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悪役令嬢、ワガママ止めるってよ
18.誰ですか?
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カトレアが、見つけました、と言ったのは、手紙の到着から翌々日の事だった。
「イジェスティ家は、グローリア領のお隣であるフォークロア領にお住まいの子爵家でした。立地としては、グローリア領に隣接していますね」
「あら、そうなの…? 何か付き合いがあるのかしら」
「それが…特に手紙などのやりとりもないようなのです。いちおう、祖父にも問い合わせておりますが」
カトレアが持参してくれた地図で確認しても、イジェスティ家はグローリア領に間近な土地なのは確かだが、道が通っていない。勿論道がないから行き来ができないと決め付けられるものではないが、貴族の間に親交があれば、道を使うのが普通だ。
(このお宅からだと、こう、ぐるっと回る感じ………こんな遠回りして付き合いがあるのだとしたら、きっと親しい間柄よね)
詳しい事はアルフレッド待ちだが、もしかしたら父の代には付き合いがあった家なのかもしれない。そう考えると、少し、心が温かくなった。
(お父様、か)
もう会う事も話す事も適わない父が、手助けをしてくれているような、そんな気がした。
そうして、アルフレッドの返答を心待ちにしていたところ、先にライナヘル・イジェスティから手紙が届く。
内容は、先日の手紙への謝罪だった。
(はぁ、なるほど…お互いに新米当主って事なのね)
ライナヘルからの手紙によると、父親が急逝して当主になり、翌シーズンから王都で働くため、父と付き合いのある家の方々に招待状をお出しして顔見せのようなパーティを、というのが開催目的だったらしい。そうした訳で父の交友録を元に手紙を出したが、イジェスティ家とマーヴェラス家の親交は、あくまで先代である父達の個人的なものだったと後から判明したそうだ。
(誰も聞き覚えがなかったのは、お父様が亡くなってからは親交が絶えてたから…)
突然付き合いの覚えが無い家から手紙が来て驚かせてしまっただろうからという謝罪だが、先の手紙を撤回するものではなかった。もしお付き合いいただければ幸いなので、是非招待状を送らせて欲しい、と重ねて書かれている。
(この方はファランの悪評は知らないのかしら………知ってても、侯爵家との繋がりを作る良い機会と捉えている可能性もあるか。どういう人なのかは解らない内からお付き合いを断る必要も無いわよね)
ファランは、もし笑いものにされたらその時はその時、行いの悪さを反省するだけだ、と決めて、ライナヘルに参加希望の手紙を書いた。
「良いお付き合いができるかしら…」
「大丈夫ですよ。お嬢様は、ご立派です」
「へへ、ありがとう」
ライナヘルへ返事を出した翌日。
アルフレッドからの手紙で、アルハルト・ヴォルフェンの事が解った。いや、解ったは正確ではない。
「アルハルトという名前ならお父様の個人的な交友録にあるという事ね」
「手紙通り、書斎の執務机の三段目の引き出しにございました」
「ありがとう。個人的なお付き合いの交友録は別でお作りだったのね…えーっと…ア、ア、ア…アルハルト!」
カトレアから手帳サイズの交友録を受け取って、アルハルトの名前を探す。一頁目の中程にすぐ見つかった。
「あれ? この住所…王都の職人街の住所じゃない?」
「然様でございますね。この隣であれば、マーヴェラス家が贔屓にしている馬具職人の店なのですが」
「そうなの? じゃあ、もしかしてその馬具職人の住まいだったりするかしら? あ…でも、そうね、違うわよね、馬具職人の方がパーティを主催はしない…あ、この交友録詳細ページがあるわ」
アルハルトの名前と住所の下に、頁数が書かれており、そちらを捲るとヴォルフェンという家名付きで住所と職業、誕生日、食の好みなどの細かな情報が書かれていた。
「やっぱり…馬具職人(蹄鉄)ってなってる」
この国で、馬の蹄鉄職人というと、単純な馬具職人とは少々異なる。
初代国王の愛馬が、国王を助けるために敵将を蹴り倒したという逸話から、馬の蹄鉄を厄除けとして出入り口に飾る風習がある。特に貴族ともなれば精緻な細工を施した総金作りの物に宝石を嵌め込む事さえあるのだ。宝飾品の職人に近いため貴族との交流はかなり深い。
「職人さんがパーティ? って思ったけど…もしかして代理なのかしら」
「代理ですか?」
「うん。この前の手紙、別に主催のパーティとは書かれてなかったのよ。日時と場所があって、このパーティへの招待状を送っても良いかって訊いてきてて。もしかしたら私の出席を望む誰かが、父と懇意だった職人さんを間に挟んだのかなぁって…お父様が個人的に贈り物をするほど懇意にしてたのなら、きっと悪い方ではないわよね!」
少し悩んだファランだったが、ライナヘルの時と同様の決意で参加を表明した。
こうして、概ね好意的な誘いだと仮定して返事をしたが、マインス・キフトだけがよく解らないままだ。
キフト家という新興貴族がある事は解ったのだが、マーヴェラス家とも、父との繋がりも特に見当たらない。
アルハルトへ返事を出した翌日。
(イジェスティさんみたいにまた手紙が届いたりしないかな。来シーズンの話だし、あとひと月くらいは返事を出さなくても大丈夫とは聞いたけど…調べても調べても繋がりが不明だしなぁ………)
マインス・キフトの手紙を前に頭を抱えていたファランだったが、
(あれ、これ、別に何故私にって聞き返しても問題なくね)
と、ようやく思い至った。
「イジェスティ家は、グローリア領のお隣であるフォークロア領にお住まいの子爵家でした。立地としては、グローリア領に隣接していますね」
「あら、そうなの…? 何か付き合いがあるのかしら」
「それが…特に手紙などのやりとりもないようなのです。いちおう、祖父にも問い合わせておりますが」
カトレアが持参してくれた地図で確認しても、イジェスティ家はグローリア領に間近な土地なのは確かだが、道が通っていない。勿論道がないから行き来ができないと決め付けられるものではないが、貴族の間に親交があれば、道を使うのが普通だ。
(このお宅からだと、こう、ぐるっと回る感じ………こんな遠回りして付き合いがあるのだとしたら、きっと親しい間柄よね)
詳しい事はアルフレッド待ちだが、もしかしたら父の代には付き合いがあった家なのかもしれない。そう考えると、少し、心が温かくなった。
(お父様、か)
もう会う事も話す事も適わない父が、手助けをしてくれているような、そんな気がした。
そうして、アルフレッドの返答を心待ちにしていたところ、先にライナヘル・イジェスティから手紙が届く。
内容は、先日の手紙への謝罪だった。
(はぁ、なるほど…お互いに新米当主って事なのね)
ライナヘルからの手紙によると、父親が急逝して当主になり、翌シーズンから王都で働くため、父と付き合いのある家の方々に招待状をお出しして顔見せのようなパーティを、というのが開催目的だったらしい。そうした訳で父の交友録を元に手紙を出したが、イジェスティ家とマーヴェラス家の親交は、あくまで先代である父達の個人的なものだったと後から判明したそうだ。
(誰も聞き覚えがなかったのは、お父様が亡くなってからは親交が絶えてたから…)
突然付き合いの覚えが無い家から手紙が来て驚かせてしまっただろうからという謝罪だが、先の手紙を撤回するものではなかった。もしお付き合いいただければ幸いなので、是非招待状を送らせて欲しい、と重ねて書かれている。
(この方はファランの悪評は知らないのかしら………知ってても、侯爵家との繋がりを作る良い機会と捉えている可能性もあるか。どういう人なのかは解らない内からお付き合いを断る必要も無いわよね)
ファランは、もし笑いものにされたらその時はその時、行いの悪さを反省するだけだ、と決めて、ライナヘルに参加希望の手紙を書いた。
「良いお付き合いができるかしら…」
「大丈夫ですよ。お嬢様は、ご立派です」
「へへ、ありがとう」
ライナヘルへ返事を出した翌日。
アルフレッドからの手紙で、アルハルト・ヴォルフェンの事が解った。いや、解ったは正確ではない。
「アルハルトという名前ならお父様の個人的な交友録にあるという事ね」
「手紙通り、書斎の執務机の三段目の引き出しにございました」
「ありがとう。個人的なお付き合いの交友録は別でお作りだったのね…えーっと…ア、ア、ア…アルハルト!」
カトレアから手帳サイズの交友録を受け取って、アルハルトの名前を探す。一頁目の中程にすぐ見つかった。
「あれ? この住所…王都の職人街の住所じゃない?」
「然様でございますね。この隣であれば、マーヴェラス家が贔屓にしている馬具職人の店なのですが」
「そうなの? じゃあ、もしかしてその馬具職人の住まいだったりするかしら? あ…でも、そうね、違うわよね、馬具職人の方がパーティを主催はしない…あ、この交友録詳細ページがあるわ」
アルハルトの名前と住所の下に、頁数が書かれており、そちらを捲るとヴォルフェンという家名付きで住所と職業、誕生日、食の好みなどの細かな情報が書かれていた。
「やっぱり…馬具職人(蹄鉄)ってなってる」
この国で、馬の蹄鉄職人というと、単純な馬具職人とは少々異なる。
初代国王の愛馬が、国王を助けるために敵将を蹴り倒したという逸話から、馬の蹄鉄を厄除けとして出入り口に飾る風習がある。特に貴族ともなれば精緻な細工を施した総金作りの物に宝石を嵌め込む事さえあるのだ。宝飾品の職人に近いため貴族との交流はかなり深い。
「職人さんがパーティ? って思ったけど…もしかして代理なのかしら」
「代理ですか?」
「うん。この前の手紙、別に主催のパーティとは書かれてなかったのよ。日時と場所があって、このパーティへの招待状を送っても良いかって訊いてきてて。もしかしたら私の出席を望む誰かが、父と懇意だった職人さんを間に挟んだのかなぁって…お父様が個人的に贈り物をするほど懇意にしてたのなら、きっと悪い方ではないわよね!」
少し悩んだファランだったが、ライナヘルの時と同様の決意で参加を表明した。
こうして、概ね好意的な誘いだと仮定して返事をしたが、マインス・キフトだけがよく解らないままだ。
キフト家という新興貴族がある事は解ったのだが、マーヴェラス家とも、父との繋がりも特に見当たらない。
アルハルトへ返事を出した翌日。
(イジェスティさんみたいにまた手紙が届いたりしないかな。来シーズンの話だし、あとひと月くらいは返事を出さなくても大丈夫とは聞いたけど…調べても調べても繋がりが不明だしなぁ………)
マインス・キフトの手紙を前に頭を抱えていたファランだったが、
(あれ、これ、別に何故私にって聞き返しても問題なくね)
と、ようやく思い至った。
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