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そもそも悪役じゃないって声を大にして主張したい
37.再びの王都
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ファランは、明日から向かう一年ぶりの王都の事を考えながら、机の上の資料を読んでいた。
(なんか、私…いつもこんなんだな)
事情はどうあれ、二年間をサボった結果、ファランの日々は相変わらず勉強勉強の毎日だ。
今は、グローリア侯爵が現在王都で担っている役向きについての資料を読んでいる。
(ぶっちゃけ侯爵クラスがやってる仕事は、板挟みにならない中間管理職っていう、もう旨みしかない上司の典型みたいな状況だから何とでもなるんだろうけど………)
一年毎に領地と王都を行き来する領主やその家臣は、細かな実務や詳しい知識を必要とする職務には就いていない事がほとんどだ。自身の領地を経営するだけの手腕があれば、大概の役職を管轄できるものとされている。基本的に責任者に据えられはいるが、報告説明をして貰った事を更に上に伝え、裁可が下された事を下に伝える、という架橋のような存在でしかない。
およそ、人の話を理解でき、文章を読め、自分の名前を書く事ができれば、誰でも務まる仕事だ。
(ぐぬぬ…だがしかし!)
なまじ領地でやりがいを感じているファランは、ちゃんとやりたいと思ってしまったのだ。
そして、ちゃんとやろうと思うと、もういいや、という果てがなかった。
という訳で、まずは資料で勉強をしていた訳だが。
(とても解り易い素敵な資料だけれど…覚える事が多すぎてあと六日で覚えられるかどうか………いや、この資料持ち込めば良い、のか?)
ちなみに、ドが付く素人のファランでも解り易い資料は、アルフレッドが伝手を使って雇ってくれたという補佐人が作ってくれたものだ。
補佐人というのは、領主の領地経営を助ける家令や執事に対して、国政においての職務を助ける存在である。仕事内容は多岐だが、あくまで補佐なので、主人の技量によって彼らが担うものは変わっていく。
(このままだと負んぶに抱っこで全て助けて貰う事になりそう…)
ちらりと確認した、理想的な主人と補佐人の関係は、社長と秘書のようなものであるらしかった。
(スケジュール管理が主な仕事で、補佐人さんは一時窓口であり、主人になる私の仕事内容を理解はしているが、仕事をするのはあくまで私という状況が望ましい…)
「はぁあぁ…」
中々難しい、と伸びをしたところで、タイミングよくカトレアが入室してきた。
「ご主人様、そろそろお休みになりませんか?」
「うん。そうする」
ちなみに、レイモンドがやって来て以降。既に成人を迎えたファランをいつまでもお嬢様というのはおかしいだろうとして、近頃はみんながご主人様と呼んでくる。最初の頃は、物慣れず、呼ばれる度にモヤモヤしたものを感じていたファランだったが、一月ほど過ぎたところで慣れた。
「お仕事は、大変そうですか?」
ぎりぎりまで資料を読んでいたから気になったのだろう。さりげない様子だが、心配そうな目のカトレアに、ファランは笑い返した。
「そうね。楽ではないと思うわ。でも、アルフレッドが探してきてくれた補佐人、すっごく優秀そうよ。見て、この資料。良くまとまってるだけじゃなくて、重要な内容が強調されるように、すごく見易いの」
「まぁ、然様でございますか…」
「初めはきっと全部頼りきりになっちゃうと思うけど…ちゃんと吸収して、できるようになるわ」
「ご主人様なら、きっと、お出来になります」
「へへ、ありがとう」
机の上を片付け、席を立って寝室に向かいながら、ファランは思い出した。
「そう言えば、新しい侍女はどう? 候補は見つかったのよね?」
「はい。祖父もレイモンドさんも知り合いの方をご紹介くださって、着きしだい数人と面接を行います」
「良かった。これで皆お休みが取れるわね」
ファランは、心配事が一つ減ってホッと胸を撫で下ろす。
領地の家は、家政を担う人間の数も多く何とかなっていたが、明日からの王都での生活では、ファランの周りを囲む侍女の数が圧倒的に足りていなかったのだ。しかしながら、これで入れ替わりが激しく常に最低人数だったファランの侍女問題も解決したも同然だろう。アルフレッドとレイモンドの推薦ならばきっと即戦力の人材に違いない。
そう思ったのだが、カトレアの眉が寄ったままだ。
「あの、実は、その事でご相談が」
「ん? 採用基準とか? それならカトレアが良いと思った人で大丈夫だけど」
ガウンを脱いでカトレアに渡しながら、ファランは首を傾げた。
「いえ、お休みの事なのです」
「そっちかぁ、何?」
「ニーアが休みたくないとダダをこねておりまして」
「え、えー…? 休みたくないの?」
「ご主人様の側を離れたくないと」
「おぉおぅ…」
ベッドに潜り込みながら、ファランは近頃のニーアの様子を思い浮かべる。
(うーん…ニーアのあれもなんかちょっとトラウマめいたものを感じるんだよなぁ)
カトレアは、ガウンをベッドサイドの吊るしに掛けて、灯を絞っている。
「解った。私からも話してみるね」
「お願いいたします」
「うん」
最近気がついた変化なのだが、カトレアは、小さな頼み事をしてくれる。素直に、頼ってもらえる主人に成れた自分が嬉しくて、ファランは笑った。
「おやすみ」
「おやすみなさいませ」
王都に着いてからは、人物的なものも含めて新しい事が沢山待ち構えているはずだ。
不安はあるが、期待を持つ事も忘れないようにしようと心に決め、ファランはしっかりと睡眠をとった。
(なんか、私…いつもこんなんだな)
事情はどうあれ、二年間をサボった結果、ファランの日々は相変わらず勉強勉強の毎日だ。
今は、グローリア侯爵が現在王都で担っている役向きについての資料を読んでいる。
(ぶっちゃけ侯爵クラスがやってる仕事は、板挟みにならない中間管理職っていう、もう旨みしかない上司の典型みたいな状況だから何とでもなるんだろうけど………)
一年毎に領地と王都を行き来する領主やその家臣は、細かな実務や詳しい知識を必要とする職務には就いていない事がほとんどだ。自身の領地を経営するだけの手腕があれば、大概の役職を管轄できるものとされている。基本的に責任者に据えられはいるが、報告説明をして貰った事を更に上に伝え、裁可が下された事を下に伝える、という架橋のような存在でしかない。
およそ、人の話を理解でき、文章を読め、自分の名前を書く事ができれば、誰でも務まる仕事だ。
(ぐぬぬ…だがしかし!)
なまじ領地でやりがいを感じているファランは、ちゃんとやりたいと思ってしまったのだ。
そして、ちゃんとやろうと思うと、もういいや、という果てがなかった。
という訳で、まずは資料で勉強をしていた訳だが。
(とても解り易い素敵な資料だけれど…覚える事が多すぎてあと六日で覚えられるかどうか………いや、この資料持ち込めば良い、のか?)
ちなみに、ドが付く素人のファランでも解り易い資料は、アルフレッドが伝手を使って雇ってくれたという補佐人が作ってくれたものだ。
補佐人というのは、領主の領地経営を助ける家令や執事に対して、国政においての職務を助ける存在である。仕事内容は多岐だが、あくまで補佐なので、主人の技量によって彼らが担うものは変わっていく。
(このままだと負んぶに抱っこで全て助けて貰う事になりそう…)
ちらりと確認した、理想的な主人と補佐人の関係は、社長と秘書のようなものであるらしかった。
(スケジュール管理が主な仕事で、補佐人さんは一時窓口であり、主人になる私の仕事内容を理解はしているが、仕事をするのはあくまで私という状況が望ましい…)
「はぁあぁ…」
中々難しい、と伸びをしたところで、タイミングよくカトレアが入室してきた。
「ご主人様、そろそろお休みになりませんか?」
「うん。そうする」
ちなみに、レイモンドがやって来て以降。既に成人を迎えたファランをいつまでもお嬢様というのはおかしいだろうとして、近頃はみんながご主人様と呼んでくる。最初の頃は、物慣れず、呼ばれる度にモヤモヤしたものを感じていたファランだったが、一月ほど過ぎたところで慣れた。
「お仕事は、大変そうですか?」
ぎりぎりまで資料を読んでいたから気になったのだろう。さりげない様子だが、心配そうな目のカトレアに、ファランは笑い返した。
「そうね。楽ではないと思うわ。でも、アルフレッドが探してきてくれた補佐人、すっごく優秀そうよ。見て、この資料。良くまとまってるだけじゃなくて、重要な内容が強調されるように、すごく見易いの」
「まぁ、然様でございますか…」
「初めはきっと全部頼りきりになっちゃうと思うけど…ちゃんと吸収して、できるようになるわ」
「ご主人様なら、きっと、お出来になります」
「へへ、ありがとう」
机の上を片付け、席を立って寝室に向かいながら、ファランは思い出した。
「そう言えば、新しい侍女はどう? 候補は見つかったのよね?」
「はい。祖父もレイモンドさんも知り合いの方をご紹介くださって、着きしだい数人と面接を行います」
「良かった。これで皆お休みが取れるわね」
ファランは、心配事が一つ減ってホッと胸を撫で下ろす。
領地の家は、家政を担う人間の数も多く何とかなっていたが、明日からの王都での生活では、ファランの周りを囲む侍女の数が圧倒的に足りていなかったのだ。しかしながら、これで入れ替わりが激しく常に最低人数だったファランの侍女問題も解決したも同然だろう。アルフレッドとレイモンドの推薦ならばきっと即戦力の人材に違いない。
そう思ったのだが、カトレアの眉が寄ったままだ。
「あの、実は、その事でご相談が」
「ん? 採用基準とか? それならカトレアが良いと思った人で大丈夫だけど」
ガウンを脱いでカトレアに渡しながら、ファランは首を傾げた。
「いえ、お休みの事なのです」
「そっちかぁ、何?」
「ニーアが休みたくないとダダをこねておりまして」
「え、えー…? 休みたくないの?」
「ご主人様の側を離れたくないと」
「おぉおぅ…」
ベッドに潜り込みながら、ファランは近頃のニーアの様子を思い浮かべる。
(うーん…ニーアのあれもなんかちょっとトラウマめいたものを感じるんだよなぁ)
カトレアは、ガウンをベッドサイドの吊るしに掛けて、灯を絞っている。
「解った。私からも話してみるね」
「お願いいたします」
「うん」
最近気がついた変化なのだが、カトレアは、小さな頼み事をしてくれる。素直に、頼ってもらえる主人に成れた自分が嬉しくて、ファランは笑った。
「おやすみ」
「おやすみなさいませ」
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