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6話

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男性が案内してくれたおかげで王宮に到着しました......が誰も出迎えてくれることはありませんでしたわ。

別にあからさまなお出迎えはいらないにしても、これから仕えることになる主が来たんですから考えて行動して欲しいですわね。

少なくとも王宮のメイドくらいは待機していないと......本当に非常識ですわね。

中に入っても誰も案内に来ませんし、このまま男性が案内でもしてくれるのかしら?

ですが仮にも次期皇妃.....いや、そうじゃないにしても女性の案内を男性に任せるなんて......。

思わず眉をひそめていると、私たちの様子に気付いたのか

「申し訳ございません.....っ!現在バタついておりまして......」

男性は冷や汗をかきながら私に頭を下げてきました。

おかしいですわね。

バタついているというのに他国から人を呼びつけることはするんですの。

何か矛盾していますわ。

そう思っていると

「お前が俺の嫁になる女か?」

という声が聞こえてきました。

この一言で分かりますわ。

プライドだけは物凄く高い人だ、ということが。

声のした方を向くとそこには黒い髪の毛に金色の目をした男性が立っていました。

腕には小柄で金色のふわふわな髪の毛をした女性を抱いていますわ。

俺の嫁になる、ということはこの人が皇太子ということで間違いないでしょう。

そう思っていると、女性が腕に引っ付いたまま私に近付いてきました。

女性は私のことを物凄い形相で睨んでいますし.......皇太子は見えてないんでしょうか?

なんてことを思っているうちに皇太子は私の前で止まると

「ふーん.......」

なぜか上から下まで舐めるように見てきました。

なんですの!?

物凄く気持ち悪いですわ!

と言いそうになったのを必死に堪えていると

「顔はそこそこ良いじゃねぇか」

.......は?

なんですって?

まさか、自分だってそこそこの顔のくせに人のことを品定めしましたの?

ここまでくると怒りを通り越して呆れますわ。

はっきり言いますと皇太子くらいの顔の人なんて我が国に沢山います。

実際にこんな人より私のお兄様達の方が圧倒的にカッコいいですし、動きの一つ一つに品があります。

毎日毎日、無駄に美形な兄弟に囲まれていた私にとって、こんな皇太子の見た目には魅力もありません。

正直、嫌悪感しかありませんわ。

そんな人にしかも初対面で、そこそこだな、って。

いい加減に切れてもいいんじゃないでしょうか?

という考えが頭によぎりましたが少し冷静になりましょう。

ふぅ...ダメよ。ここで騒いだらお父様に迷惑がかかりますから今は大人しくしておいた方が良いわ。

そう思ってなるべく目を合わせないように視線を逸らすと

「殿下、この人は?」

あぁ、忘れていましたわ。

てっきり皇太子の付属品だから喋らない人かと思っていましたもの。

男性から見ると可愛らしく見える首の傾げ方ですわね。

あれは絶対計算済みですわ。

質問してきた女性に対して皇太子は

「俺の嫁だ」

とだけ短く答えると

「え?じゃあこの人が噂の?」

そう言って目を見開きました。

噂、ですか。

一体何の噂かはわかりませんが、絶対隣国からきた皇太子の嫁だと知っていて聞きましたよね。

そうじゃなきゃ私を睨んでくるわけがありませんもの。

ということは、今の驚きは噂の人だ!とかではなく、皇太子が普通の顔をして嫁と答えたことについての驚きですわね。

しかもこの様子を見ればわかりますが私を迎えに来なかった理由はその女性ですか。

はぁ.....出会って5分足らずで、すでに帰りたくなってきました。
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