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「ジューチ、起きれるか?」

 目を覚ましたらお父さんが部屋にいた。
 僕は横穴の寝床にいて、目を擦りながらゆっくり体を起こす。
 部屋には甘い香りがまだ少し漂っていて、昨日のことを思い出してフワフワした気分になった。

 白珠しらたまちゃんはどこ……?

 とばりを開いても白珠ちゃんの姿はない。
 お父さんは窓を開けて、部屋を換気していた。
 部屋いっぱいえっちな匂いだったはずだから、恥ずかしくなった。

「白珠ちゃんは?」
「知らん。覚えてないのか?」
「眠るとき一緒にいたよ?
 ここに住むって言ってたから、いると思ったんだ」

 戸口が向こうのお家と繋がってるみたいだし、白珠ちゃん、勝手に入って来てるのかな。

「お父さんに聞いてみるねって答えたけど、まだダメだよね?」
「そうだな……母さんにも話してからだ。
 ……ジューチ、あの子とツガイの契約をしたのか?」

 お父さんはヒゲと短いシッポをピリピリさせて、複雑な顔をしてる。
 僕の決断に任せるって言ったけど、お父さんだって僕がよくわからない状態になるのは怖いよね。

「ねぇお父さん、おチンポみるくって何?」

 僕の質問にお父さんは顔をしかめる。
 朝からおチンポさんの話しをする息子にイライラしてる。
 耳やシッポがピシピシと苛立ってる。

「何だそれは」
「あのね、えっとね……僕のおチンポみるくが出ないせいで、白珠ちゃんと契約できなかったの」
「なら、正式なツガイにはまだなってないのか」
「……うん」

 昨晩僕は、たしかに白珠ちゃんと交尾をした。
 契約についてはもうちょっと考えなきゃって思ってたのに、甘い誘惑に勝てなかった。

 それで交尾はしたんだけど、種付けはできなかったんだ。
 白珠ちゃんの『おチンポみるく』を飲んだのに、僕は子種を出せなかった。

「ふむ」

 その話を聞いて、お父さんは台所へ向かう。
 僕も一緒に行こうとしたら、着替えなさいって言われた。
 臭いから光をしっかり浴びろって。
 そんなに臭いかな?
 体をクンクン嗅いだけど、白珠ちゃんのいい香りしかしない。
 あ、お股がムズムズしてきちゃった……


 お母さんはいつものように朝早くお仕事へ行ったらしい。
 お父さんもこれから行くんだと思う。
 僕も情報を得るために講習所へ向かうつもりだ。


 洗浄の光を浴びてから外着に着替えて台所に行くと、朝食が用意されていた。
 いつもならお腹が空いてて飛びつくのに、今日はなんだか食欲がないや。
 席に着いて、お粥を少しすすった。
 食欲がないというか、お腹がいっぱいみたい。

「今日は講習所は休め」
「なんで?」
「光を当てても匂いが取れん。
 発情の匂いを友達に嗅がせる気か?」

 お父さんに言われて僕は自分の匂いをもう一度嗅いだ。

「僕、そんなに臭い?」
「お前のじゃない。あの子の強い香りだ」

 え……甘くていい香りなのに、いけないの?

「これを見ろ。
 お前の部屋に入ったらこうなって直らん」

 言われてお父さんのお股が膨らんでいるのに気付く。

「俺も今日は仕事を休むしかない。まったく」

 それで換気してたんだ……
 お父さんごめんね。



 お父さんは僕の食欲がないことを心配したけど、おチンポみるくのせいだと思うって言ったら納得した。

「それについてはこれに書かれていた。
 母さんがこれを隠したせいで、何のことかわからなかったぞ」

 やれやれとお父さんが昨日の冊子を出してくれた。
 お母さんが持ってた僕の冊子だ。
 お母さんはこれ、僕に読ませたくなかったのかな。


「子種はツガイの養分にもなるようだ」
「おチンポみるくってやっぱり子種なの?」

 おそらくそうだろう、とお父さんは頷いた。
 でもなんで『子種』って言って通じるのに『おチンポみるく』って言うんだろう。
 子種は飲み物じゃなくて、おチンポみるくは子種であって飲み物でもあるから……なのかな。
 異種族の言葉って、意味が少し違ったりして難しい。

「あの子の子種はお前の子種が一ならば、その千倍以上の滋養があるんだろう」
「え……僕、千倍以上のやつ、何度も食べちゃったよ?!」

 青くなった僕をお父さんが理解するのに少し時間がかかった。
 お父さんはやっと頷いて、それから首を振った。

「いや、食事の回数とは別だろう。
 トキワタリの受精に必要な養分の話だ。
 お前がたくさん摂っても余計な分は体外に出ていくはずだ」

 そっか……よかった。
 美味しい木の実をたくさん食べても、次の日には普通にお腹は減るもんね。
 しばらく食事はいらないのかと思っちゃった。

「何度も飲んだのか?」
「え……うん。美味しかったから」

 白珠ちゃん、ピクピクしてて可愛かったし。

 お父さんは咳払いをして、冊子を開いて見せてくれた。
 お母さんがパーン!と閉じたところだった。

「ここの内容って、僕が読んでもいいの?
 お母さん怒らない?」
「……後で俺から話しておく。
 この項には彼らがお前に望むことが書かれていた。
 昨日の今日で交尾をするお前だ。
 さっさと読むべきだろう」


 開いたところには白珠ちゃんの裸体図が描かれていて、細かい説明が書かれていた。

「白珠ちゃん、オスなのに乳首がふたつあるね。
 卵って孵化したら授乳するの?」

 僕とお父さんには乳首はない。
 お母さんには六つある。
 胎生の母親は授乳期間中だけ胸が膨らむって習ったけど、僕は体外育成で育ったから、お母さんのお胸は膨らんだことはないらしい。

 ……あれ?
 白珠ちゃんって孵化してすぐ幼体になったって言ってたよね。
 食事をしなくても生きていけるみたいだし、お乳もいらないのかも。

「ヘソも卵生種にはない特徴だな」
「へぇ……おヘソは『らぶぱわー』を取り込むためにあるんだよね。
 乳首も体内に通じてるなら、同じ仕組みなのかも!」

 ミョウはたしかそう言ってた。
 らぶぱわーを取り込みやすい部位だって。

「あの子のお乳はツガイが飲むためのものらしい」

 え……
 白珠ちゃん、お乳出るんだ。
 乳首って、やっぱりお乳を出すものなんだね。
 でも、ツガイが飲むお乳なの?

「赤ちゃんじゃないのに僕が飲むの?
 お父さんはお母さんの飲む?」

 僕の質問にお父さんは黙ってる。

 え……飲むの?

「美味しい?」
「お乳は出んが、そういう行為をすることもある」

 お父さんが?!

 目を丸くしてたら、お父さんは咳払いをした。


「えっと……らぶぱわーを僕は白珠ちゃんに与えるんだったよね」

 ミョウの説明を思い出しながら、そのあたりを読んでみる。
 おヘソを撫でたり、チューしたり、交尾するのが白珠ちゃんにとってはぜんぶ種付けだったよね。
 子種は絶対には必要なくて、らぶぱわーをたくさん送って受精させるんだよね。

 正式なツガイ……加護の契約って、実際に子種が必要なのかな。
 ミョウはたしか、『合意の交尾』って言ってたよね。
 昨日のは、合意の交尾に含まれなかったのかな。
 子種を出さなきゃ交尾にならないの?
 いっぱいスキスキってしたし、頭の中がフワフワしてて、契約してもいいや~って思っちゃってたけど……


「ここを見ろ」

 お父さんが白珠ちゃんの乳首を指し示した。
 乳首の説明文のところを。

 白珠ちゃんの乳首は、ツガイのためのお乳が出るらしい。
 本当に書いてあった。

「すーぱーみるく……だって。
 あ! 『みるく』って白いお汁のこと?」

 おチンポみるくも『みるく』だもんね!
 その発見にお父さんは曖昧に頷いて、続きを読むように目配せする。

「えっと……ツガイの精力を強めて興奮させる効果がある……だって。
 飲むと発情しちゃうの?
 ……これがどうしたの?」

 お父さんが言いたいことが、僕にはよくわからない。
 僕が知っておくべきことが書かれてるみたいだけども……

 お乳を飲むと発情して、子種を飲むと食事になるんでしょう?

「あ! ずっと交尾してられるね!」

 自分で言って、それから青くなった。


 え……ずっと交尾?


 お父さんと顔を見合わせる。

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