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わりと周りも悪役とは思ってないみたい
41.さる学園生の回顧1
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ここで、少しファランの学園時代を、別視点で見てみよう。
カメリア・エリネット、という同級生の視点だ。
カメリアの家は、貧乏と言い切る程ではないが、余裕も無い、ギリギリな感じの伯爵家だった。
両親家族ともに、他人に見栄を張る癖があるため、領主という立場でありながら娘を学園に通わせる事も出来ないなど恥だ、と考え、余裕もないのに、娘三人を学園に通わせている。
そんな娘の三人目であるカメリアは、週三日、刺繍、文学、詩篇、演奏、計四つの授業を取っていた。
爵位を継ぐ予定が無く、どこかに嫁ぎ夫を支える妻としての役割が望まれるであろう三女のカメリア。彼女が、花嫁修業のような科目を取る事は、いわば家の余裕を示す行為だ。
(内実はともかく…)
そっと手を当てた制服は、姉二人が妹に着せる事を前提に大事に大事に着てきたものだ。
更にいうなら、カメリアは、学園で習う他の授業内容も知っている。従弟との結婚が決まっていた長女は経営学等を中心に、領内の商いで成功していた新興貴族と縁付く事を目的としていた次女は商学等で補足するように、授業を取っていて、それらの授業内容は全て姉妹で共有していたのだ。
つまり、彼女達は三倍の授業をとっているというわけだ。
(他の貴族の方でもこんな取り方をされる方はいらっしゃるのかしら…いらっしゃるわけ無いわよね)
思わず授業へ向かう廊下を歩きながら溜息を吐いてしまう。とてもではないが、情けなくて、同級生とこんな話はできない。そんな思いもあって、入学から三週間、カメリアはあまり親しい友人もできずにいた。
挨拶をしたり、軽く会話をするくらいならばあるが。放課後に連れ立ってみたり、休日に示し合わせて遊ぶような間柄になる事はない。
「あら…」
そんなカメリアが、友人になれたなら、と思っている相手が居る。
(マーヴェラス様。また、授業にはお出にならないのかしら)
家の格も、歴史も、経済力も、何もかもが段違いで、今のところ挨拶も交わせていない。だが、取っている授業が全て被っているのだ。もし、お近づきになれたなら、と考えずにはいられない。
(まぁ、私みたいなのが近付こうとしたところで、甘い汁を吸いたい取り巻き志望としか思われないのでしょうけど)
現に何人かの同じ授業をとっていた女生徒は、ファランに近付いてうっとうしそうに追い払われていた。
(せめて、ご挨拶ができるようになれば、なんて…無理よね…きっと)
向かいの廊下を歩んでいるファランに、すれ違いざまに挨拶するというのはどうだろう、などと考えたが。すれ違うまもなく廊下を曲がっていってしまう。
(あ………いえ、曲がられたという事は、教室に向かわれるのよ! 少し早足で追いつけば、ご挨拶できるかも!)
走るのははしたないが、ほぼ走っているような早足で、カメリアは必死に角まで来た。そこで、曲がろうとして、慌てて立ち止まり角に隠れる。
(え、どうしましょう、すぐそこにいらっしゃるなんて)
角を曲がってとっくに歩いて離れていると思っていたファランは、すぐそこに立っていた。
(どなたかとお話をされてる…?)
話し中では挨拶などできない。残念だと思いつつ、壁から体を離した。しかたがないので、そのまま追い越そうと足を踏み出す。
「次の授業があるので、失礼する!」
が、角から人影が現れて、身を竦ませてまた壁に背を貼り付ける事になった。
(殿下と…確かニールベス家の)
先ほどのカメリアばりの早足で目の前を去っていった二人に首を捻る。
(あの方、本当に殿下の近くにいらっしゃるのね)
親しい友人が居ないカメリアの耳にさえ悪い噂が届いていたテスティアを、初めて間近に見て彼女は眉を顰めた。
婚約者の居る男性に、近付くのははしたない真似だ。まして、その婚約者の前で、手を取り合うというのはどういう事だろう。
それだけではない。カメリアは、悪口の類はなるべく感情論を排して、話半分に聞く事にしているが、それでも随分酷い話しか聞いた事がない。
曰く、授業料を支払っていないのに、王子に取り入って授業を受けている。
曰く、婚約者のマーヴェラス嬢を差し置いて、ダンスの相手に名乗りを上げた。
曰く、自分を王子の恋人だと言いふらしている。
(悪意ある風聞も混じっているのでしょうけど…言われたくなければ身を引けば良いのだもの。それでも身を引かない、どころか、マーヴェラス様の前であの態度。ならば、そう間違ってもいないのね)
学園に通う多くの者にとって、テスティアの振る舞いは不快に映った。それは、同時にアイラックへの不快も意味したが、王子である彼に向けて非難を向ける事は、できない。
結果、テスティアは、半年も経つ頃には半数近い学園女生徒を敵に回した。また、敵とまではいかなくとも、ほぼ全ての女生徒が彼女に否定的であり、強いてそうでない人物を上げるのなら、皮肉な事に、全くテスティアの事を意識していなかったファランくらいなのだ。
ただし、ファラン自身が味方を望むような態度でなかったため、その多くは傍観者としてファランの事を見ていただけなのだが。
カメリア・エリネット、という同級生の視点だ。
カメリアの家は、貧乏と言い切る程ではないが、余裕も無い、ギリギリな感じの伯爵家だった。
両親家族ともに、他人に見栄を張る癖があるため、領主という立場でありながら娘を学園に通わせる事も出来ないなど恥だ、と考え、余裕もないのに、娘三人を学園に通わせている。
そんな娘の三人目であるカメリアは、週三日、刺繍、文学、詩篇、演奏、計四つの授業を取っていた。
爵位を継ぐ予定が無く、どこかに嫁ぎ夫を支える妻としての役割が望まれるであろう三女のカメリア。彼女が、花嫁修業のような科目を取る事は、いわば家の余裕を示す行為だ。
(内実はともかく…)
そっと手を当てた制服は、姉二人が妹に着せる事を前提に大事に大事に着てきたものだ。
更にいうなら、カメリアは、学園で習う他の授業内容も知っている。従弟との結婚が決まっていた長女は経営学等を中心に、領内の商いで成功していた新興貴族と縁付く事を目的としていた次女は商学等で補足するように、授業を取っていて、それらの授業内容は全て姉妹で共有していたのだ。
つまり、彼女達は三倍の授業をとっているというわけだ。
(他の貴族の方でもこんな取り方をされる方はいらっしゃるのかしら…いらっしゃるわけ無いわよね)
思わず授業へ向かう廊下を歩きながら溜息を吐いてしまう。とてもではないが、情けなくて、同級生とこんな話はできない。そんな思いもあって、入学から三週間、カメリアはあまり親しい友人もできずにいた。
挨拶をしたり、軽く会話をするくらいならばあるが。放課後に連れ立ってみたり、休日に示し合わせて遊ぶような間柄になる事はない。
「あら…」
そんなカメリアが、友人になれたなら、と思っている相手が居る。
(マーヴェラス様。また、授業にはお出にならないのかしら)
家の格も、歴史も、経済力も、何もかもが段違いで、今のところ挨拶も交わせていない。だが、取っている授業が全て被っているのだ。もし、お近づきになれたなら、と考えずにはいられない。
(まぁ、私みたいなのが近付こうとしたところで、甘い汁を吸いたい取り巻き志望としか思われないのでしょうけど)
現に何人かの同じ授業をとっていた女生徒は、ファランに近付いてうっとうしそうに追い払われていた。
(せめて、ご挨拶ができるようになれば、なんて…無理よね…きっと)
向かいの廊下を歩んでいるファランに、すれ違いざまに挨拶するというのはどうだろう、などと考えたが。すれ違うまもなく廊下を曲がっていってしまう。
(あ………いえ、曲がられたという事は、教室に向かわれるのよ! 少し早足で追いつけば、ご挨拶できるかも!)
走るのははしたないが、ほぼ走っているような早足で、カメリアは必死に角まで来た。そこで、曲がろうとして、慌てて立ち止まり角に隠れる。
(え、どうしましょう、すぐそこにいらっしゃるなんて)
角を曲がってとっくに歩いて離れていると思っていたファランは、すぐそこに立っていた。
(どなたかとお話をされてる…?)
話し中では挨拶などできない。残念だと思いつつ、壁から体を離した。しかたがないので、そのまま追い越そうと足を踏み出す。
「次の授業があるので、失礼する!」
が、角から人影が現れて、身を竦ませてまた壁に背を貼り付ける事になった。
(殿下と…確かニールベス家の)
先ほどのカメリアばりの早足で目の前を去っていった二人に首を捻る。
(あの方、本当に殿下の近くにいらっしゃるのね)
親しい友人が居ないカメリアの耳にさえ悪い噂が届いていたテスティアを、初めて間近に見て彼女は眉を顰めた。
婚約者の居る男性に、近付くのははしたない真似だ。まして、その婚約者の前で、手を取り合うというのはどういう事だろう。
それだけではない。カメリアは、悪口の類はなるべく感情論を排して、話半分に聞く事にしているが、それでも随分酷い話しか聞いた事がない。
曰く、授業料を支払っていないのに、王子に取り入って授業を受けている。
曰く、婚約者のマーヴェラス嬢を差し置いて、ダンスの相手に名乗りを上げた。
曰く、自分を王子の恋人だと言いふらしている。
(悪意ある風聞も混じっているのでしょうけど…言われたくなければ身を引けば良いのだもの。それでも身を引かない、どころか、マーヴェラス様の前であの態度。ならば、そう間違ってもいないのね)
学園に通う多くの者にとって、テスティアの振る舞いは不快に映った。それは、同時にアイラックへの不快も意味したが、王子である彼に向けて非難を向ける事は、できない。
結果、テスティアは、半年も経つ頃には半数近い学園女生徒を敵に回した。また、敵とまではいかなくとも、ほぼ全ての女生徒が彼女に否定的であり、強いてそうでない人物を上げるのなら、皮肉な事に、全くテスティアの事を意識していなかったファランくらいなのだ。
ただし、ファラン自身が味方を望むような態度でなかったため、その多くは傍観者としてファランの事を見ていただけなのだが。
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