若い聖女が現れたから私はお役御免！？それならこっちから婚約破棄します！ ～今更私の力に気づいて戻ってきてと言ってももう遅いです～

光の正体

あぁ、また私はこの場所に来てしまった。
昨日もそんな事を思った気がする。
もしかしたら、この声の正体の者に呼ばれているのかもしれない、なんて事を考えながら
二人がこの場所に来るのを待っていた。
あの日から数週間、二人は答えが出たのだろうか、いや出ていなくても
あの二人なら何かを掴んでいるかもしれない。
湖に映る自分の姿をぼんやりと眺めながら、そんな事を考えていた。
すると突然強い風が吹き荒れる。
木々が揺れ動き、湖に波紋が広がり……風が何かを知らせるようにざわざわと騒ぎ出した。
私はその風の音に耳を傾けて静かに目を閉じる。
「二人の気配……それからこれは……」
沙羅とフィリスの気配に交じり、知らない気配を感じる。
それは、あの日湖で見たあの精霊の様な子の気配にとても似ていた。
もしかして、あの子も来ている？そう思った瞬間、また強い風が吹き荒れて私の髪を大きく揺らした。
「ルカ！遅くなってごめんなさい！少しだけ生徒会のお手伝いをしていて」
そう言ってこちらに走ってくるのは沙羅、そしてその後ろを追いかけてくるようにフィリスの姿もあった。
私はそんな二人に小さく手を振って微笑むと、二人が私の傍までやってくる。
久しぶりと言うほどでもないが……久しぶりに会う二人は少し大人びて見える。
「ふふ、お疲れさまでした。さぁ、座ってください」
私がそう言うと、二人は芝生の上に腰掛けた。
そして、学園生活が楽しいとかこの間生徒会の皆と遊びに行ったとか
そんな他愛ない話を三人で交わしながら、私はあの気配の事がずっと気になっていた。
私は懐かしいと言う感情で、勝手にあの気配の正体が優しいと思っていたけれど
もし、この二人に危害を及ぼす存在だったら……
そんな考えが私の頭をよぎる。
もし、そんな事になってしまったら私が二人の事を守ろう。
私は心の中でそう強く誓ったのだった。
「ルカ？難しい顔してどうしたの……？」
「えっ？そんな顔してましたか……？」
「えぇ、何か新しい悩み事でも？」
「いいえ、二人が本当に成長したな、と……思いまして」
私の言葉に沙羅とフィリスはお互いの顔を見合せ、照れくさそうに微笑んだ。
その姿がとても可愛らしくて自然と私の頬も緩んでしまう。
「それで、この間出した問いの答えは……出ましたか？」
私がそう問いかければ、辺りにピリッっと緊張が走った。
そして、沙羅とフィリスはお互いに見つめ合い、コクっと小さく頷くと私の方を向き、真剣な眼差しで見つめてきた。
その二人の表情に私は思わずゴクリと息をのむ。
そして、二人が同時に口を開こうとしたその瞬間。
突然強い風が吹き荒れ、私の髪が大きく揺れ動くと同時に二人はその場に倒れてしまった。
「沙羅！フィリス！」
辺りを見回すが、何かがいる気配や悪意の様なものは感じられない。
さっきの風は一体……そんな事を考えながら私は二人の傍へ駆け寄り、体を起こす。
「良かった、怪我は無いみたい……」
恐らくだが、ここに漂う強力な魔力にあてられて気を失ったのだろう。
私は二人をそっと芝生の上に寝かせると、周りの気配を探る。
「やっぱり……この間の……」
けれど、何か引っかかる……
思い出せないけれど、何となくあの子はこんな事をするような子じゃないと……そう思える。
すると、私の前に小さな光が現れ始めた。
そして、その光は徐々に大きくなり人の形へと姿を変えていく。
「あなたは……」
『ごめんなさい……ルカ……』
思い出した、何で忘れていたいたのだろう。
この子は、私達の事を何回も助けてくれて、守ってくれて……
私の大切な友達……