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わりと周りも悪役とは思ってないみたい
44.しかしながら
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もっとも、このような世間の認識は、人間不信と視野狭窄状態になっていた精神停止年齢幼女のファランは預かり知らぬ事だ。
そして、ファランの記憶と感情を全て取り戻して、新生ファランとなっても、今尚、知らぬ事である。
自己評価が低いファランはもとより、ミキとてファランの評価が世間的にどうかはよく解っていない。何故なら、彼女が知る客観的なファランの行動は、アイラックとテスティアの恋物語で悪役として登場したファランなのだ。
彼女自身は、ファランの行為には事情があったと知れた事で、受け入れる事やこれから幸せを目指す事などは決意できた。
だが、それとアイラックとテスティアの仲を邪魔した件や、態度が横暴だった件などは、全く別の話なのだ。なんなら未だに、二人は今頃幸せに暮らしているに違いない、と思っているくらいである。彼らの幸せが、ファランを追い落としてグローリア領を奪う事で成り立つめでたしめでたし、だったというのに。
そうした訳で、ファランは、自己評価と世間評価の間に、かなりのズレを持っている。
更に、残念な事に、ファランの自己評価が恐ろしく低い事を周囲の人間が解っていないため、誰もその落差について修正できなかった。
ここまで、カメリアの視点まで借りて、長々とファランが世間様からどう思われているかを語ったが、その理由は、次の話をするためだ。
現在。
ファランは、結婚、という市場において、上限知らずに高騰中の銘柄株である。
「彼女の夫になれば、グローリア領が付いてくる!」
多少横領事件によって資産が減ったとはいえ、長期間安定した広大かつ豊かなグローリア領を持つ、たった一人の女性。
それがファランである。
「戻られた姿を見たか! なんと美しい!」
ファラン自身は元の価値観が、この国らしい彫りの深い派手な顔こそ美形、という認識があるため、自分を美しいなどと思う事はない。だが、最近の流行に乗らないファランの姿を、その異国的な顔立ちも含めて、唯一無二の魅力に溢れ美しいと感じる人間は数多い。今となっては、王子との婚約を破棄するため、戦略的に太っていたのでは、とまで噂されていた。
無論、そんな事はないのだが。
「ぜひ、結婚を!」
そうした訳で、マーヴェラス家には、今、方々から見合い、あるいは、結婚を前提とした交際の申し込み、遠まわしに結婚を匂わせるパーティの誘い、などが殺到していた。
「………」
ほぼ全て、アルフレッドの検閲の結果。無残に断られていたが。
「ねぇ、カトレア。アルフレッドってば、最近、顔を出しては手紙を選別してるけど…家に居ると暇なのかしら?」
そうとは知らずにアルフレッドが渡してくる手紙だけを読んでいるファランは、気楽な調子でその姿を眺めている。
「さぁ…もしかしたら、お嬢様のお側に居たいのかもしれませんよ」
「えー、アルフレッドもニーアみたいな感じ? もうモテモテで照れちゃうわ」
冗談を言ってカトレアと笑っているファランは、気付かなかった。自分の人生のかなり大切な事を、アルフレッドが今、握っていると。
とはいえ、全ての手紙を見せられたところで、今のファランには選別眼が無いので、より分け事態は大いに助かる事なのだ。
問題は、一つ残らず脱落している事である。
(貴族ってダイレクトメールもいっぱい来るのね)
しかも本人は、手元に届かぬ手紙を不特定多数に送りつけられているダイレクトメールの類だと思っていた。
「あ、そうだカトレア。明日、あの赤いハーブティを持っていきたいんだけど」
「では、小瓶に詰め替えておきますね」
「お願い」
「他にもお詰めしますか?」
「んー…じゃあ、青いのも一緒に!」
「かしこまりました」
では早速、と準備に向かうカトレアを見送って、ファランは机に肘をついて手を組み、その手の上に顎を乗せてふふふとほくそ笑んだ。
(暇上等よ。あの局長室を私の巣にしてやるわ!)
昔、友人から聞いた職場の先輩の話。それが羨ましかったのを思い出して、局長室の作業空間を自由気ままな秘密基地的なものにしようとしていた。
例えば、一段丸々、数十種類もの茶葉とお菓子で一杯になっている引き出し。
例えば、何処を向いても好きなキャラクターが視界に入るようグッズがディスプレイされたデスク。
例えば、機能性はさておいて、自分のテンションが上がるかどうかで集められた文具の数々。
その自由が許容される素晴らしさ。
(ティーセットとお菓子は運び込んだから、後は、茶葉を揃えたいのよね。ふへへ。綺麗な小瓶で並べるのも良いかも。仕事内容を把握する必要はあるけど、月一回会議に出席する以外、仕事らしい仕事無いとか、ホントにねぇもう、あー領地帰りたい)
ただ、貧乏性が災いして、暇を余裕と捉えるより、何かしなくてはという焦燥の方が強いのだが。
(帰らないけどさ)
そのため、ファランは、作業空間でグローリア領のデータ分析をする気満々である。
(自領の事が忙しくて仕事任せられないっていうなら望み通り自領の事やってやりますよーだ)
登城三日目は、午前も午後も、ずっとまったり楽しいデータ分析祭りである。
(せっつかれたり理解不能なデータ算出とかさせられないなら、データ分析そのものは好きなんだから)
向こうが仕事が無いと言ってくるのだから仕方がない。グローリア領のためになる事をするまでだ。そう決めて、ファランはぐいっと背筋を伸ばした。
そして、ファランの記憶と感情を全て取り戻して、新生ファランとなっても、今尚、知らぬ事である。
自己評価が低いファランはもとより、ミキとてファランの評価が世間的にどうかはよく解っていない。何故なら、彼女が知る客観的なファランの行動は、アイラックとテスティアの恋物語で悪役として登場したファランなのだ。
彼女自身は、ファランの行為には事情があったと知れた事で、受け入れる事やこれから幸せを目指す事などは決意できた。
だが、それとアイラックとテスティアの仲を邪魔した件や、態度が横暴だった件などは、全く別の話なのだ。なんなら未だに、二人は今頃幸せに暮らしているに違いない、と思っているくらいである。彼らの幸せが、ファランを追い落としてグローリア領を奪う事で成り立つめでたしめでたし、だったというのに。
そうした訳で、ファランは、自己評価と世間評価の間に、かなりのズレを持っている。
更に、残念な事に、ファランの自己評価が恐ろしく低い事を周囲の人間が解っていないため、誰もその落差について修正できなかった。
ここまで、カメリアの視点まで借りて、長々とファランが世間様からどう思われているかを語ったが、その理由は、次の話をするためだ。
現在。
ファランは、結婚、という市場において、上限知らずに高騰中の銘柄株である。
「彼女の夫になれば、グローリア領が付いてくる!」
多少横領事件によって資産が減ったとはいえ、長期間安定した広大かつ豊かなグローリア領を持つ、たった一人の女性。
それがファランである。
「戻られた姿を見たか! なんと美しい!」
ファラン自身は元の価値観が、この国らしい彫りの深い派手な顔こそ美形、という認識があるため、自分を美しいなどと思う事はない。だが、最近の流行に乗らないファランの姿を、その異国的な顔立ちも含めて、唯一無二の魅力に溢れ美しいと感じる人間は数多い。今となっては、王子との婚約を破棄するため、戦略的に太っていたのでは、とまで噂されていた。
無論、そんな事はないのだが。
「ぜひ、結婚を!」
そうした訳で、マーヴェラス家には、今、方々から見合い、あるいは、結婚を前提とした交際の申し込み、遠まわしに結婚を匂わせるパーティの誘い、などが殺到していた。
「………」
ほぼ全て、アルフレッドの検閲の結果。無残に断られていたが。
「ねぇ、カトレア。アルフレッドってば、最近、顔を出しては手紙を選別してるけど…家に居ると暇なのかしら?」
そうとは知らずにアルフレッドが渡してくる手紙だけを読んでいるファランは、気楽な調子でその姿を眺めている。
「さぁ…もしかしたら、お嬢様のお側に居たいのかもしれませんよ」
「えー、アルフレッドもニーアみたいな感じ? もうモテモテで照れちゃうわ」
冗談を言ってカトレアと笑っているファランは、気付かなかった。自分の人生のかなり大切な事を、アルフレッドが今、握っていると。
とはいえ、全ての手紙を見せられたところで、今のファランには選別眼が無いので、より分け事態は大いに助かる事なのだ。
問題は、一つ残らず脱落している事である。
(貴族ってダイレクトメールもいっぱい来るのね)
しかも本人は、手元に届かぬ手紙を不特定多数に送りつけられているダイレクトメールの類だと思っていた。
「あ、そうだカトレア。明日、あの赤いハーブティを持っていきたいんだけど」
「では、小瓶に詰め替えておきますね」
「お願い」
「他にもお詰めしますか?」
「んー…じゃあ、青いのも一緒に!」
「かしこまりました」
では早速、と準備に向かうカトレアを見送って、ファランは机に肘をついて手を組み、その手の上に顎を乗せてふふふとほくそ笑んだ。
(暇上等よ。あの局長室を私の巣にしてやるわ!)
昔、友人から聞いた職場の先輩の話。それが羨ましかったのを思い出して、局長室の作業空間を自由気ままな秘密基地的なものにしようとしていた。
例えば、一段丸々、数十種類もの茶葉とお菓子で一杯になっている引き出し。
例えば、何処を向いても好きなキャラクターが視界に入るようグッズがディスプレイされたデスク。
例えば、機能性はさておいて、自分のテンションが上がるかどうかで集められた文具の数々。
その自由が許容される素晴らしさ。
(ティーセットとお菓子は運び込んだから、後は、茶葉を揃えたいのよね。ふへへ。綺麗な小瓶で並べるのも良いかも。仕事内容を把握する必要はあるけど、月一回会議に出席する以外、仕事らしい仕事無いとか、ホントにねぇもう、あー領地帰りたい)
ただ、貧乏性が災いして、暇を余裕と捉えるより、何かしなくてはという焦燥の方が強いのだが。
(帰らないけどさ)
そのため、ファランは、作業空間でグローリア領のデータ分析をする気満々である。
(自領の事が忙しくて仕事任せられないっていうなら望み通り自領の事やってやりますよーだ)
登城三日目は、午前も午後も、ずっとまったり楽しいデータ分析祭りである。
(せっつかれたり理解不能なデータ算出とかさせられないなら、データ分析そのものは好きなんだから)
向こうが仕事が無いと言ってくるのだから仕方がない。グローリア領のためになる事をするまでだ。そう決めて、ファランはぐいっと背筋を伸ばした。
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