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82 指輪と記念日
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「ふぅ・・・」
一度休むために外に出ると珍しく疲れたように一息つくサーシャを見て俺は聞いた。
「大丈夫?もしかして体調が悪い?」
「あ、大丈夫です。ただ、久しぶりの夜会で少しだけ疲れただけなので。旦那様は大丈夫ですか?」
「私も夜会は疲れるが、サーシャと一緒だから平気だよ」
そう言うとサーシャは嬉しそうに微笑んでから言った。
「私も、こうして旦那様と一緒に夜会に出るのは何年ぶりかわからないので楽しいです。ただ、出来れば私は旦那様と二人きりの時間も増やしたいですが・・・」
「そんな可愛いお願いなら喜んでだよ。ただ子供達の相手もしたいからそこは少しだけ時間をもらうよ」
「はい。旦那様ならそう仰ると思ってました」
そう笑ってから無言で二人で夜空の月を見上げる。前世の記憶と違う世界でも月が一緒というのはかなりラッキーだろう。こうして好きな人と一緒にみれるならなおいい。
「サーシャ」
「はい」
「私は幸せ者だ。君のような可愛い妻を持ち、君に似た可愛い子供達に囲まれている。こんな幸せを私はとても嬉しく思う。だからこそ言いたいことがあるんだ」
そう言ってから俺はサーシャを真っ直ぐに見つめてから言った。
「サーシャ、左手を出して目を瞑ってくれるか」
いきなりの台詞にサーシャは少しだけ驚いていたが迷わず目を瞑って左手を出してくれた。白くて華奢で綺麗なその手をゆっくりと触ってから俺は胸元から本日のために拵えた、新しく発掘した白い鉱石を加工して作った指輪を左手の薬指にはめてから言った。
「もう大丈夫だよ」
「はい・・・あの、旦那様。一体ーーー」
と、そこでサーシャは左手の薬指の指輪を見て驚きの表情を浮かべてから聞いてきた。
「旦那様、これは・・・」
「結婚記念日というやつだ。サーシャと結婚式をあげたのは丁度今日だったからね」
まあ、その当時のカリスさんはサーシャとの結婚を全く幸せとは思っていなかったが、それでも、俺の人格ならこういう些細なイベントでも逃さずにやる。サーシャの誕生日とは別枠で用意した指輪は今日のいつ頃渡そうか悩んだが、夜会の途中がいいと思ったので今渡したのだった。
「本当ならもっと早くにこういったことをしたかったけど、照れくさくてね。それに私がなくしてしまった結婚指輪の代わりとは言わないが、二人でお揃いの物を着けたくてね」
前のカリスさんは自分の結婚指輪を無くしてしまったことに特に何も思わなかったようだが・・・いや、普通それはヤバいでしょという気持ちになったし、それに、折角ならサーシャには俺の人格であげたペアリングを着けて一緒だという気持ちを強くしたいのだ。
「無理強いはしないが、受け取って貰えるかな?」
さっきから黙っているサーシャにそう聞くとサーシャは少しだけ涙ぐみながら言った。
「嬉しいです・・・旦那様に、こんな風に指輪を渡して貰えるなんて、ないって思ってました。本当に夢みたい・・・」
「夢なら覚めた後にもう一度指輪をはめてあげるよ」
「はい・・・あの、私からもお願いしてもいいですか?」
「なんでも」
「私にも旦那様に指輪を着けさせてください。旦那様の分も持ってるのですよね?」
「ああ、もちろん」
そう言ってから俺はサーシャに指輪を渡す。ちなみにこの指輪、ペアリングらしく、二つ組み合わせると花びらの形になるようになっており、組み合わせたら白くて綺麗な花びらが完成するのだが、そんなことはサーシャなら気づいていそうなので普通に俺の分をサーシャに渡す。
「では、旦那様。目を瞑ってください」
そう言われて目を瞑って左手を出すと薬指に指輪の感触があり、目をあけると、サーシャが心から嬉しそうに笑って言った。
「旦那様。ありがとうございます。毎日着けます」
「ああ、私もそうするよ。それから・・・愛してるサーシャ。これからも私の妻でいてくれ」
「はい・・・」
夜空の月が照らすバルコニーで互いに近づいてキスをする。そうしてサーシャとの時間を楽しめたので今回の夜会は成功と言えるだろう。そんな風に思うのだった。
一度休むために外に出ると珍しく疲れたように一息つくサーシャを見て俺は聞いた。
「大丈夫?もしかして体調が悪い?」
「あ、大丈夫です。ただ、久しぶりの夜会で少しだけ疲れただけなので。旦那様は大丈夫ですか?」
「私も夜会は疲れるが、サーシャと一緒だから平気だよ」
そう言うとサーシャは嬉しそうに微笑んでから言った。
「私も、こうして旦那様と一緒に夜会に出るのは何年ぶりかわからないので楽しいです。ただ、出来れば私は旦那様と二人きりの時間も増やしたいですが・・・」
「そんな可愛いお願いなら喜んでだよ。ただ子供達の相手もしたいからそこは少しだけ時間をもらうよ」
「はい。旦那様ならそう仰ると思ってました」
そう笑ってから無言で二人で夜空の月を見上げる。前世の記憶と違う世界でも月が一緒というのはかなりラッキーだろう。こうして好きな人と一緒にみれるならなおいい。
「サーシャ」
「はい」
「私は幸せ者だ。君のような可愛い妻を持ち、君に似た可愛い子供達に囲まれている。こんな幸せを私はとても嬉しく思う。だからこそ言いたいことがあるんだ」
そう言ってから俺はサーシャを真っ直ぐに見つめてから言った。
「サーシャ、左手を出して目を瞑ってくれるか」
いきなりの台詞にサーシャは少しだけ驚いていたが迷わず目を瞑って左手を出してくれた。白くて華奢で綺麗なその手をゆっくりと触ってから俺は胸元から本日のために拵えた、新しく発掘した白い鉱石を加工して作った指輪を左手の薬指にはめてから言った。
「もう大丈夫だよ」
「はい・・・あの、旦那様。一体ーーー」
と、そこでサーシャは左手の薬指の指輪を見て驚きの表情を浮かべてから聞いてきた。
「旦那様、これは・・・」
「結婚記念日というやつだ。サーシャと結婚式をあげたのは丁度今日だったからね」
まあ、その当時のカリスさんはサーシャとの結婚を全く幸せとは思っていなかったが、それでも、俺の人格ならこういう些細なイベントでも逃さずにやる。サーシャの誕生日とは別枠で用意した指輪は今日のいつ頃渡そうか悩んだが、夜会の途中がいいと思ったので今渡したのだった。
「本当ならもっと早くにこういったことをしたかったけど、照れくさくてね。それに私がなくしてしまった結婚指輪の代わりとは言わないが、二人でお揃いの物を着けたくてね」
前のカリスさんは自分の結婚指輪を無くしてしまったことに特に何も思わなかったようだが・・・いや、普通それはヤバいでしょという気持ちになったし、それに、折角ならサーシャには俺の人格であげたペアリングを着けて一緒だという気持ちを強くしたいのだ。
「無理強いはしないが、受け取って貰えるかな?」
さっきから黙っているサーシャにそう聞くとサーシャは少しだけ涙ぐみながら言った。
「嬉しいです・・・旦那様に、こんな風に指輪を渡して貰えるなんて、ないって思ってました。本当に夢みたい・・・」
「夢なら覚めた後にもう一度指輪をはめてあげるよ」
「はい・・・あの、私からもお願いしてもいいですか?」
「なんでも」
「私にも旦那様に指輪を着けさせてください。旦那様の分も持ってるのですよね?」
「ああ、もちろん」
そう言ってから俺はサーシャに指輪を渡す。ちなみにこの指輪、ペアリングらしく、二つ組み合わせると花びらの形になるようになっており、組み合わせたら白くて綺麗な花びらが完成するのだが、そんなことはサーシャなら気づいていそうなので普通に俺の分をサーシャに渡す。
「では、旦那様。目を瞑ってください」
そう言われて目を瞑って左手を出すと薬指に指輪の感触があり、目をあけると、サーシャが心から嬉しそうに笑って言った。
「旦那様。ありがとうございます。毎日着けます」
「ああ、私もそうするよ。それから・・・愛してるサーシャ。これからも私の妻でいてくれ」
「はい・・・」
夜空の月が照らすバルコニーで互いに近づいてキスをする。そうしてサーシャとの時間を楽しめたので今回の夜会は成功と言えるだろう。そんな風に思うのだった。
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