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わりと周りも悪役とは思ってないみたい
43.さる学園生の回顧3
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次は、借りたハンカチを返す時に話しかけようと決めたカメリアだったが、残念ながら、その機会は訪れない。
パーティを経ても相変わらずなテスティアへ、ファランが直接注意をするようになり、忙しそうにしていたからだ。
(わざわざ言われなければ解らない事ではないでしょうに)
カメリアは、自分の感情が、ファランへハンカチを返す機会が無いという八つ当たりめいたものを除いても、テスティアを嫌っているとはっきり自覚した。そして、それと同時に、アイラックへも嫌悪が募る。それでも、面と向かって言い出すことなど出来はしない。ただ、内心に非難が溢れる事はどうしようもなかった。
二年目は授業が被らなかった事もあり、結局ハンカチを返す最後の機会である卒業式の日になる。
ゆくゆく爵位を継ぐ嫡子でもない限り、早めに行かねば前の方には立てない。そのため、カメリアは他の多くの生徒と同様に、まだ来客も揃いきらない会場で待っていた。
(え?)
そして、壇上に立つアイラックとテスティアに気付く。
生徒達の間にざわめきが広がった頃。出入り口から壇上へ真っ直ぐに続く通路の後ろから、しんと静まり始めた。
(マーヴェラス様!)
人垣の真ん中を、ファランは静かに歩いて、壇上へ近付く。
「ファラン・マーヴェラス」
ファランが足を止めたところで、壇上のアイラックが大声を上げた。
(何をするつもりなの?)
不信感で壇上の二人を見つめたカメリアは、その後の展開に拳を握り締めて震える事になる。
「何か?」
この状況でも堂々とした佇まいを見せるファランと、壇上で見下ろしながら身を寄せ合っている二人。自然とカメリアは壇上を睨むように見てしまう。
「君…お前の悪事は全て明々白々だ!」
(マーヴェラス様が何をしたというのよ!)
叫び出しそうな思いを拳を握り締める事で抑えて、今度こそ、カメリアは壇上をキッと睨みつけた。
「はぁ、然様でございますか?」
自分達の非常識な振るまいを棚に上げて、なんて事を言い出すのだ、とカメリアが思っている間も、会話は進んでいく。
「証拠もここに揃っている!」
「は?」
(そんなものでまかせに決まっています!)
「衛兵! 彼女を捕えろ!」
(なんて横暴な!)
カメリアは思わず人をかき分けて通路へ飛び出そうとしたが、ファランが変わらず冷静な事に気付いて立ち止まる。
「触らないでくださる? 別に暴れも逃げもいたしませんから」
(さすがですマーヴェラス様!)
「先程から、悪事だの証拠だのと仰るだけで、一切具体的な内容が聞こえてきませんが、私にいったいどんな罪を被せたいのです?」
ファランの言葉に、周囲の生徒は息を飲んだ。
「君が………君がやった事は! ここに居るテスティア嬢への嫌がらせだ!」
(マーヴェラス様への嫌がらせめいた真似をなさっていたのはそちらでしょうに!)
先ほどのファランの言葉と、その言葉を聞いた壇上の二人の動揺。それが、何より物語っていた。
(このような公の場で、マーヴェラス様へ罪を着せ、恥をかかせるつもりなのね!)
カメリアの腹立ちとは反して、ファランは淡々としたままだ。
「然様でございますか。解りました」
「だから! …え?」
「解ったと申し上げました」
溜息混じりのその返答に、カメリアをはじめとする数人の生徒がざわつく。
(マーヴェラス様?)
もっとも、ファランは意に介した様子もないが。
「えっと、衛兵さん? そちらの、証拠とやら共々、私をどこか別室に案内してちょうだい。来賓の方々の時間を取らせるような事ではないでしょう」
「はっ、はい。あ、いえ」
「では、私はこれにて失礼いたします」
衛兵を連れ会場を去っていく姿に、カメリアは怒りを覚えた。ファランへの怒りではない。なぜ彼女がこの場を去らなくてはならないのか、という怒りだ。
せめても溜飲を下げる事態があったとすれば、アイラックとテスティアの二人も式に出なかった事くらいだろうか。
(きっと、馬鹿馬鹿しくて相手をする気も起きなかったのよ…あんな、真似…たとえ王子殿下とて許されるものですか!)
式が終わって、家へたどり着いても、カメリアはモヤモヤとしたものを払う事が出来なかった。
(ハンカチ、お返しできなかったわ…)
けれど、まだ約束がある。そっと、美しい絹の表面を撫で、香り付けのためのポプリが入っているチェストへしまった。必ず、パーティに誘い、そして、お礼と共にハンカチを返すのだ、という決意と共に。
決意して卒業したカメリアだったが、まずは在学中から進んでいた結婚へ向け動き出したため、少しの間世間の動きからは離れ忙しくしていた。
そのため、全て終わってから、知った。
ファランとアイラックの婚約が、ファランの方から申し入れられ国王が受諾する形で、破棄された事。
ファランがグローリア侯爵となった事
アイラックが王籍を外れた事。
ファランが訴えられた事は事実無根だとして無罪を勝ち取った事。
(当然だわ!)
その事をカメリアへ知らせてくれた同級生と手を取り合って喜んだ。
このように、大多数の客観的視点から見ると、ファランはキツイ性格をしてはいるが、侯爵令嬢としてはまともな人物だと思われていた。
グローリア侯爵となった後で起きたお家騒動に関しても、彼女自身には何の非もなく、年若くして困難な状況になってしまった不幸に同情を寄せる者がほとんどである。
パーティを経ても相変わらずなテスティアへ、ファランが直接注意をするようになり、忙しそうにしていたからだ。
(わざわざ言われなければ解らない事ではないでしょうに)
カメリアは、自分の感情が、ファランへハンカチを返す機会が無いという八つ当たりめいたものを除いても、テスティアを嫌っているとはっきり自覚した。そして、それと同時に、アイラックへも嫌悪が募る。それでも、面と向かって言い出すことなど出来はしない。ただ、内心に非難が溢れる事はどうしようもなかった。
二年目は授業が被らなかった事もあり、結局ハンカチを返す最後の機会である卒業式の日になる。
ゆくゆく爵位を継ぐ嫡子でもない限り、早めに行かねば前の方には立てない。そのため、カメリアは他の多くの生徒と同様に、まだ来客も揃いきらない会場で待っていた。
(え?)
そして、壇上に立つアイラックとテスティアに気付く。
生徒達の間にざわめきが広がった頃。出入り口から壇上へ真っ直ぐに続く通路の後ろから、しんと静まり始めた。
(マーヴェラス様!)
人垣の真ん中を、ファランは静かに歩いて、壇上へ近付く。
「ファラン・マーヴェラス」
ファランが足を止めたところで、壇上のアイラックが大声を上げた。
(何をするつもりなの?)
不信感で壇上の二人を見つめたカメリアは、その後の展開に拳を握り締めて震える事になる。
「何か?」
この状況でも堂々とした佇まいを見せるファランと、壇上で見下ろしながら身を寄せ合っている二人。自然とカメリアは壇上を睨むように見てしまう。
「君…お前の悪事は全て明々白々だ!」
(マーヴェラス様が何をしたというのよ!)
叫び出しそうな思いを拳を握り締める事で抑えて、今度こそ、カメリアは壇上をキッと睨みつけた。
「はぁ、然様でございますか?」
自分達の非常識な振るまいを棚に上げて、なんて事を言い出すのだ、とカメリアが思っている間も、会話は進んでいく。
「証拠もここに揃っている!」
「は?」
(そんなものでまかせに決まっています!)
「衛兵! 彼女を捕えろ!」
(なんて横暴な!)
カメリアは思わず人をかき分けて通路へ飛び出そうとしたが、ファランが変わらず冷静な事に気付いて立ち止まる。
「触らないでくださる? 別に暴れも逃げもいたしませんから」
(さすがですマーヴェラス様!)
「先程から、悪事だの証拠だのと仰るだけで、一切具体的な内容が聞こえてきませんが、私にいったいどんな罪を被せたいのです?」
ファランの言葉に、周囲の生徒は息を飲んだ。
「君が………君がやった事は! ここに居るテスティア嬢への嫌がらせだ!」
(マーヴェラス様への嫌がらせめいた真似をなさっていたのはそちらでしょうに!)
先ほどのファランの言葉と、その言葉を聞いた壇上の二人の動揺。それが、何より物語っていた。
(このような公の場で、マーヴェラス様へ罪を着せ、恥をかかせるつもりなのね!)
カメリアの腹立ちとは反して、ファランは淡々としたままだ。
「然様でございますか。解りました」
「だから! …え?」
「解ったと申し上げました」
溜息混じりのその返答に、カメリアをはじめとする数人の生徒がざわつく。
(マーヴェラス様?)
もっとも、ファランは意に介した様子もないが。
「えっと、衛兵さん? そちらの、証拠とやら共々、私をどこか別室に案内してちょうだい。来賓の方々の時間を取らせるような事ではないでしょう」
「はっ、はい。あ、いえ」
「では、私はこれにて失礼いたします」
衛兵を連れ会場を去っていく姿に、カメリアは怒りを覚えた。ファランへの怒りではない。なぜ彼女がこの場を去らなくてはならないのか、という怒りだ。
せめても溜飲を下げる事態があったとすれば、アイラックとテスティアの二人も式に出なかった事くらいだろうか。
(きっと、馬鹿馬鹿しくて相手をする気も起きなかったのよ…あんな、真似…たとえ王子殿下とて許されるものですか!)
式が終わって、家へたどり着いても、カメリアはモヤモヤとしたものを払う事が出来なかった。
(ハンカチ、お返しできなかったわ…)
けれど、まだ約束がある。そっと、美しい絹の表面を撫で、香り付けのためのポプリが入っているチェストへしまった。必ず、パーティに誘い、そして、お礼と共にハンカチを返すのだ、という決意と共に。
決意して卒業したカメリアだったが、まずは在学中から進んでいた結婚へ向け動き出したため、少しの間世間の動きからは離れ忙しくしていた。
そのため、全て終わってから、知った。
ファランとアイラックの婚約が、ファランの方から申し入れられ国王が受諾する形で、破棄された事。
ファランがグローリア侯爵となった事
アイラックが王籍を外れた事。
ファランが訴えられた事は事実無根だとして無罪を勝ち取った事。
(当然だわ!)
その事をカメリアへ知らせてくれた同級生と手を取り合って喜んだ。
このように、大多数の客観的視点から見ると、ファランはキツイ性格をしてはいるが、侯爵令嬢としてはまともな人物だと思われていた。
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