夢現しの桜

星崎 楓

文字の大きさ
8 / 9

第8章 アルバム

しおりを挟む
昼休みになった。僕はいつものように弁当を食べようとすると、突然植田先生が教室に入ってきた。
「長嶋くん、お父様から連絡で、『大事な話があるので、今日の夕方6時に病院に来てください。』とのことだそうよ。」
「父さんから……?」
僕はその内容を聞いて困惑していた。今まで父さんからこんな内容の話を聞いたことがない。一体どんな内容なのだろうか。僕は不安になりながらも、先生からの話を受け止めた。
「長嶋くん、どうしたの?」
「父さんから病院に来るように言われたんだけど……。」
「大丈夫?」
「うん……。」
僕はそう答えると、続けて言った。
「それで……できれば一緒に来て欲しいなって……。」
「私も行っていいの……?」
「うん……。むしろ、来てくれるとありがたいというか……。」
僕は少し照れながらそう言った。
「わかった。少し遅くなるけど、後から追いかけて行くね。」
「ありがとう……。」
僕はそう言うと、午後の授業を受けてから、早速病院に向かった。
病院に着くと、すぐに受付に向かい、父さんの名前を伝えた。しばらく待つと、看護師さんがやってきた。
「こちらへどうぞ……。」
僕は言われるがままについていくと、エレベーターに乗った。そして、3階にある病室の前に案内された。扉を開けると、ベッドの上に父さんが座っているのが見えた。僕は父さんに駆け寄ると、挨拶をする。
「父さん、来たよ……。」
「おお、よくきたな……。」
父さんは嬉しそうにそう言うと、僕に椅子に腰掛けるよう促す。僕はそれに従うと、父さんの向かい側に腰掛けた。父さんは僕が椅子に腰掛けるのを確認すると、話し始めた。
「それで……話というのはだな……。」
「う、うん……。」
僕は緊張しながら返事をすると、父さんの言葉を待つ。父さんは少し間を置くと、ゆっくりと言葉を続けた。
「実は……この病院で入院することになったんだ……。」
「……え?」
僕は思わず聞き返してしまった。父さんは申し訳なさそうに話を続ける。
「持病が悪化してしまいそうでな。早めに手術を行うことにしたんだ。」
「そっか……。」
僕は安堵のため息をついた。
「でも……どうして急に?」
「まあ……色々あってな……。」
父さんは言葉を濁すと、僕に理由を説明しようとしなかった。僕は少し気になったが、あまり深くは聞かないことにする。
「それで……しばらくは家に帰れないから、お前に渡しておきたいものがあるんだ……。」
「えっ……?」
「これだ……。」
僕は渡されたものを見て驚いた。それは、一冊のアルバムだったのだ。僕はそれをゆっくりと開くと、中身を確認した。そこには家族全員の写真がたくさん貼られている。写真の真ん中には僕が写っており、その隣には母さんが写っている。僕達は楽しげに笑っていた。父さんはその写真を見ながら、懐かしむように話す。
「これは……俺達が初めて出会った時の写真だ……。」
「……え?」
僕は驚いて写真を見直す。確かに父さんと母さんは見覚えのある顔をしている。僕はさらにアルバムをめくっていく。すると、そこには生まれたばかりの僕の写真と、一人の少女が写っている写真があった。その少女の顔に見覚えがあった。
「……え?」
僕はその顔を見ると、動揺が止まらなかった。なぜなら、その顔は夢の中で見た女の子の顔にそっくりだったのだ。僕は恐る恐る父さんに話を聞いた。
「父さん、これ、って…」
「あぁ、それは…」
「教えてよ、父さん!」
僕はどうしても彼女のことが知りたかったので、少し厳しく言う。
「その黒髪の白いワンピースの女の子が…お前のお姉さんだ……。」
「お姉ちゃん……?」
僕は呆然としながらも、なんとか理解しようと努力する。僕は夢の中で会った女の子の弟ということなのか。
「えっと……名前は?」
「……『桜』だ…。」
「……え?」
僕はその名前を聞くと、なぜか胸が締め付けられるような感覚に襲われた。そして、その瞬間、僕は思い出した。あの子の名前を。
「何でそんなことずっと黙ってたんだよ!」
「それは…、その……すまない!!いつかは言わないといけないと思っていたんだが、タイミングがなかったんだ…!」
僕は落胆すると、俯いた。すると、そんな僕の様子に気付いたのか、父さんは僕に話しかけてきた。
「もしかして、桜のこと、何か知っているのか?」
「え?……いや、初めて知ったよ。」
僕は咄嵯に嘘をつくと、誤魔化そうとした。しかし、うまくごまかせなかったのか、父さんは僕に詰め寄ってきた。
「教えてくれ!何か、知っているのか?」
「知らないよ何も!」
「教えてくれ!何でもいいから!」
「何も知らないって言ってるだろ!」
僕はそのまま走って部屋を出て行った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

不思議な夏休み

廣瀬純七
青春
夏休みの初日に体が入れ替わった四人の高校生の男女が経験した不思議な話

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

処理中です...