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戦争編〜第四章〜

第188話 想い人と会うまで

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 私とエリィは中庭から飛び出して、否、逃げ出した。

 エルフの索敵範囲から逃れるため?
 魔法の巻き添えを食らわないため?

 いや、違う。

 では何故か。


『はーーーっはっはっはっ! 小童が俺に勝てると思うなよ! 早々くたばってくれるな、歯ぁ食いしばって耐えろ!』
『このっ、エルス族の例外がーーっ!』


 私の幼少期の魔法授業を思い出して胃がキリキリし始めるからです。

 ……まじあいつ脳筋な方法でしか魔法使わねーーんだもん。やられる方は自然と防御が鍛え上げられるというね。あの馬鹿エルフ。

 こう、上手いこと魔導具を破壊した後にオレンジのエルフがフェヒ爺殺してくれないかな。

「エリィ」
「なんですの?」
「あれがフェヒ爺。エリィのだーいすきなエルフ」
「ですわね! 人目見た時に気付きましたわ! 魔法は全く理解できませんけど、凄いってことだけは分かりますわ」

 大興奮、と言った様子で鼻息荒くエリィが笑顔を見せる。
 なんだ、気付いてたんだ。いやまあ会話に名前があったから気付くだろうけど。その割に執着しないからてっきり気付いてないもんだとばかり。

「……別に、フェヒ爺の所に居ても良きですぞ」
「え?」

 エリィと一緒に居たのは彼女が心配だったというのもある。フェヒ爺なら傷一つ付けさせないだろうし、お守りくらい片手間にもならないだろう。

「ずっと会うすたかったのでしょう」

 エリィがフェヒ爺に憧れているというか、崇拝しているというか、どう形容しようとも簡単に置いておける事が難しいレベルの感情を抱いているのは知っている。結構な暴走するし。

 そんな想いエルフがいる少女はちょっと考えたあと私に語った。

「確かに私はフェフィア様に会いたかったし弟子入りのお願いもしたいと今も尚思っていますわ」
「うん」
「でも、今は」

 エリィは眩しい位の笑顔で私を見た。

「リィンさんの方が、大事っ!」

 裏表もなければ嘘も全然つけない激情型のバブちゃんは、疑う余地も無いほど心からの本音でそう言ったのだろう。

「っはぁ~~~~~。エリィってさぁ」

 私は心からの本音で言い放つ。

「──だから呆れるくらいバブちゃんなのですぞね」
「なんですって!?」

 真顔だ。多分この国に来て一番真顔だったと思う。
 ぷんぷん怒り散らすエリィをからかいながら、私は中庭のエルフ達の会話を思い返す。

『トリアングロの頭は謁見の間にいて、トリアングロはクアドラードの前線を押し下げて攻撃をし、裏から船で王城まで行き、船の上から攻撃を仕掛ける、って事か』

 今ここで知れたって、クアドラード王国に伝える術なんて無い。精々空に向かってヒントになる様な魔法を打ち、それをパパ上が察してくれるより他ないと思う……。もしくは私が今から超高速サイコキネシスで飛行するか。
 ……いやこの案は却下だな。十何年も飛んだ経験があるならともかく半年程度しか飛行技術を重ねてない。

 うん、決めた。

「ルナールぞ探す」

 とりあえず何も考えないことを決めた!
 私は私の目的を果たす。私のことが終わった後に、国のことを考えよう。だって私、ただのFランク冒険者だもん!

 だから私がどれだけ暴れたって国に責任は取らせないし国から制限もさせない。私は、自由だ。


 屋上から中庭まで叩き落とされた私とエリィ。フェヒ爺に逃がされたと言っても流石に1階にか逃げられなかった。
 国王がいる謁見の間が一体どこなのか分からないけど、きっと2階……いや最上階だろう。

 だが、明らかに重厚な扉が目の前にあった。
 何かあるという感じしかしない。恐らくトリアングロ城の重要な部屋なのだろう。

「エリィ、外で警戒ぞお願いするです」
「えっと、誰か来たら教えるくらいしか出来ませんわよ」
「上等」

 重たい扉に手を掛けて、思いっきり押す。
 うっ、あんまりにも重たすぎる。私、純粋な腕力勝負は弱いんだよね……。

「〝リミットクラッシュ〟」

 魔封じが未だに有効な以上、限界は破壊しなければならない。フェヒ爺が私の魔力を回復してくれたけど、魔力回復と魔法行使では話が違う。
 魔力を消費して私が魔法を使うための基盤を作らなきゃならないんだ。

 〝サイコキネシス〟

 一度触れた扉は、私の魔法で簡単に動かす事が出来た。

──ギ、ギギギ……

 歪な音をたてて開かれた扉の先は暗かった。
 窓の外側から入ってくる微かな光が部屋の机の上にある書類を見せてくれる。
 ……あれは、一体。

 私が部屋に一歩踏み込んだ。

 ──その瞬間。

──ガラララ! ガシャンッ!

「っ!?」
「え、リィンさん!?」

 私とエリィを分断する様に仕掛け扉が上から降りた。
 やばい! とりあえず万能サイコキネシスで動かしたら何とかなるかもしれない! 触れて…………!

「リィンさん!? リィンさん!」

 ……そんなことも出来ない、一歩でも足を動かせない物が目に入ってしまったんだよなぁ。

「エリィ……。ごめん私、時間ぞ食すかも」
「どういう意……いや本当にどういう意味ですの!? 中に何がありましたの!?」

 パッ、と部屋の中に灯りがつき、部屋の中を確認してしまった私が冷や汗をかきながらエリィに言葉をかけた。扉の外からぴーぴー叫ぶ声が聞こえてくる。
 姿は見えない。というか、居なくて良かったね。チェンジ。エリィを先に行かせるべきだった。

 うっ、胃が、めちゃくちゃキリキリしてきた……。

「……追いかけ回すよりは狙い定めそうな場所で待機してた方が可能性が高い、と踏んだが」
「いやぁ、まさか本当にかかるとは。あ、そちらの扉が電流が流れるので触れない方がいいですよ! 既に私のカジノで味わったでしょう、意識の飛び方は」
「よぉ姫さん」

 部屋の中には、大きな円卓が一つ。窓は外に面しており、分厚い様子が見て取れるが高い位置に存在していて、侵入を防ぐためだったのだろう。机の上には無造作に置かれた書類がいくつかあるけれど、内容は大したことがないとカンタンに予想ができた。この男たちの発言を聞く限り。

 この円卓の間には、べナードとクラップが居た。訂正、待ち構えていた。

「ようこそ、死地に」
「しつこき男は嫌うされるってフロッシュサマに教えるされなかったですかぁ?」
「ぶっっっっっ殺されてぇのか」
「いや既に殺す気満タンですぞ!?」

 何私の態度で殺すの決めるからな(脅し)みたいな顔してるんだよ、既に俺お前殺す(確信)みたいな状況を作ってる癖に!

 あーちくしょうっ!

 べナードならまだしも、クラップ相手は出来ればしたくなかったな! ま、失敗を払拭する為に絶対私を追うだろうという確信はあったけど!



「ルナールの居場所、吐いてもらうですぞ」
「しつこいのは貴女もなんですよね…!」



 ==========




「なぁ、王様。……大事な話がある」

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