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周りは先にアップを終えていたようです
52.そもそも
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ファランが山野局で挨拶参りを受けていた頃。
「むぅー…」
ニーアが腕組みをして唸っていた。
「どうしたの?」
ミモザは、そんなニーアに声をかけつつ、棚の上の埃を払う。
二人は今、主人の執務室を掃除中だ。
「どうしてぇ侍女なのにご主人様について行っちゃいけないのぉ」
「お城には許可をもらった人しか入れないからしかたないんだよ」
「でもぉ、補佐人でしたかぁ? あのクライフさんって人は一緒じゃないですかぁ」
「許可をもらってるんだよ、きっと」
「その許可がぁどうして侍女には出ないんですかねぇ。ご主人様だってぇ、私達が居ないのはきっと大変ですよぉ」
「きっと局員の人がいるから大丈夫だよ」
一切自分の不満に同調してくれないミモザに、ニーアは頬を膨らませた。
「?」
突如言葉が止まった事に気付いてミモザがようやく顔を向けると、ぷいっと勢い良く逸らす。
「え、ええ…」
どうしてそんなにむくれてしまったのか、本当に解っていないミモザは慌てて宥めにかかるが、何せ原因を解っていないので、ニーアの機嫌が良くなる事はなかった。
(ミモザは解ってないっ!)
ファランを守るのは自分達なのに、とニーアは腹を立てている。
突然やってきて、ほんの一回会っただけの補佐人という人物に、どうして大切な主人を預けられるだろう。まして、局員などという会った事もない他人には尚更だ。
案の定。戻ってきたファランは疲れた顔をしていた。
(どうしてカトレアさんも許可が取れるように動いてくれないのぉ)
主人に直接訴えかければ、大丈夫だから気にしなくて良い、と言われる。
自分と同じかそれ以上に主人を気にかけているはずのカトレアでさえ、何故か城について行こうとはしない。
ファランが山野局で使うというものを箱に詰めながらニーアはぷりぷりと不満を溜め込んでいた。
「ニーアさん。ご主人様がお使いになるものをそんな顔で扱ってはいけませんよ」
フィエラの言葉に、ニーアは自分の顔を触ってみる。
むっと唇が曲がり、眉が寄っていた。
ペチンッと両頬を両手で挟んで解し、その後頬を摘んで上に持ち上げながら引っ張る。最後は揃えた二本の指で眉間をぐりぐりと回して、左右へゆっくりと広げた。ぷすーと息を吐き出して、フィエラを見返す。
「いつも通りですかぁ?」
「はい」
普段通りの少し笑っているような口元と、とろんとした目元が戻ったニーアにフィエラは頷き返した。
「ご主人様がぁ、笑顔でお使いになるものはぁ、私達も笑顔で扱わなくてはいけません」
「はい」
荷造りの際にカトレアから教わった事を、フィエラに教えたのはニーアだ。同じ事をもう一度、今度は自分自身に言い聞かせながら作業を再開した。
こうして作った荷物がファランの山野局での生活を支えたかどうか、判然とはしない。だが、二回目の登城から帰ってきた主人は初登城よりは疲れていないように見えた。
(ふふん)
ニーアはファランが追加でまとめて欲しいと言ってきた荷物を詰めている。
(笑顔でお使いになるものは笑顔で)
きっと楽しく過ごせたに違いない。そう信じて、ニーアはせっせと手を動かしながら笑顔だ。
(どちらにいらっしゃってもぉ、ご主人様を支えているのは私達なんだからぁ)
こうして楽し気に荷造りを終えたニーアは、三度目の登城から戻ったファランの様子が気になった。執務室で作業をしている中、時折頭を押さえて、何かを思い出して唸るような仕草をしているのだ。
「あのぉ、お城で何かあったのですかぁ?」
「え! ああ違うの、ちょっと表作成で考え事をね」
「そうですかぁ…」
直接尋ねれば、あまり納得できない答えが返ってくるだけだった。
(むぅー…きっと何かあったに違いないのぉ)
そんな思いを募らせていた中。
目下ニーアの中の不審者リスト筆頭であるクライフが、マーヴェラス家にやって来る。
「………」
「?」
作法に違わず玄関から入ってきたはずなのに、じっとりと上から下までを不審物でも見るような目で睨み付けられ、クライフは困惑していた。
一方、クライフの周りを睨んで回ったニーアは、
「昨日。お城で何かありましたか?」
と、答えねば中には入れないぞ、という態度で問いかけた。
「昨日…?」
問いかけられたクライフとしては、何かあったのはむしろ更に前だと考えている。ただし、言わないと約束をした以上何も言う気はないが。
「いえ、特には」
「ふぅん?」
片眉をはね上げてより一層不審そうな顔をしたニーアは、つんと顔を背ける。
「嘘を吐いている感じはしないけどぉ」
口の中で呟くと、再びクライフを睨む。
「ところで、何でそんな似合わないカツラ被ってるんですか?」
丁度良いので、この新参者の不可解な点を洗いざらい潰そうと質問を続けた。
「………似合いませんか」
「アクセサリーみたいな目が浮いてます。眼鏡で誤魔化してるつもりなのかもしれませんけど」
「初めて言われました」
「アルフレッドさんが推薦したというから皆気にしてないみたいですけど。私は貴方みたいな人信用しませんから。ご主人様に妙な真似をしたら許しませんよ!」
「妙………心強い事です。私も、グローリア侯をお支えしたいと心底から思っておりますので」
渾身の気合を込めて睨めば、笑顔で心強いと言われた。ニーアは、拍子抜けして、思わず攻撃の手が緩む。そして、間の悪い事に、中からミモザが出てきてしまった。
「あ、クライフさん。いらっしゃいませ」
「こんにちは」
「ご案内します。あ、ニーア、厨房でスターチさんが呼んでたわよ」
「…解ったわぁ」
ニーアは笑顔のクライフからむっとした顔で背を向け、厨房へ歩いて行った。
「むぅー…」
ニーアが腕組みをして唸っていた。
「どうしたの?」
ミモザは、そんなニーアに声をかけつつ、棚の上の埃を払う。
二人は今、主人の執務室を掃除中だ。
「どうしてぇ侍女なのにご主人様について行っちゃいけないのぉ」
「お城には許可をもらった人しか入れないからしかたないんだよ」
「でもぉ、補佐人でしたかぁ? あのクライフさんって人は一緒じゃないですかぁ」
「許可をもらってるんだよ、きっと」
「その許可がぁどうして侍女には出ないんですかねぇ。ご主人様だってぇ、私達が居ないのはきっと大変ですよぉ」
「きっと局員の人がいるから大丈夫だよ」
一切自分の不満に同調してくれないミモザに、ニーアは頬を膨らませた。
「?」
突如言葉が止まった事に気付いてミモザがようやく顔を向けると、ぷいっと勢い良く逸らす。
「え、ええ…」
どうしてそんなにむくれてしまったのか、本当に解っていないミモザは慌てて宥めにかかるが、何せ原因を解っていないので、ニーアの機嫌が良くなる事はなかった。
(ミモザは解ってないっ!)
ファランを守るのは自分達なのに、とニーアは腹を立てている。
突然やってきて、ほんの一回会っただけの補佐人という人物に、どうして大切な主人を預けられるだろう。まして、局員などという会った事もない他人には尚更だ。
案の定。戻ってきたファランは疲れた顔をしていた。
(どうしてカトレアさんも許可が取れるように動いてくれないのぉ)
主人に直接訴えかければ、大丈夫だから気にしなくて良い、と言われる。
自分と同じかそれ以上に主人を気にかけているはずのカトレアでさえ、何故か城について行こうとはしない。
ファランが山野局で使うというものを箱に詰めながらニーアはぷりぷりと不満を溜め込んでいた。
「ニーアさん。ご主人様がお使いになるものをそんな顔で扱ってはいけませんよ」
フィエラの言葉に、ニーアは自分の顔を触ってみる。
むっと唇が曲がり、眉が寄っていた。
ペチンッと両頬を両手で挟んで解し、その後頬を摘んで上に持ち上げながら引っ張る。最後は揃えた二本の指で眉間をぐりぐりと回して、左右へゆっくりと広げた。ぷすーと息を吐き出して、フィエラを見返す。
「いつも通りですかぁ?」
「はい」
普段通りの少し笑っているような口元と、とろんとした目元が戻ったニーアにフィエラは頷き返した。
「ご主人様がぁ、笑顔でお使いになるものはぁ、私達も笑顔で扱わなくてはいけません」
「はい」
荷造りの際にカトレアから教わった事を、フィエラに教えたのはニーアだ。同じ事をもう一度、今度は自分自身に言い聞かせながら作業を再開した。
こうして作った荷物がファランの山野局での生活を支えたかどうか、判然とはしない。だが、二回目の登城から帰ってきた主人は初登城よりは疲れていないように見えた。
(ふふん)
ニーアはファランが追加でまとめて欲しいと言ってきた荷物を詰めている。
(笑顔でお使いになるものは笑顔で)
きっと楽しく過ごせたに違いない。そう信じて、ニーアはせっせと手を動かしながら笑顔だ。
(どちらにいらっしゃってもぉ、ご主人様を支えているのは私達なんだからぁ)
こうして楽し気に荷造りを終えたニーアは、三度目の登城から戻ったファランの様子が気になった。執務室で作業をしている中、時折頭を押さえて、何かを思い出して唸るような仕草をしているのだ。
「あのぉ、お城で何かあったのですかぁ?」
「え! ああ違うの、ちょっと表作成で考え事をね」
「そうですかぁ…」
直接尋ねれば、あまり納得できない答えが返ってくるだけだった。
(むぅー…きっと何かあったに違いないのぉ)
そんな思いを募らせていた中。
目下ニーアの中の不審者リスト筆頭であるクライフが、マーヴェラス家にやって来る。
「………」
「?」
作法に違わず玄関から入ってきたはずなのに、じっとりと上から下までを不審物でも見るような目で睨み付けられ、クライフは困惑していた。
一方、クライフの周りを睨んで回ったニーアは、
「昨日。お城で何かありましたか?」
と、答えねば中には入れないぞ、という態度で問いかけた。
「昨日…?」
問いかけられたクライフとしては、何かあったのはむしろ更に前だと考えている。ただし、言わないと約束をした以上何も言う気はないが。
「いえ、特には」
「ふぅん?」
片眉をはね上げてより一層不審そうな顔をしたニーアは、つんと顔を背ける。
「嘘を吐いている感じはしないけどぉ」
口の中で呟くと、再びクライフを睨む。
「ところで、何でそんな似合わないカツラ被ってるんですか?」
丁度良いので、この新参者の不可解な点を洗いざらい潰そうと質問を続けた。
「………似合いませんか」
「アクセサリーみたいな目が浮いてます。眼鏡で誤魔化してるつもりなのかもしれませんけど」
「初めて言われました」
「アルフレッドさんが推薦したというから皆気にしてないみたいですけど。私は貴方みたいな人信用しませんから。ご主人様に妙な真似をしたら許しませんよ!」
「妙………心強い事です。私も、グローリア侯をお支えしたいと心底から思っておりますので」
渾身の気合を込めて睨めば、笑顔で心強いと言われた。ニーアは、拍子抜けして、思わず攻撃の手が緩む。そして、間の悪い事に、中からミモザが出てきてしまった。
「あ、クライフさん。いらっしゃいませ」
「こんにちは」
「ご案内します。あ、ニーア、厨房でスターチさんが呼んでたわよ」
「…解ったわぁ」
ニーアは笑顔のクライフからむっとした顔で背を向け、厨房へ歩いて行った。
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