レビラトの花嫁

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3 嫁さん夢を語る

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それからも、毎日のように見舞いに来てくれた美星さん。なんとなく距離感が近くなるが、勘違いはしない。昔から他人に好意を持たれたことなどないので特にそうだが、俺なんかに好意的なのはきっと彼女がどこまでも優しいからで、その優しさを勘違いしてはいけないと思う。

「清隆さんは彼女さんはいらっしゃらないのですか?」

だから、この質問もきっと単なる興味本位なのだろうと結論付けて答えた。

「お恥ずしながら、産まれてこの方1度も彼女が出来たことはありませんね」
「そうでしたか…凄く優しいし、カッコイイので不思議ですね」
「まあ、あの兄貴の影にいたので、俺が好きになった女の子は兄貴に取られてしまうからというのもあるんですが」

まあ、もう気にしてないが、それでも俺なんかを好きになる人は絶対いないだろうと断言出来る。こんなに醜くて歪んでるんだから…そう思いそう言うと美星さんは首を横に振って言った。

「清隆さんはあの人とは違います。凄く優しいしカッコイイです。だから自信を持ってください」
「…ありがとうございます。そういえばお仕事の方は大丈夫なんですか?」
「えっと、少しだけ大変ですがなんとか」
「何か手助け出来ることがあったらなんでも言ってください」

そう言うと美星さんは少しだけ照れくさそうに言った。

「あの、清隆さん。笑わないで聞いてくれますか」
「なんでも」
「実は、私本当は専業主婦になりたいんです」
「素敵な夢だと思います」

女性も働く時代でも、家庭を守れる人は本当に凄いと思う。実際俺は一人暮らしでも物凄く大変な思いをしてるし。家事とかは苦手だ。

「あの人はそれを言うと怒るので共働きでしたけど…でも、素敵な人のお嫁さんとして家を守りたいんです」
「美星さんなら、絶対に出来ますよ。美人ですし、凄く優しいですから」
「…清隆さんは、そんな妻だったらどうします?」

そう言われて深くは考えずに答えた。

「いつも家事をしてくれることに感謝を込めて家族サービスしたいですかね?俺は家事全般苦手なので美星さんみたいな奥さんがいたら本当に嬉しいですね」

そう答えると何故か顔を赤くする美星さん。赤面顔も可愛いなぁと思っていると、美星さんは言った。

「あの…娘に今度会って貰えますか?」
「え?構いませんが…俺なんかが会っても大丈夫なんですか?」
「清隆さんなら、あの子のことをなんとか出来るかもしれないので…迷惑ならすみません」
「…もしかして、兄貴の暴力で大人に恐怖心でも芽生えてるんですか?」

黙って頷くので、思わず拳を握りしめてしまいそうになる。兄貴はどこまで…そう思ってからいやいや違うと喝をいれる。これは俺がもっと早くに気づければ避けれた事態。ならば、俺に出来ることはなんでもしようと思い頷いて言った。

「わかりました。俺に出来ることは限られますが…それでも、少しでも力になりたいので会わせてください」
「ありがとうございます……本当にいつも、ありがとうございます」
「いえ、俺にとっても大切なことですから」

そう言うと何故かまた照れる美星さん。表情がころころ変わって本当に可愛らしいと思いつつ…少なからず俺もこの時にはもう美星さんに惹かれてしまっていたのだろうなぁと、後に思うのだった。




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