デッドエンドで処刑された悪役令嬢は、魔王様の手により蘇って溺愛されるそうです

yui

文字の大きさ
13 / 17

12 魔王様花嫁姿に見惚れる

しおりを挟む
「イリアって何でも出来るのね·······」

城のダミーの部屋にて、ローズはイリアにウェディングドレスの着付けとメイクなどを軽くされていた。教会の控え室ではなくここにするのは、余計な邪魔が入らないようにするためだ。

イリアの器用さに驚くローズにイリアは苦笑気味に言った。

「人間に関してはそれなりに勉強しましたから。こうして魔王様やローズ様のお役に立てて何よりです」
「ありがとう。でも、ごめんね。私の我儘で結婚式には呼べなくて」

ローズとしては、イリアくらいなら呼んでもいいと一瞬は思ったが········それでも、自分と魔王だけの時間に誰かを入れたくなかったのだ。そんなローズの独占欲を分かってるイリアは首を横に振って言った。

「魔王様とローズ様の式ですから。私達のことは気になさらず楽しんできてください」
「うん······ありがとうイリア」
「こちらの台詞です。こうして少しでもお二人のお役に立てるならこれ以上嬉しいことはありませんから」
「ふふ、イリアってお姉さんみたい」

何でも出来て気が利く。そんな風にも思えた。まあ、ローズには姉はいないのだが·······それでも、ローズからしたら元の家族よりも家族に近いとさえ思えたのだ。






「魔王様、お待たせしました」
「準備終わった·········の········」

途中で言葉が途切れてしまうくらいに魔王はローズに魅入っていた。金髪と白いウェディングドレスの対比がなんとも鮮やかで芸術的な美しさを出しつつも、ローズのほんのりとしたメイクで可愛らしさも忘れてはいなかった。そう、魔王はローズに見惚れてしまっていたのだ。

「あの·······似合ってない·····かな·······?」
「いや、ごめん········正直綺麗すぎて見惚れていたよ。凄く良く似合っているよ」
「そうかな?えへへ·······」

嬉しそうに微笑むローズ。その笑みにすらドキッとさせられる。それほど魔王から見てローズは魅力的だったのだ。

「魔王様も·······似合ってるね」
「そうかな?俺はこういうのは似合わないと思うけど········ローズの方が似合ってるよ綺麗だ」
「はぅ········で、でも、魔王様カッコイイもん」

タキシード姿の魔王に正直ローズもかなりドキドキしていた。普段とは違う装いもあるけど、いつもの野性的と知的を混ぜたような感じとは違って、紳士のようなカッコ良さに磨きがかかったと感じるのだ。

「まあ、でもローズに気に入って貰えたならこの格好をして良かったよ」
「·······私も。こうして綺麗なウェディングドレス着れて本当に嬉しい。それに······魔王様のお嫁さんになれるのも嬉しい」
「ローズ·······」
「私ね、家族に憧れていたの。愛し合ってる夫婦と愛情持って育てられる子供。私にはそのどれも遠い世界だったから········」

記憶にあるのは今でも思い出すと震えてしまうほどの辛い記憶。魔王といるとその過去を忘れられるが······それでも、消せない心の傷跡。そんな傷を察して魔王はそっと手を握ると精一杯微笑んで言った。

「これからは違う。ローズは俺のお嫁さんになるんだから。子供だって作ろう。男の子でも女の子でもローズに似て可愛くなると思うよ。それに·······もう、絶対にローズに辛い思いはさせない。そんな暇がない程に俺はローズを愛するよ」

自分のためにここまで言ってくれる魔王をローズは心底愛おしく思って微笑んで言った。

「······うん。ありがとう魔王様。でも、男の子ならきっと魔王様に似てカッコよくなると思う」
「そうかな?俺はローズに似ると思うけど·······まあ、それは後でじっくり語ろうか。いこう」
「うん」

そうして2人は教会へと転移するのだった。






しおりを挟む
感想 19

あなたにおすすめの小説

愛する殿下の為に身を引いたのに…なぜかヤンデレ化した殿下に囚われてしまいました

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のレティシアは、愛する婚約者で王太子のリアムとの結婚を約1年後に控え、毎日幸せな生活を送っていた。 そんな幸せ絶頂の中、両親が馬車の事故で命を落としてしまう。大好きな両親を失い、悲しみに暮れるレティシアを心配したリアムによって、王宮で生活する事になる。 相変わらず自分を大切にしてくれるリアムによって、少しずつ元気を取り戻していくレティシア。そんな中、たまたま王宮で貴族たちが話をしているのを聞いてしまう。その内容と言うのが、そもそもリアムはレティシアの父からの結婚の申し出を断る事が出来ず、仕方なくレティシアと婚約したという事。 トンプソン公爵がいなくなった今、本来婚約する予定だったガルシア侯爵家の、ミランダとの婚約を考えていると言う事。でも心優しいリアムは、その事をレティシアに言い出せずに悩んでいると言う、レティシアにとって衝撃的な内容だった。 あまりのショックに、フラフラと歩くレティシアの目に飛び込んできたのは、楽しそうにお茶をする、リアムとミランダの姿だった。ミランダの髪を優しく撫でるリアムを見た瞬間、先ほど貴族が話していた事が本当だったと理解する。 ずっと自分を支えてくれたリアム。大好きなリアムの為、身を引く事を決意。それと同時に、国を出る準備を始めるレティシア。 そして1ヶ月後、大好きなリアムの為、自ら王宮を後にしたレティシアだったが… 追記:ヒーローが物凄く気持ち悪いです。 今更ですが、閲覧の際はご注意ください。

主人公の義兄がヤンデレになるとか聞いてないんですけど!?

玉響なつめ
恋愛
暗殺者として生きるセレンはふとしたタイミングで前世を思い出す。 ここは自身が読んでいた小説と酷似した世界――そして自分はその小説の中で死亡する、ちょい役であることを思い出す。 これはいかんと一念発起、いっそのこと主人公側について保護してもらおう!と思い立つ。 そして物語がいい感じで進んだところで退職金をもらって夢の田舎暮らしを実現させるのだ! そう意気込んでみたはいいものの、何故だかヒロインの義兄が上司になって以降、やたらとセレンを気にして――? おかしいな、貴方はヒロインに一途なキャラでしょ!? ※小説家になろう・カクヨムにも掲載

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

転生したら悪役令嬢になりかけてました!〜まだ5歳だからやり直せる!〜

具なっしー
恋愛
5歳のベアトリーチェは、苦いピーマンを食べて気絶した拍子に、 前世の記憶を取り戻す。 前世は日本の女子学生。 家でも学校でも「空気を読む」ことばかりで、誰にも本音を言えず、 息苦しい毎日を過ごしていた。 ただ、本を読んでいるときだけは心が自由になれた――。 転生したこの世界は、女性が希少で、男性しか魔法を使えない世界。 女性は「守られるだけの存在」とされ、社会の中で特別に甘やかされている。 だがそのせいで、女性たちはみな我儘で傲慢になり、 横暴さを誇るのが「普通」だった。 けれどベアトリーチェは違う。 前世で身につけた「空気を読む力」と、 本を愛する静かな心を持っていた。 そんな彼女には二人の婚約者がいる。 ――父違いの、血を分けた兄たち。 彼らは溺愛どころではなく、 「彼女のためなら国を滅ぼしても構わない」とまで思っている危険な兄たちだった。 ベアトリーチェは戸惑いながらも、 この異世界で「ただ愛されるだけの人生」を歩んでいくことになる。 ※表紙はAI画像です

兄様達の愛が止まりません!

恋愛
五歳の時、私と兄は父の兄である叔父に助けられた。 そう、私達の両親がニ歳の時事故で亡くなった途端、親類に屋敷を乗っ取られて、離れに閉じ込められた。 屋敷に勤めてくれていた者達はほぼ全員解雇され、一部残された者が密かに私達を庇ってくれていたのだ。 やがて、領内や屋敷周辺に魔物や魔獣被害が出だし、私と兄、そして唯一の保護をしてくれた侍女のみとなり、死の危険性があると心配した者が叔父に助けを求めてくれた。 無事に保護された私達は、叔父が全力で守るからと連れ出し、養子にしてくれたのだ。 叔父の家には二人の兄がいた。 そこで、私は思い出したんだ。双子の兄が時折話していた不思議な話と、何故か自分に映像に流れて来た不思議な世界を、そして、私は…

冗談のつもりでいたら本気だったらしい

下菊みこと
恋愛
やばいタイプのヤンデレに捕まってしまったお話。 めちゃくちゃご都合主義のSS。 小説家になろう様でも投稿しています。

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

恋心を封印したら、なぜか幼馴染みがヤンデレになりました?

夕立悠理
恋愛
 ずっと、幼馴染みのマカリのことが好きだったヴィオラ。  けれど、マカリはちっとも振り向いてくれない。  このまま勝手に好きで居続けるのも迷惑だろうと、ヴィオラは育った町をでる。  なんとか、王都での仕事も見つけ、新しい生活は順風満帆──かと思いきや。  なんと、王都だけは死んでもいかないといっていたマカリが、ヴィオラを追ってきて……。

処理中です...