも、それは、こうやって謝罪をしてくれる人に言っても意味は無い)
先ほど自分が晒された恐怖は、今も指先の熱を奪ったままで、腹の中をぞわぞわさせている。だが、悔しそうに、巻き込んだと表現し、申し訳無いと頭を下げたウォルターを責め立てる気にはなれない。その立場の方に、嫌というほど共感してしまう。
「どうか、気になさらないでください。職務上致し方ない事は多くあるでしょうから。私は気にしておりません」
はじかれたように顔を上げたウォルターに微笑んで見せてから、司法局を後にする。
自分がまだ疑われていた。
頭の中をぐるぐると掻き回されているような混乱が支配している。
ファランがやった今までのあれこれを忘れたつもりはなかった。だが、積み上げた憎しみが招き入れた冤罪は、晴れたと思っていたのだ。
(ああ、違う………憎いから、冤罪でも何でも作って、投獄しようって、そういう事だ)
ファランが主にやって来た事は、身分を使った横暴な振る舞いと暴言、器物損壊だ。周りを蔑み罵るだけではない。自分を笑った、という言いがかりで、学園の職員を辞めさせた事もある。気に入らない、という動機で、生徒を追い詰め追い出した事もある。金で揉み消してきた器物損壊も指の数では足りない。その中には、単純に新品になって喜んだ者もいれば、思い出や思い入れを壊され、それを金でなかった事にされ、それでも泣き寝入りするしかなく憎んだ者も大勢居たはずだ。
(………私、今度こそ本当に、もう、大丈夫だよね…?)
自分がやった訳じゃない。
そう言って全てがなかった事になるのなら、大声で自分は別人だと叫びたい。
だが、それを誰が信じるだろう。何もかも全てファランのやった事だ。
(私…どうしたら…)
例えば、心を入れ替えました、と謝罪行脚でもすれば、許されるだろうか。
(違う。許されたくてする行動は、全部。自己満足だ)
ならば、どうすれば良いのだろう。
(私。軽く考え過ぎてた………カトレア達が許してくれたから、勝手に、全部許された気になって、大丈夫だと思い込んでた)
それから、一週間ほどを物思いに耽り憂鬱に過ごす事になった。
が、カトレアを始めアルフレッドからも刑が確定したのですから大丈夫ですよ、と励まされ、いつまでも心配をかけていても仕方ないと思い、何とか復活した。
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